夏の東北鉄道旅(2) 常磐特急「ひたち」品川→仙台

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初日の午後は,品川から「ひたち13号」に乗って,常磐線にて仙台までむかった。

前の記事に書いたように,品川駅には新幹線でやってきた。

夏の東北鉄道旅(1) のぞみで品川へ
初日の午前は,のぞみ288号自由席で名古屋から品川へむかった。

そこでいちど改札を出て,駅ちかくで京急を撮影した。

【京急】八ツ山跨線線路橋(品川第一・第二踏切)

撮影後,「ひたち」の出発までまだ時間があった。ちょっと小じゃれたオフィスビルに向かい,そこの書店で時刻表を買った。いつも買っている「コンパス時刻表(交通新聞社)」が売り切れていたようなので,「小さな時刻表(JTB)」を買ってみた。「小さな時刻表」には,JR線の全時刻のみならず,きっぷや車両の編成に関する情報が載っていた。これらはコンパス時刻表に載っていない。旅行中に重宝しそうだ。

ついでに,オフィスビルにあったカフェで昼食にした。朝が早かったうえに,炎天下で写真をとったから,空腹だったのだ。コンパス時刻表を読みながら,しばしくつろいでいた。12時ごろになると,大量のサラリーマンが昼食をとりに出てきたので,そそくさと退散した。サラリーマンはみんな似た格好をしていた。Tシャツにスラックス,運動靴にデカいザックをしょった私のような学生は,あきらかに場違いだった。

品川駅に戻り,NewDaysでペットボトルのお茶とちょっとしたお菓子を買って,在来線ホームへ向かった。常磐線特急「ひたち」は,品川駅9番線から出発するようだ。

まだ発車20分前だったが,9番線へ降りると,すでにE657系が入線していた。K10編成,10両編成だ。東海地区では,なかなか見られないような,斬新な前面デザインと,高運転台がカッコいい。

写真を撮り,屋根上の機器を眺めた。E657系「ひたち」は,品川から常磐線藤代駅構内の交直セクションまでは,直流(DC)区間を走行する。一方,藤代以北では,交流(AC)区間を走行する。交流区間では,架線(電力を供給する線)の電圧が2万ボルトと高い。そのためE657系の屋根上には,高圧用の機器がのっているのだ。

特徴的なのが,お皿が何枚か重なったような形のもの。これが「がいし」と呼ばれるもので,高圧電気から,絶縁物によって物理的に距離を保ち,車両側を短絡(ショート)から守るためにつけられている。

同様の機器は,同線の交流区間まで走るE531系の屋根上にもみられる。たとえば以下の写真は,上野東京ライン常磐線直通のE531系,ちょうど「ひたち13号」に先行して出発する列車の屋根上機器だ。同じような構造になっていることがわかる。この屋根上機器を見ると,交流区間を走れる電車とわかるのだ。

屋根上機器の写真を撮っていると,まもなくドアが開き,乗客が乗りこんでいった。さすがに暑かったので,私も車内に乗り込み,9号車11番A席に着席した。この列車は全席指定で,原則として乗車前に座席を指定しておく必要があった。今回は,「えきねっと」で特急券だけ発行しておいた。チケットレス乗車にしたので,定価の35%OFFで手配できた。

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E353系やE653系もそうだけど,JR東日本の特急型電車は,座席の背もたれが大きい。東海地区の特急列車や新幹線にのりなれた身としては,若干の圧迫感すら感じるものだ。座席前方を見渡せないもどかしさがある。もちろん,これによってプライベート感は確保されているのはいい点だ。

ひたち13号(13M)は,定刻12時45分に品川駅を出発した。ここから仙台まで,なんと4時間超の長旅だ。「音鉄」な私は,モータ音を楽しむべく,電動車の1つである2号車の座席を確保した。おかげで,床下から聴こえるモータ音もじっくり楽しめそうだ。

品川から東京・上野間は,上野東京ラインを走った。東京・上野では,品川での始発時と同じくらいのお客さんがのりこんできた。上野を出ると,列車は日暮里まで進み,ここから大きく右にカーブして,常磐線へと進んでいった。ここのカーブは,「三河島カーブ」として有名。

13Mは,上野から次の水戸までノンストップで走った。この区間がもっとも乗車率が高かった。私の座席の前にも後ろにも乗客がいた。

水戸に着くと,上野から乗り込んできたばかりの乗客もふくめ,多くが降車していった。さらに水戸以北の駅では,乗車より降車のほうが多かったように観察された。それゆえ,車内は北進するにつれ閑散としていった。ただ,かならずどの駅でも,数名ずつ降りて行ったようにもみえた。少ないながらも確実に需要があるから停めているし,また,わざわざ常磐線の北部(相双地域1)まで直通運転させているのだろう。

車窓は,水戸や勝田あたりまでは,田園や住宅街の風景が中心だった。茨城をぬけて福島県(浜通り)に至ると,平野がおわり,海がすぐちかくに見えたり,山がちになったり,あるいは,なにもない原野が広がっていたりした。原野のような風景は,原発事故の影響で,一時運休していた広野~浪江あたりの区間で多くみられた。ここでは,住宅地でも,あきらかに取り壊されて塀だけになった区画や,不自然にだだっぴろいスペースが多かった。

そういった地域まで乗っているのは,泉や日立,あるいはいわきといった,常磐線北部の乗客が多かったように思われる。それでも各号車数名ずつほど。「ひたち」の主戦場は,やはり水戸・勝田・日立・高萩あたりと,上野・東京とをむすぶ区間なのだ。

車内が閑散としてくるにつれ,線路やすれ違う列車の本数も少なくなった。取手までは立派な複々線だったのが,複線になり,相双地域に至ると,単線区間もあった。ただ,この単線区間でも,線路のないトンネルや,不自然な路盤,あるいは,平行に草がはげた地面が,本線に並行していた。したがって,もともとは複線だったように思われる。そうであっても,仙台まで直通しているのは,上述のような,いわき~仙台間の需要をついでに拾うためであって,仙台を目的地としているわけではないのだろう。

4時間超えの長時間乗車を終えて,17時25分,仙台に降り立った。蒸し暑さこそ残っているものの,決して不快な暑さではない。

4時間も走って来たE657系。人間であれば,これだけ長時間働いたのだから,ちょっとは休ませてほしいところだが,どうやらそうもいかないらしい。駅では,6番線の列車は,折り返し18時2分発…と放送されている。なんとこのK10編成は,これからまた,「ひたち30号(30M)」として,常磐線を品川まで戻るらしい。

30Mの出発は18時2分だから,折り返しには30分以上の猶予がある。それでも,往復で9時間近く走り続けるわけだ。大車輪の活躍に,頭が下がる。

E657系が束の間の休憩をとっている間に,隣の番線から,仙山線の山形ゆきE721系が出発していった。E721系を見ると,東北に来たと感じる。

ホームを歩く女性が,さっきの案内表示を見て,「品川行ってすごいね~」と,ペアの男性に話しかけていた。実際,仙台から品川まで,新幹線でなくて特急1本で行けるのは,なかなかなじみがないことだと思う。なぜなら,仙台から東京・上野まで,「はやぶさ」なら1時間半,「やまびこ」でも2時間程度で行けるからだ。したがって,よほどのマニアでない限り,常磐線「ひたち」で上京しようなんて思わない。

それでも,1本の列車が,時間はかかれど,つながっているレールを走り切り,ずっと遠くまで行けてしまう。これが,列車が提供してくれる「旅情」なのではないだろうか。

私が本格的に鉄道旅へのめりこむ少し前(平成初期~中期頃)までは,乗客をはるばる遠方まで,乗り換えなしで運んでくれる長距離列車や寝台列車が生き残っていた。が,それを楽しめる時間と自由が手に入ったころには,そういった定期の列車はすっかり引退してしまっていた。同時に,長距離の優等列車旅で味わえる「旅情」と「優越感」も失われてしまった。

そんな中にあって,常磐特急「ひたち」は,数少ない「旅情ある長距離鉄道旅」を味わえる優等列車だと思う。東日本大震災と原発事故にともなう直通運転の中断をのりこえて,2020年3月,日3往復が復活してくれた2。これからも末永く,活躍してくれることを願ってやまない。

この日は仙台市内のホテルに宿泊した。

翌日からは,「青春18きっぷ」で東北地方(太平洋側)のローカル線を旅する。

(つづく)

  1. 福島県,「相双地域の概要」,福島県ホームページ,URL: https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/01260a/sousouchiiki-gaiyo.html (Access: 2024.8.28) ↩︎
  2. JR東日本仙台支社:「常磐線全線運転再開について」,JR東日本ニュース,2020年1月17日,URL: https://www.jreast.co.jp/sendai/upload-images/2020/01/202001174-1.pdf (Access: 2024.8.28) ↩︎
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