「ぐるっと九州きっぷ」の旅2日目は,佐世保から大村線・長崎本線をはしる「シーサイドライナー」に乗車して,長崎へとむかった。大村線は,大村湾をのぞむ絶景路線で,シーサイドライナーはこの海岸ギリギリを走ってゆく。諫早からは長崎本線に入り,快速運転で長崎へ。長崎駅は,2019年以来5年ぶりの訪問で,地上駅から高架駅となり,すっかり綺麗になっていた。長崎駅では,「ふたつぼし4047」にも遭遇。
大村線・長崎本線 区間快速「シーサイドライナー」
「ぐるっと九州きっぷ」の旅2日目。この日は,まず,佐賀駅から特急「みどり」で佐世保線の佐世保駅までやってきた。佐世保港では,中国の大型クルーズ船を見物し,昼前に駅に戻ってきた。
佐世保からは,区間快速「シーサイドライナー」に乗り込む。「シーサイドライナー」は,大村線・長崎本線の区間快速列車だ。佐世保線の佐世保を出ると,早岐に至り,そこから大村線を縦断し,諫早へとむかう。こんかいは,
1227D 区間快速 シーサイドライナー
佐世保1112→長崎1302
(諫早~長崎間:4227D)
に乗車することとした1。
この列車は,佐世保から早岐・ハウステンボスを経て,大村線の新大村まで各駅に停車する。新大村からさきは,諫早まで快速運転する。諫早からは長崎本線に入り,列車番号が4227Dに変わる。長崎本線内では,喜々津・市布経由の新線ルートを快速運転する。途中停車駅は,喜々津・浦上のみだ。
大村線の絶景と長崎本線の日常
佐世保時点で混雑気味:ロングシートに着席
佐世保駅では,佐世保バーガーをテイクアウトして,出発10分少々前にホームへあがったのだが,すでに乗客が列をなして並んでいた。そこへやってきたのは,2両編成のYC1系ハイブリッド気動車2。車内へ乗り込み,進行方向むかって左側のロングシートを確保した。諫早方面の列車では,進行方向むかって右側(西側)に海が見えるからだ。
春分の日ということもあってか,出発前から車内はすでに混雑気味。途中,長崎の主要観光地・ハウステンボスを通ることもあってか,このあたりを観光した帰り道とおぼしき乗客もいた。かれらはスーツケースを転がしているから,ひとめでそれとわかる。
ハイブリッド気動車「YC1系」の独特な走り
「シーサイドライナー」は,出発時刻になると,まるで電車のようなインバータサウンドを奏でて出発した。YC1系は,モータとディーゼルエンジンを搭載した「蓄電池搭載型ディーゼルエレクトリック車両3」なのだ。
YC1系の車上には,蓄電池が積まれている。ここに,ディーゼルエンジンで発電した電力を貯めておく。この電力によって,架線のない非電化区間でも,電車のように運転できるのだ。ここでは,ディーゼルエンジンで直接モータを駆動しないので,従来の気動車(エンジン+変速機+減速機・逆転機)とも異なる動力機構となっている。
はたして,0 km/hから40 km/hくらいまでは,誰がどう聞いても電車にしかきこえないような音をたてて走る。ある程度の速度(体感だと,40 km/hくらい)までは,蓄電池からの給電だけでモータを回しているのだ。これ以上の速度になると,エンジンを起動させ,発電しながらモータの回転数を上げていった。
「シーサイド」をゆく大村線
そんなふしぎな走行音を立てながら,佐世保から早岐までは,佐世保線を走る。この区間は,特急「みどり」にてのってきた区間だ。テイクアウトした佐世保バーガーをたべた。思っていたより混雑している車内なので,ちょっとひかえめにたべた。
早岐を出ると大村線に入る。ハウステンボスへむかって走り出す。田んぼがひろがるのんびりした車窓だ。
そんなのどかな景色のなか,唐突に現れるのがハウステンボスの建物群だ。これは遠目にみてもなかなかの迫力で,むかいに座っていた中国人女性3人組が,熱心に写真を撮っていた。
ハウステンボスを出てからしばらくの区間が,大村線のハイライト。この区間で,シーサイドライナーは,その名の通り,大村湾の海沿い(シーサイド)ギリギリを,地形に沿って蛇行しながら走る。
右手の車窓に広がる大村湾は,昨日からの強風の影響なのか,白く泡立っていた。ただ,天気はよかったから,オーシャンブルーはきれいだった。
シーサイドライナーは,トンネルをいくつもくぐりつ,ぽつぽつと駅に停まっていく。都心部にくらべると,駅間はずいぶん長い。
ただ,上述のように,ロングシートであり,車窓を楽しむには混み過ぎていたのが,少々残念ではあった。これを回避する方法もなくはないので,後述することにする。
松原駅からは,竹松市街に入り,この辺りで東側から西九州新幹線の高架が並走してくる。そして,長崎空港も大村湾沿いに近づいてきて,地図上ではあたかも交通の要衝のように感じられる区間になる。ただ,めちゃくちゃ都会かというと,そんなことはない。あくまでも,西九州新幹線のルート上にある主要市街地の1つ,という感じだった。
新大村~諫早~長崎は都心への輸送区間
新幹線がやってきて,主要駅の1つとなった新大村駅で,それなりに乗降があった後,シーサイドライナーは快速運転区間に入り,大村,諫早と停車する。この辺りから,長崎へ遊びに行くのだろう,と思われる地元の利用客が徐々にふえてきた。
定刻通り到着した諫早では,8分停車した。この間,列車には,長崎市街へ向かう客が乗り込んできて,座れない乗客も出るほどの混雑となった。このように,シーサイドライナーは,長崎本線にはいると,一気に近郊列車の様相をしめす。
列車は,諫早を出ると,長崎本線の新線ルート(市布経由)で快速運転した。喜々津にとまったら,そのあとは長崎の1つ手前・浦上駅までノンストップで駆け抜けた。
浦上あたりまで来ると,沿線はすっかり長崎市街という感じ。坂の街・長崎は,ビルや街区のすぐ裏手まで山が迫るような,独特の風景を示している。
佐世保を出てもうそろそろ2時間になろうかというころ,シーサイドライナーは,長崎駅にゆっくりと入線し,停車した。ここで昼下がりの長崎市街へむけて大量の乗客を吐き出したのち,車庫へと回送していった。
高架化されて「あか抜けた」長崎駅
長崎駅は,西九州新幹線の開通に合わせて,2022年にリニューアルされたようだ4。高架駅となり,ピカピカになっていた。おかげで,地上駅時代とくらべて,ずいぶんと「あか抜け」ていた。
長崎駅の地上駅時代
前回長崎駅を訪れたのは,ちょうど5年まえ。長崎駅は,まだ地上駅だった。以下に,そのとき撮った写真を示す。この写真には,787系の左横に,キハ66・67運用の快速シーサイドライナーが写っている。長崎線のシーサイドライナーといえば,このイメージだった。キハ66・67は,2021年に引退したので,これが最晩年の姿といえる。
ちなみにこのときは,長崎から小倉まで,885系特急「かもめ」に乗車した。当時の「かもめ」は,長崎⇔博多間をむすぶ都市間特急としてバンバン走っていた 。885系の白ボディには,やっぱり「かもめ」の愛称がよく似合う。
現在,この「かもめ」の愛称は,みなさんご存じのように,西九州新幹線:長崎~武雄温泉間をはしるN700S系にうけつがれている。
リンガーハットでちゃんぽん
さて,13時過ぎで,おなかが空いた。長崎といえば,ちゃんぽん。中華街に行くのもいいが,そこまでの気持ちはなかったので,歩いて20分くらいのところにあるショッピングモール「みらい長崎ココウォーク」にむかった。
ここのフードコートにあるリンガーハットで,念願のちゃんぽんにありつけた。
ただ,祝日ということもあってか,フードコートはすさまじい混雑だった5。長崎市民が全員いるのではないかと錯覚するくらいだった(そんなことはない)。
野菜たっぷりのちゃんぽんでちょうどよく満たされた腹ごなしに,長崎駅まで歩いて帰った。駅前から延びる新浦上街道のまんなかには,路面電車が走っており,列車から降りても,鉄分には事欠かない。
西九州D&S列車「ふたつぼし4047」にも乗ってみたい
長崎駅からは,長崎本線の旧線(長与)経由で,肥前浜・江北・佐賀方面へのりついでいく予定だった。ちょうどいい時間だったので,駅のコンビニで飲み物だけ買ってホームに上がると,3番のりばに,みたこともない白い列車が停まっていた。観光特急「ふたつぼし4047」だ。
「ふたつぼし4047」は,2022年9月23日に走行を開始したキハ40形・47形改造型の観光特急で,おもに西九州地区で活躍している。
間近でみるとわかるが,この車,とてもうつくしい。キハ40系列とはおもえないほど,素敵なくるまだった。もちろん内装もこだわってつくられており,「ラウンジ40(よんまる)」にはソファやカウンター席などがそなえられていて,カフェで特産品を買うこともできるようだ。
西九州新幹線の通らない,有明海・大村湾の「海」をめぐれる九州D&S列車として売り出していて,運行ルートは,午前便・午後便の2つがあり,それぞれ長崎⇔武雄温泉間を,有明海沿い・大村湾沿いに走る。
- 午前便(有明海コース):武雄温泉→(佐世保線)→江北→(長崎本線)→肥前浜・諫早→(長崎本線・旧線)→長崎
- 午後便(大村湾コース):長崎→(長崎本線・旧線)→諫早→(大村線)→ハウステンボス・早岐→武雄温泉
より詳しい情報は,JR九州の特設サイト6を参照していただくとして,上記のルートは,私が今回旅したルートとかなり被っている。
今回紹介した大村線,それから,次の記事で紹介する長崎本線(旧線区間+諫早~肥前浜)は,海沿いをはしる風光明媚な路線だ。ぼんやり旅をするには,こんかいのように普通のローカル車両にゆられるのもいいが,風景とともにゆっくりした贅沢な雰囲気も味わいたいのであれば,「ふたつぼし4047」に乗るのもオススメだ。車内にはアテンダントも同乗していて,座席はすべて指定。快適な旅になることまちがいなし。
つぎに大村線・長崎本線を旅するときは,この「ふたつぼし4047」に乗ろう,そう思いながら,定刻に出発していく白い車両をみおくった。
(つづく)
- 交通新聞社:「JR時刻表 2024年4月号」 ↩︎
- 「シーサイドライナー」といえば,青色のディーゼルカーのイメージだったが,それはもう何年も前の話。 ↩︎
- JR九州:「九州を明るく照らす次世代の車両が誕生します!!」,URL:https://www.jrkyushu.co.jp/news/__icsFiles/afieldfile/2018/01/26/180126_001821_1.pdf [Access: 2024.5.1] ↩︎
- 長崎市役所:「新長崎駅|100年にいちどの長崎|長崎MIRAISM 誰も見たことのない未来図をいっしょに描こう」,URL:https://nagasaki-miraism.com/oiac/ct08/ [Access: 2024.5.1] ↩︎
- ロードサイドのショッピングモールが休日激込みになるのは,地方の中核都市あるあるだと思っている。 ↩︎
- JR九州:「「ふたつ星4047」2022年9月23日 運行開始!」URL: https://www.jrkyushu.co.jp/train/futatsuboshi/ [Access: 2024.5.2] ↩︎