
函館へ出張してきた。常識的な社会人であれば,羽田から函館空港まで空路にて向かうところだ。
いっぽうで,鉄道マニアたる私は,東北・北海道新幹線でのアクセスを選択した。空港での手続きをともなう待ち時間に加えて,お盆前後の混雑を好まなかったからだ。加えて,新幹線なら予定時間に行けばすぐ乗れるし,何度か乗っているから乗り慣れてもいる。そして何より,新幹線は定時性にすぐれる。
そう思って,早朝に寮を出発して駅まで向かい,そこから普通列車のグリーン車にて意気揚々と東京駅に乗り込んだ。朝ラッシュをかき分けるようにして新幹線のりかえ改札口にたどりついた。
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ここまでくればもう大丈夫だ。乗車予定の「はやぶさ5号」は,20番線から発車予定。あとはE5系新幹線が,時刻通りに函館まで載せて行ってくれる。この時点では,そう思っていた。
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改札外で駅弁を,改札内のBECKS COFFEEにてアイスコーヒーを買ってから,20番線へ上がった。
ちょうど,E5系が入って来た。仙台始発の「はやぶさ2号」東京行きだ。この車両が,「はやぶさ5号」となるようだ。上りは仙台始発で下りは函館への2番列車。この車は,大役を次々と仰せつかっているわけだ。
E5系は,いちど折り返し作業のため閉扉した。すでに8時を過ぎていたが,ここから発車の数分前まで折り返し作業をしていた。車両の前には,多くの乗客が列をなして待っていた。

発車の2分少々まえにドアが開いた。この列車に限らず,東北・北陸・上越方面の列車は,東京駅での折り返し時間がみじかい。だいたいいつも,乗車後、腰を落ち着ける間も無く発車することになる。
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さて,多くの「はやぶさ」号は,盛岡(下り)方に,秋田新幹線「こまち」号を連結して走る。つまり,下り列車の場合は,「はやぶさ・こまち」として盛岡まで走ったあと,盛岡駅にて解結する。以降は,「はやぶさ」と「こまち」それぞれが東北と秋田新幹線を走る。

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対して,「はやぶさ5号」は,盛岡方に「こまち」を併結していない。

これは,「はやぶさ5号」が,東北新幹線「はやぶさ」の最速達列車であるためだ。
具体的には,「はやぶさ5号」は,「こまち号」を連結せずに,E5系単独下ってゆく。こうすることでまず,盛岡駅での「こまち」号切り離しの時間を削減できる。
さらにいえば,この列車の停車駅は,
大宮・仙台・盛岡・新青森・新函館北斗
と,主要駅のみに絞られている。ほとんどの列車が停車する上野駅のほかに,多くの「はやぶさ」が選択停車する盛岡以北の駅もすべて通過する。
以上により,「はやぶさ5号」は,東京から新函館北斗駅まで,3時間57分で運転することができる。こうすることで,所要時間4時間切りを達成している。いわゆる「ダイヤ上の看板列車」ということだ。
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そんな最速達の「はやぶさ」に腰掛けたところで,すぐに東京駅を出発していった。夏休み中,しかも,上述のような看板列車ということで,全座席が予約済みだった。
大宮に到着すると,私の座っていた3列掛け列の,通路側2席も埋まった。ほぼ満席になった。仙台では6割くらい下車があったが,またそのうち4割くらいは乗車してきた。トータルでは2割減くらい。相変わらず混んでいた。
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「はやぶさ5号」は,このような調子で,順調に東北新幹線を下った。そして,定刻通り新青森駅に到着した。ここまでくれば,あと1時間で北海道だ。新青森を出たら駅弁を食べよう。そう思っていたのに,出発時刻になっても,発車するようすがなかった。
まもなく,車掌から「函館地方で大雨のため運転見合わせ」と案内された。すでにJR北の乗務員に交代済みで,抑止中には,大橋俊夫さんの簡易放送「大雨のため運転を見合わせております」が流れた。

天気予報では,函館の天気が悪いことを把握していたのだが,想像以上に悪天候のようだった。まずもって運転再開の見通しが立たないようす。
そうこうしているうちに,後続のはやぶさ7号に追いつかれた。東京駅を20分後に発車した列車だ。

1時間経っても運転再開の見通しは立たなかった。空腹だったので,駅弁を広げて,すっかり食べてしまった。美味しかったが,車窓が無い分,味気ない。車内の空気も,待ちくたびれてうんざりといった感じ。
12時42分。とうとう新函館北斗ゆきの後続列車「はやぶさ11号」にも追いつかれた。「はやぶさ11号」は,すでに,新青森から先で区間運休を決めていた。
いっぽう,「はやぶさ5号」は,当駅で1時間以上停車しているものの,一応新函館北斗まで行くつもりで待っている。ということで,「はやぶさ11号」の乗客のうち,新函館北斗へ行く乗客も,こちらの列車へ乗り換えてきた。車掌からも、空席へ着席するよう案内されていた。
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それからさらに50分以上経過した。13時半過ぎ,ようやく,「13時40分頃出発見込み」とアナウンスされた。まず,奥津軽いまべつまで運転したあと,ふたたび停車し,次いで,北海道区間の線路点検を待ってから,青函トンネルを渡るとのことだった。この時点で,北海道新幹線区間の運転再開は14時半頃を見込んでいると放送された。
13時42分,はやぶさ5号は運転を再開した。車窓はおおむね好天であるだけに運転見合わせがもどかしかった。車窓右手には,陸奥湾と下北半島が見えていた。この時点で,145分(約2時間25分)遅れている。特急券の払い戻しは確定的だが,現地到着に遅れることもまた確定した。
本来,「はやぶさ5号」は,奥津軽いまべつを通過する。が,この日は,自動放送で停車案内があった。そして先ほどの案内通り,奥津軽いまべつ駅にて停車した。先ほどの案内によると,少なくとも30分は停車するだろうとのことなので,乗客のいくらかは車外に出ている。ふだんはまず利用しない駅なので,珍しそうに写真を撮ったりしている。夏休み中だからか,観光客が中心だ。私のような仕事で来ているひとはそう多くないだろう。そうはいっても私もマニアなので,観光客に交じって写真を撮ったりした。

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当初の運転再開予定の5分前:14時25分ごろ,点検に時間を要しているため,運転再開時刻が14時50分へ延びるとアナウンスされた。さらに20分,延発するようだ。新青森で120分も待ったので,もはや誰も気にしていないようすだった。

そして,14時48分,アナウンス通り運転再開した。まもなく青函トンネルに入った。リズムよく車窓に流れて行くトンネル壁面のライトを眺めていると,すぐに青函トンネルを抜けたような気がした。実際には25分くらいトンネルを走っていたはず。
トンネルを出た直後,しばらくは窓が曇っていた。そして,線路はしっとり濡れている。雨は降っているかわからないが,ともかく空が暗い。津軽海峡をこえるだけで,こんなに天気が違うのだ。
車内放送では,3時間13分(=193分!)遅れで運転中とアナウンスされた。全国各地の列車を乗り回してきたが,こんなにも遅れた列車に乗ったのは初めてだった。
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結局,新函館北斗駅には,3時間以上遅れて到着した。東京駅から7時間近くも新幹線に乗っていたこととなる。「はやぶさ5号」と「はやぶさ11号」の乗客がいっぺんに降りてきたので,駅はこのように大混雑になった。改札を抜けるのに10分くらいかかった。

到着遅れのため,出先へも2時間以上遅れていく羽目になった。タクシーで向かったのだけれど,道中で降雨規制をしていた。どうやら,走っていた道の先で,道路冠水が起きているとのことだった。新幹線が停まるくらいだから,相当な荒天だったのだろう。
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このようにして,函館出張の往路は,193分遅れ(!)という,とんでもない遅延をもって終えた。ちなみにこの日は,道南地方を中心とした大雨の影響により,新幹線のみならず,函館本線の特急・快速・普通列車も軒並み運休していた。
鉄道旅は何時間でも平気だという自負があったのだけれど,今回ばかりは心が折れかけた。とはいえ,完全に折れることはなく,駅でタクシーも拾って,出先の用事も何とか乗り切った。
この日の夜,五稜郭公園近くのホテルに泊まった。用事から帰着し,部屋で復路の予定を確認した。明日の道南地方は,曇り予報だった。さすがに明日は大丈夫だろう。今度こそ,ゆっくり駅弁を食べて,予定通り帰ろう。そう思っていたのだが...
(つづく)
【過去の東北新幹線 乗車記】
【はやぶさ_のぞみ】新幹線を乗り継いで新函館北斗から名古屋へ|帯広→名古屋鉄道旅(後編)
東北本線を新幹線でワープ~時刻表の愉しみ|鳴子温泉→北上|夏の東北鉄道旅(5)
【特例】青春18きっぷ+北海道新幹線オプション券で青森から函館へ【2019夏自転車旅⑩】
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