大船渡線の旅を終えて,東北本線一ノ関駅に戻って来た。この日の宿は,東北本線の福島駅ちかくにとってあった。したがって一ノ関からは,東北本線をひたすら南下して,福島をめざした。
701系ロングシートで東北本線を上る
一ノ関からの第一走者は,東北本線上り13時50分一ノ関発小牛田ゆき1550M列車だ。一ノ関にて,大船渡線から8分で接続する。
この列車でまずは,岩手=宮城の県境をまたいだ。一ノ関から一時間弱乗車して,14時37分に小牛田駅に定着した。これで,2日目以来の小牛田駅にもどってきた。
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小牛田からは7分の乗り継ぎで,東北本線上り2546M仙台行きにのりかえた。
途中,車窓には,風にそよぐ一面の水田が見られた。単調な東北本線だが,この区間に限って言えば,これを目的にして乗ってもよいくらいの車窓だった。夏の東北地方を凝縮したような風景だった。まさにこの鈍行旅をしめくくるにぴったりだった。
2546Mは,15時30分,仙台に到着した。仙台から福島への最終走者は,15時56分仙台発福島ゆき 576M列車だ。福島駅までは1時間半弱の旅路だ。
576Mは,仙台を出て岩沼駅をすぎた。ここで,左手に常磐線が分かれて行った。すなわちここまでは,初日に特急「ひたち」で乗った区間だ。
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岩沼から先,白石を過ぎ,宮城県最南端の越河(こすごう,難読である)駅をこえると,県境をまたいで福島に入った。県境区間では,車内は閑散としていて,鉄道マニアと地元客が数人ずつしかいなかった。
それから576Mは,17時21分に定刻通り福島駅に到着した。一ノ関駅から福島までの約170 km(営業㌔)を,3時間半かけてたどりついた。ここまで,すべて701系を乗り継いできた。すなわち,一ノ関から福島まで,全区間をロングシートで乗り切った。一ノ関にいた時点では,単なる移動と甘くみていたが,意図せず青春18きっぷ旅の「醍醐味」を味わうこととなった。
距離だけなら日本最長の「ロングシート」区間
青春18きっぷ旅の「ロングシート区間」といえば,静岡地区(東海道線:豊橋~熱海;約 190 km)が有名だ。
この区間では
- 新幹線が並行していて,在来線には(日中)区間利用を想定した普通列車しか走っていない
- 全線を通じて地元客の区間利用が多く,慢性的に混雑している
- 混雑緩和を図るため,ロングシート車の運用を基本としている
であることから,安価に長距離を快適に移動しようとする「青春18きっぱー」によって「地獄」と称されることもある。
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いっぽうで,ここまで書いてきたことからすれば,東北本線も相当な「ロングシート区間」であるように見える。
まず,東北本線|福島~盛岡には,東北新幹線が並行していて,上記1の条件を満たしている。それゆえ一ノ関~福島では営業㌔170 kmもある。静岡地区は,豊橋~熱海で190 kmだから,東北本線とは20 km差で,ほとんど同程度の長距離区間となっている。さらに,乗車区間を,一ノ関から盛岡までのばせば,営業㌔は静岡区間を上回る。
つぎに,これも静岡地区と同様で,全線を通じて地元客の利用がそこそこあった。新幹線が都市間輸送を担っているのに対して,在来線は地域輸送に徹している。
そして,上記の区間を走る普通列車は,基本的にロングシートの701系だ。たとえば,今回の記事で紹介した区間のみならず,盛岡から一ノ関の区間でも701系が普通列車として充当されていた。
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したがって,一見すると,静岡地区の東海道本線に見られる1-3の特徴を満たしているから,「東北本線はロングシート地獄だ」といわれてもおかしくないように感じられる。
東北本線が「ロングシート地獄」とは呼ばれない理由
しかし,マニアの間で,東北本線が「ロングシート地獄」とよばれることは少ないように観察される。これには,以下の理由が考えられる。
使用車両は701系だけではない
まず,使用車両について。701系が基本,と書いたが,区間や時間帯によっては例外もある。
たとえば,普通列車に対して,E721系やキハ110系が充当される区間がある。いずれの車両にも,固定式ボックスシート(E721系)や転換クロスシート(キハ110形0番台)が配置されていることから,これらの車両が充当された普通列車をねらえば,「ロングシート」以外で旅することもできそうだ。
E721系に関していえば,仙台~福島の区間で充当されることがあるようだ。実際に,上記の576M(仙台→福島)に乗っている時にすれ違ったし,2日目に小牛田駅でE721系普通一ノ関ゆきを見かけた。
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キハ110系については,盛岡地区において,花輪線や釜石線に対する直通列車,もしくは,これらの路線にむけた列車の間合いで運用されることが多いようだ。
キハ110系については,始発から終点まで乗りとおすことはできないが,盛岡から花巻までといった形で,区間利用することは可能といえる。
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寄り道できる路線が数多く伸びる
次に,本線からのりつぎできる路線の多さについて。
距離が長いことの裏返しで,東北本線の主要駅からは,数多くの路線が伸びている。たとえば今回の鉄道旅だけでも,以下の路線に乗車した。いずれも,「乗ること」を目的とするに十分な乗りごたえをもつ路線ばかりだ。
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5日目(1): 大船渡線|盛岡→一ノ関⇔気仙沼
4日目(3): 山田線|宮古→盛岡
4日目(1): 釜石線「はまゆり」|盛岡→釜石
3日目(2): 北上線・田沢湖線|北上→盛岡
2日目(2): 石巻線・陸羽東線|女川→鳴子温泉
2日目(1): 仙石東北ライン・仙石線|仙台→女川
1日目(2): 常磐線ひたち|品川→仙台
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つまり東北本線は,こういった路線へ乗りに行くために「区間利用」できる。逆に,東北本線を目的としていても,要所要所で「寄り道」できる可能性があるともいえる。
いっぽうで,東海道本線静岡地区には,JRの路線,いいかえれば,青春18きっぷだけで乗車できる路線がほとんど接続していない。富士駅で身延線,沼津駅で御殿場線に乗り継げるほかは,豊橋で飯田線,熱海で伊東線に接続するのみだ。
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こういった理由から,静岡地区が,より長距離の東北本線を差し置いて,「ロングシート地獄」と呼ばれているのだと考えられる。
もっとも最近では,東海地区への315系投入およびこれにともなう車両配置の変更で,静岡地区の状況も変わっているし,「青春18きっぷ」そのもののルールも変更された。将来的には,「ロングシート地獄」という通称自体が,過去のものになっていくかもしれない。
あとがき
東北本線を青春18きっぷで乗り継いでいった。701系の3つの列車で旅したことをつうじて,実は東北本線が長大なロングシート区間だったことに気づいた。ただし,東北本線は,距離こそ長いものの,「地獄」とも称される静岡地区とは異なり,701系以外の列車も走っており,接続路線も多いことから,「ロングシート地獄」とは呼ばれないのではないかと考えた。
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さて,次の日からの行程について,この日午前中には,あと1回分の青春18きっぷをつかって,水郡線や只見線にのるのもいいと考えていた。ただ,次の日は天気が下り坂のようだった。そして,もう充分ローカル線を満喫できたと思ったし,すっきりした気持ちになったので,18きっぷによる東北旅は,これで一区切りとすることにした。
したがって次の日は,福島から帰名することとした。青春18きっぷは1回分だけ余っていたが,まだ有効期間は残っているので,期限までにどこかへ日帰りで出かけるのに使うことにした。
(つづく)
東海道新幹線(こだま)グリーン車 乗車記|東京→名古屋|夏の東北鉄道旅(番外編)