E8系で山形線を福島から米沢までワープ|北海道&東日本パスの旅2025(5)

北海道&東日本パスの旅3日目。前日は,只見線・磐越西線・東北本線の旅を経て,福島までやってきた。3日目は,福島から,米沢・山形・新庄・横手・秋田と,奥羽本線を北上する計画を立てた。

奥羽本線の福島~米沢~山形~新庄には,ミニ新幹線方式で「つばさ」が乗り入れている。このうち,福島~米沢間は,峠越えの区間であり,列車本数がきわめて少ない。最新型のE8系にも乗ってみたかったので,この区間だけ新幹線でワープしてみることにした。

山形新幹線で山形線:福島~米沢をワープ

普通列車の旅を続けている時に乗る新幹線ほど贅沢なものはない。

福島駅前のホテルをゆっくり出発。小雨が降っていた。

福島から乗車するのは,

127M「つばさ127号」:福島9:49→米沢10:26

だ。この新幹線に乗れば,

  • 福島を先発の普通列車より1時間40分遅く出発
  • 米沢での乗り継ぎ待ちを46分削減
  • 山形での乗り継ぎ待ちを1時間削減

することができる。というのは,福島~米沢間の普通列車が,日中,7時台・8時台・12時台にしかないからだ。これだけ普通列車の本数が少ないのは,過去に乗車した田沢湖線(秋田新幹線)の普通列車と同じ。新幹線優先のダイヤを組んでいるのと,この区間のうち,板谷峠(後述)前後の需要がきわめて少ないことが理由だ。

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さて,初日の記事でも書いたように,「北海道&東日本パス」では新幹線に乗れない。「つばさ」は全席指定のため,乗車券と指定席特急券を買う必要がある。ここでは,えきねっとにて,「新幹線eチケット」(1,660円)を買っておいた。

ちなみに今回は指定席を買ったが,山形新幹線では「特定特急券」も発売されている(指定席のうち空席に座れる)。福島~米沢間は,指定席特急料金が通常1,290円(通常期,今回は閑散期なので1,090円)のところ,特定特急料金は760円となる。この区間の運賃は,770円。以上を閑散期について比較すると,

  • きっぷ(乗車券,閑散期の指定席特急券):1,860円
  • 新幹線eチケット:1,660円(正規運賃から200円引き)
  • きっぷ(乗車券,特定特急券):1,530円(正規運賃から330円引き)

となる。つまり,特定特急券と乗車券のペアがもっとも安い。このペアは,eチケットよりさらに130円安い。

とはいえ,eチケットはスマホで購入も改札も完結(加えてえきねっとでポイントもたまる)のに対して,特定特急券は,駅の窓口もしくは指定席券売機で購入する必要がある。この面倒と,指定席を確保したかったのとを鑑みて,eチケットで乗車することを選択した。

福島駅新幹線ホーム

福島駅の新幹線ホームにやってきた。去年の夏は,以下の記事に書いたように,福島から東北新幹線の上り列車に乗った。

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ホームへ上がると間もなく,「つばさ」を先行する「やまびこ205号」が入って来た。この列車は,E5系単独編成ではなくて,E5系とE6系を併結した17両編成でやってきた。

やまびこ205号が到着。秋田新幹線用のE6系を繋いでいるが,全車両が仙台ゆきのやまびこだ。

E6系を繋いでいると,どうしても「こまち」をイメージしがちだ。しかし,当駅(福島)に停車しているということは,はやぶさーこまちのペアではないということ。この「やまびこ205号」は,東京を7時44分に出発したあと,東北新幹線の各駅にコツコツと停まる各駅停車タイプの「やまびこ」だ。ここから2駅先の仙台まで,全駅に停車する。ちなみに,全駅に停車する仙台ゆきの「やまびこ」は,1日に3本しかない(201,205,215号)。

去年の東北旅では,古川から一ノ関まで,「やまびこ」にてワープした。このときに,今回遭遇したような,E6系&E5系併結タイプの「やまびこ53号」に乗車した。自由席が設定されていたので,あえてミニ新幹線のE6系に乗車した。したがって,ミニ新幹線のうち,E6系(秋田新幹線用)には乗ったことがあった。

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一方で,山形新幹線の車両に乗るのは,正真正銘,今回が初めてだ。山形新幹線「つばさ」は,福島駅14番線にやってくる。一部の単独運転列車をのぞき,基本的には「やまびこ」と福島まで一緒に走る。福島・山形方面の下り方先頭が「つばさ」で,その後方に「やまびこ」を併結する。

下りの場合は,前寄りの「つばさ」が先発,「やまびこ」が次発となる。

発車時刻の少し前になると,「つばさ」「やまびこ」がゆっくりと入って来た。「つばさ」は,念願の山形新幹線E8系(G8編成)だ。E8系は,夏の時期に,補助電源装置に具備される半導体制御装置の不具合1が相次いで発生したため,営業運転を休止していた。幸い,従来型のE3系新幹線を残していたようで,全線・全便の運休は避けられたようだが,それでも,夏の時期に相当な数の列車が運休だった。トラブルへの対策も取られたようで,無事に本線へ復帰してくれて何よりだ。

E8系。E3系と同様のカラーを使いつつ,ロングノーズとヘッドライトが次世代型の新幹線らしいデザインだ。

「つばさ」と「やまびこ」は,ここで切り離し(解結)を行う。じっくりと見ていたいところではあるが,あいにく,「つばさ」が解結後すぐに先発するため,車内で待っていないと乗り遅れてしまう。「つばさ」に乗るときには気をつけたい。

E8系とE5系が解結を行っている間に,通過線を上りE5系が猛スピードで通過していく。上り線には,同じくE5系が通過待ちをしている。山形新幹線が入線するタイミングは,福島駅新幹線ホームが忙しくなる時間帯の1つだ。

上り列車が猛スピードで通過していく。

解結が終わると,E8系はそのまま出発していく。出発前には「栄冠は君に輝く」のメロディが鳴動する。福島は作曲家・古関 裕而ゆかりの地だ。

E8系「つばさ」で峠越え

E8系「つばさ」は,福島を出るとすぐに,新幹線の高架を離れるとともに,奥羽本線(山形線)の地上線に降りてゆく。高架の下をのぞくように右手を見ると,上り線用の新幹線高架へのアプローチ線がほとんど出来上がっていた。このアプローチ線が完成すると,上り「やまびこ」による下り線の平面交差が解消されることになる。

車窓はすぐに在来線のものとなる。今乗っているのは最新型の新幹線車両だが,車窓には踏切も信号機もみえる。ミニ新幹線ならではの風景だ。自分が今,在来線に乗っているのか,新幹線に乗っているのか,よくわからなくなる。

福島から米沢までの間で,1つ峠(板谷峠)を越える。新幹線にしては,半径が小さすぎるカーブを通過したり,キツい勾配を上り下りしたりした。峠の頂上には,そのものずばりな「峠」駅がある。かつてはスイッチバック方式の駅だったが,現在は解消されている。駅の前後には,スノーシェルターがあり,構内には踏切も設置されていた。ただ,シェルターの周りに何かあるような場所でもないため,新幹線はもちろん通過するし,在来線でさえ,1日平均乗降数は10人少々にすぎない2

秋田新幹線の田沢湖線区間と同じく,峠付近は相当山深かった。米沢までは,36分。山形新幹線だと隣駅にあたる区間だが,それでもこれだけの時間を要する。在来線の列車と所要時間は10分しか変わらない。板谷峠がいかに険しいかを実感した。

米沢駅に到着

米沢駅では,駅舎側のホームに到着した。ホーム上で,名物の米沢牛を模したオブジェが出迎えてくれた。

米沢駅ホーム上にある米沢牛のオブジェ

このままE8系に乗って行くこともできなくはない(後続の在来線列車から20分程度先行できる)ものの,つばさ127号は,途中の山形どまりとなるため,時短効果は限定的。山形での乗り換え待ちで,後続列車に追いつかれてしまう。それに,米沢から山形の区間には,毎時1本程度在来線の列車が走っているので,新幹線の旅はここまでとする。改札機にモバイルSuicaをタッチして,こんどは「北海道&東日本パス」を有人改札で見せてから,再度入場した。

山形新幹線には,山形ゆきと新庄ゆきが設定されている。この列車は,山形ゆきで,終点の新庄までは行かない。

米沢駅で次の列車を待っていると,上り(東京ゆき)「つばさ」がやってきた。あちらはE3系だ。E8系の後輩にあたり,1000番台は1999年から,2000番台は2008年から,それぞれ山形新幹線を走って来た。JR東日本によると,E3系の山形新幹線内運行は2025年までとのことで,それ以降は,最新型のE8系に統一されるみたいだ3

下り列車の出発を待つ間に,E3系に遭遇した。E3系は,2025年内での運行終了を予定している。

ちなみに,同じくミニ新幹線の秋田新幹線では,山形新幹線よりずいぶん早く(2013年)にE3系を置き換え始めた。そのため,E6系新幹線には,早くも次世代型車両開発の話が出てきている。近年の新幹線車両は,だいたい20年弱を1サイクルとして,置き換えられるようになってきている。在来線車両より高速走行する分だけ,寿命も短いということだ。

新幹線の旅は米沢駅まで。米沢からは,ふたたび「北海道&東日本パス」による在来線の旅へともどる。

(つづく)

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  1. 東日本旅客鉄道株式会社:「山形新幹線 E8系車両故障の調査結果と対策及び今後の運転計画について」,URL:https://www.jreast.co.jp/press/2025/20250722_ho01.pdf(最終アクセス日:2025年10月13日) ↩︎
  2. 峠駅 – Wikipedia,URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%A0%E9%A7%85(最終アクセス日:2025年10月13日) ↩︎
  3. JR東日本「山形新幹線E3系つばさ、つなぐ。」,URL: https://www.jreast.co.jp/sendai/e3_tsubasatsunagu/(最終アクセス日:2025年10月12日) ↩︎

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