夏の東北鉄道旅(3) 仙石東北ライン・石巻線|仙台→女川

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2日目からは,青春18きっぷをつかって,東北地方のローカル線をのりつぶした。

2日目午前中は,仙台から仙石東北ラインの「特別快速」と,石巻線のキハ110単行をのりついで,女川まで向かった。折り返しの時間を使って,女川駅周辺を散策した。

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仙石東北ライン「特別快速」石巻ゆき

東北本線と仙石線経由の仙台・石巻直通系統

仙台駅から,仙石東北ラインの特別快速 石巻ゆき(5521D)に乗車した。

終点の石巻駅に到着したHB-E210系気動車。

仙石東北ラインとは,東北本線・石巻線を経由して,仙台と石巻とを直結する列車運行系統の愛称だ。「~~ライン」というのは,路線ではなく,「運行系統」の愛称であって,「仙石東北ライン」という路線が存在するわけではない。これは,「上野東京ライン」や「湘南新宿ライン」など,JR東日本で2路線にまたがって直通運行する系統にも同じことがいえる1

仙石東北ラインの開業までは,仙台⇔石巻間の移動には,仙石線が使われていた。しかし仙石線は,その出自が私鉄であり,駅間距離が短く,優等列車の退避設備もない。ゆえに,列車速度が遅く,快速列車も増発できないという問題があった2

これを解決するべく,東北本線が石巻線へ接近する松島付近に,両線の連絡線を整備された。その結果,両線を直通する列車が運行できるようになった。これが「仙石東北ライン」開業のいきさつだ。開業は2015年で,まだ10年も経っていない,新しい「運行系統」だ。

1日1本の「特別快速」

ここを走る列車のうち,「特別快速」はもっとも速い種別で,仙台⇔石巻間を49分でむすぶ。ただし,「特別快速」は1日1往復のみ3。ほかの列車は,「快速」として運転されている。快速の場合,仙台と石巻の間は,約1時間かかる。

時刻表によると,仙石東北ライン経由の列車は,快速と特別快速を合わせて,1日14往復運転されている。だいたい1時間に1本だが,下り11時台・上り12時台は列車がないようだ。このように,仙石東北ラインは,速達路線でありながら,本数はさほど多くない。それゆえ平日であったこの日も,車内の座席は8割くらい埋まっていた。

仙石東北ラインがない時間帯は,仙石線でも,仙台⇔石巻間を移動できる。仙石線でも,同駅間は1時間20分。

電化路線を気動車が走るワケ

仙台駅にやってきたのは電車ではなく「HB-E210系気動車」だ。列番に「D」と付されているように,仙石東北ラインを走るのは気動車に限られている。仙石東北ラインを構成する東北本線と石巻線はいずれも「電化」されている。にもかかわらず気動車が走るのは,これら2線の電化方式が異なる4ことと,連絡線が非電化となっていることが理由だ。

東北本線から石巻線へは,東北本線塩釜ー松島間にて,連絡線をわたって,石巻線 松島海岸ー高城町駅間に合流する。ここらあたりのようすは,以下の記事がわかりやすい。

新線試乗記-仙石東北ライン - 地図と鉄道のブログ
朝8時台、仙台駅2番線に青、ピンク、緑という不思議なカラーコーディネートの列車が...

上記記事では,「信号システムが異なるため,連絡線内ではいったん停止」とあるが,現在では,改良工事5を経て,連絡線を無停車で通過できるようになっている。おかげで,特別快速の仙台⇔石巻間の所要時間は,現行の49分(2024年8月時点)に短縮されている。

エンジンで発電してモータを回して走る

HB-E210系気動車では,動力伝達方式として,「シリーズハイブリッド」方式が採用されている。ディーゼルエンジンによって電力を発電し,その電力でモータを駆動する方式だ。屋根上には蓄電池が搭載されていて,エンジンの電力やブレーキ時の回生電力を充電できる。したがって,「気動車」でありながらも,モータ(電動機)の駆動には電力のみを用いるということだ。

同方式は,ほかの鉄道会社でも盛んに導入されていて,今年の3月に乗車したJR九州「YC1系」もこの方式の気動車の1つだ。また,JR東海でも,非電化区間(高山本線・紀勢本線)を走る特急列車として,HC85系を導入している。

大村線 区間快速シーサイドライナーで佐世保から長崎へ

HD PENTAX-DA55-300mmで撮るHC85系(名古屋駅, 2023冬)

私が座ったクロスシートのうしろには,発電・放電のようすがわかるディスプレイが設置されていた。モードの切り替わりがリアルタイムでわかって,なかなか面白かった。

石巻線 石巻→女川

石巻駅は,漫画家・石ノ森章太郎ゆかりの地だそうで,ラッピングされたHB-E210系が停まっていたり,等身大の人形があったり,ファンにとっては垂涎ものだろう。

石巻から先は,石巻線が女川までのびている。石巻=女川間は,非電化区間であるが,HB-E210系であれば直通できる。実際,一部の仙石東北ライン快速列車は,石巻を経て,女川まで直通している6

この日は,キハ110単行列車(1631D:石巻1036 >>> 女川1101)で,女川までむかった。この列車は,小牛田始発の列車で,当駅にて32分も停車する。石巻線は,小牛田~女川で1つの路線だが,運行系統としては,石巻で分離されているようだ。

東北の非電化ローカル線といえばキハ110系。皆同じだと思っていたが,本形式でもいろいろ違いがあることを,この旅で知ることとなった。

水田の緑が一面に映る山村を走り,やがて海沿いに出て,海岸線に沿ってクネクネと走った。やがて長いトンネルを抜けると,海に開けた集落の一角にそろりそろりと入り,女川駅についた。一面一線の終端駅は,東日本大震災で大津波にのまれて,その後,山側へ移設されたもの。

到着した列車は,8分後すぐに石巻方面へ折り返す。が,せっかくここまで来たので,駅前を中心に散策してみることとした。次の上り列車は,およそ2時間後。

女川散策~震災から13年半

女川駅には,温泉が併設されていて,簡単な物産店もあった。駅を出ると,そこから真っすぐに,海に向かって道が伸びていた。ここの両側に,新設の商業施設が集まっていた。

商業施設へ行く前に,震災後に移築(新造)された庁舎,旧女川交番の遺構,そして漁港(魚市場)を見てまわった。魚市場の食堂は定休日だった。中心部からすこし歩いただけに,残念。

漁港。右手の高台にあるのが女川小中学校。
漁港の方からみた女川のまちなみ。

それから,駅前の目抜き通りにあつまっている商店もひととおり見物した。ちょうど昼過ぎだったので,いちばん海側に面した店で,「女川丼」を注文し,テラス席で食べた。海風が気持ちいい。

女川は,3.11の津波によって,まちの中心がほとんど壊滅してしまったそうだ。

それから13年半。この日見てまわったところに限っていえば,まちの規模に見合わないくらい,綺麗に整備された建物が多かった。公共施設も商店も,現代風のデザインで,よくできていた。それから道路も,ずいぶんとお金をかけて造ってあった。漁業が中心,人口も決して多くないこの町の地力で,これだけの復興・整備を進めるのは,おそらく不可能だっただろう。あらゆる方面からの支援が,このまちをここまで綺麗にしたのだと思った。

高台のほうでは,宅地開発も進められていた。こちらへの定住は,まだまだこれからのようすだった。

以上,2時間ほどの女川散策を終えた。ここからはふたたび石巻線の列車にのり,小牛田方面,さらにそこから陸羽東線に乗り換えて,本日の宿へむかった。

(つづく)

夏の東北鉄道旅(4) 石巻線・陸羽東線|女川→小牛田→鳴子温泉

  1. 東海道本線を走る直通列車のうち,JR東海の区間(熱海駅以西)にのりいれる列車は,同区間では「東京経由 XXゆき」(XX=宇都宮,高崎,黒磯etc…)と呼称される。JR東海は,「上野東京ライン」等の路線愛称を用いず,正式名称を用いることで知られているが,ここでもそれを踏襲している。ただ,愛称で呼ぶよりも,経由地と路線名で呼ぶ方がが分かりやすいと思うのは私だけではないはず(?) ↩︎
  2. 仙石東北ライン – Wikipedia ↩︎
  3. 「下り」(仙台→石巻)は今回乗車した列車のみ,「上り」は,石巻2001発5520Dのみ。 ↩︎
  4. 東北本線は交流電化,石巻線は直流電化方式となっている。JR東日本が保有する東北地方の路線で,直流電化なのは石巻線だけ。私鉄が直流電化で開業させ,戦時中に国有化されて以降,電化方式を変えずに来たことが原因。距離(50 km)の割に駅数が多いのもこれが原因。 ↩︎
  5. URL:https://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2010s/2018/05/pdf/68-73w_HY09A07.pdf (Access: 2024.8.30) ↩︎
  6. 女川まで直通する列車は,「赤」快速と案内される。現行ダイヤでは,上下1本ずつのみ(下り:仙台2047発5543D,上り:女川600発5530D)。 ↩︎
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