「ぐるっと九州きっぷ」の旅3日目。午前中は,鹿児島本線鳥栖駅から,久大本線まわりの特急「ゆふ」に乗って,九州を西から東へ横断し,大分駅にやってきた。
大分駅からは,午後いっぱい時間をつかって,豊肥本線(阿蘇高原線)の普通列車をのりついでいくことにした。つまり,こんどは大分から,熊本へと,東から西へ九州を横断することにした。
本記事では,豊肥本線のなかでも,キハ200形普通列車にのって,大分から豊後竹田まで旅したようすをレポートしている。キハ200形は,転換クロスシートの車内と,心地よいエンジン音で,快適な旅路を提供してくれた。豊後竹田駅では,1時間半ほどの乗り継ぎ時間をつかって,竹田の城下町を散策した。
豊肥本線(阿蘇高原線):カルデラを貫く九州横断路線
豊肥本線は,大分駅と熊本駅をむすぶ路線で,九州を東西に横断する。本線は,以下の路線図からもわかるように,阿蘇山のカルデラをつらぬく山岳路線であることから,九州を代表する観光路線でもある。
豊肥本線は,山岳区間にまたがる長大幹線にもかかわらず,定期の特急列車は3本のみ(「九州横断特急」「あそぼーい!」「あそ」)で,このうち「あそ」は,宮地~熊本の区間運行特急である。のこる2本「九州横断特急」1と「あそぼーい!」2は,豊肥本線を横断できる貴重な列車であるが,観光特急という性格がつよい。
九州・阿蘇の大カルデラを,列車からのパノラマで愉しむのもわるくない。こんかいの旅でつかっている「ぐるっと九州きっぷ」は,特急券をべつで買えば,特急にも乗車できた。が,阿蘇のカルデラは,過去に,自転車旅でじっくりと(それこそ間近で)堪能していた(以下の関連記事を参照のこと)。
関連記事:【絶景のオンパレード】春の阿蘇ミルクロード・大観峰を走る【2019春九州自転車旅その5】
というわけで,特急列車にのるよりも,この長大な山岳路線の日常と沿線の雰囲気とを,普通列車をのりついでじっくり味わってみたほうがいい,と考え,上記の路線図を大分から熊本へと,普通列車をのりつぐ形で旅してみることにしたのだ。
キハ200形普通列車の旅
キハ200形 転換クロスシート2両編成で快適な車内
さて,そんな豊肥本線の起点・大分駅に着いたのは11時前。ちょっと大分駅周辺を散歩した。
それから,コンコースすぐ横にあるベーカリーで,焼き立てのくるみパンと塩パンを,コンビニでコーヒーを買って,改札内にあるスペースでたべた。ふだん自炊で和食ばかりになるから,旅先ではパンを食べることが多い。そういえば2日目朝,特急「みどり」に乗る前にもパンを食べていた。じつは,パンが好きなのかもしれない。
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発車の15分前くらいには,列車のやってくるホームへあがった。到着前になると,乗車口前に数人ずつがならぶくらいの状況。ところへ,赤い気動車2両編成がゆっくりと入線してきた。この列車が折り返し
4434D 普通 豊後竹田ゆき(ワンマン)
大分1221 >>> 豊後竹田1335
となるようだ。キハ200系気動車。2両編成だが,ワンマン運転だ。JR九州らしい赤色の車体が目をひく。車内は転換クロスシートで居住性が高い。乗車率は,大分発車時点で4割くらいだった。2両編成は若干過剰なのだろう。
ちなみに,1本前の豊後竹田ゆき(4432D)は,1両編成だった。こちらは両運転台付のキハ220形での運行。久大本線「ゆふ」から乗り継ごうとしたときは,満員に近い状態だった。これはラッキー,「ゆふ」から降りてすぐ乗り継がなかったのが吉と出たようだ!3これなら,終点の竹田までゆっくり車窓をたのしめそうだ。
キハ200は,大分を出てしばらくのあいだ,市街地を走行していった。
大分からの乗客が,大分大学前,中判田,竹中にて,だんだんとおりていった。祝日だが,学生もいる。部活動の帰りだろうか。
竹中駅を出たあたりから,車窓は一気に山岳区間のそれとなった。キハ200は,新潟原動機製450PSの高性能のエンジンにものをいわせて,登り坂を軽快に駆け上がって行った。
街と街との間が長くなることで,駅間も長くなってきた。小気味よいジョイント音を立てる列車は,地元客中心の乗客を快く揺すり,つい眠気をさそう。
後ろ側号車の乗車率は3割くらい。午前中に乗車した久大本線特急「ゆふ」とは対照的な雰囲気4で,落ち着くことこのうえない。こういうローカル線のワンマンカーは,主要駅をのぞいて後ろ寄り車両のドアは開かない。ゆえに,停車しても乗降がないことから,おちついて過ごせる。
大分から乗車している斜向かいのシートの学生(高校生?)は,うなだれるようにして寝ている。もうすっかり山岳区間に入っているが,いったいどこから大分まで通学しているのだろうか。
キハ200形1000番台が奏でる独特のエンジン音
音鉄的には,このキハ200形1000番台が奏でるエンジン音もよかった。
ローカル線区へ投入されている普通気動車というのは,だいたい,低スペックのエンジンを積んでいるか,あるいは,個性のないエンジンをつんでいることが多い。
いっぽうでキハ200形1000番台は,およそ普通列車とは思えないほど,軽快かつ独特なエンジン音をかなでていた。そして加速力がすばらしい。とくに変速音と高速域での噴き上げがいい。
いい音であると同時に,あまり聞きなれないエンジン音でもあったので,当記事を書くにあたり調べてみると,どうやらこの形式には,「爪クラッチ式液体変速機」とよばれる,これまた聞きなれない変速機が搭載されているようだった5。あいにく,この技術を解説するほどの知識を持ち合わせていない。内燃機関にはくわしくなく,Wikiを読んでもよくわからないので,これについては別途,勉強してからまとめてみることにする。
豊後竹田駅で下車して城下町を散策
終点の豊後竹田駅で下車。うなだれるようにして寝ていた高校生は,当駅で下車していった。どうやら,竹田から大分まで通っているようだ。ここまで,大分から1時間ちょっとだから,通えない範囲ではない。
次の列車は,豊肥本線宮地ゆき。このさき宮地までの区間が,豊肥本線でもっとも列車の本数がすくない区間である。乗車予定は,15時ちょうど発 宮地ゆき2424Dであるが,1本前の宮地ゆきは,10:49発の2422Dであり,この間およそ4時間,列車がなかったことになる。
豊後竹田では,1時間半ほどの乗り継ぎ時間をつかって,駅前を散策することにした。豊後竹田駅のすぐ裏には,切り立った崖と,そこを伝うように落ちる滝があった。
滝といえば,ここ竹田市は,「荒城の月」で有名な瀧廉太郎が幼年期をすごした場所である。また,国指定史跡の「岡城跡」もよく知られている。さらには温泉もあるらしい…
と魅力の多い観光地であることは重々承知しているが,今回は1時間半ののりつぎ時間しかないので,前日のうちにチェックしておいたスポットを中心として,駅前の城下町をぶらぶらと散策した。
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駅前の市街地は,ふるい街並みをできるだけそのまま保存したような雰囲気になっている。狭い路地の両側に,木造瓦葺の家屋・店舗が立ち並ぶ。こういう街並みは,あるいているだけで,気分をかえてくれる。
そんな路地をあるきながら向かったのは,但馬屋の茶屋「だんだん」である。前日のうちにあたりをつけておいた,但馬屋老舗本店の店内に併設された喫茶6だ。竹田市の観光ホームページをご覧いただければわかるとおり,静かで落ち着いた店内で,銘菓「荒城の月」や「三笠」をいただける。
この日は,「荒城の月」と「三笠」に抹茶がついたセットをいただいた。大分でパンを食べてからちょうど小腹が空いてきたころだった。しっとりもちもちの「荒城の月」と,ちょうどいい甘さの「三笠」,どちらもおいしかった。
店内のいたるところに真空管やアンプが置いてあって,すごいなーと思いながら眺めていた。総じて小じゃれた店内で,いい休息になった。
ここには,但馬屋の本店もあるので,土産としてお菓子を買っていくこともできる。竹田駅から歩いて10分なので,途中下車の散策先としてはおすすめ。
喫茶から駅までもどるついでに,「廉太郎トンネル」なるものがあったので,通ってみた。人感センサかなにかで,ひとがとおると音楽を流す仕掛けになっていた。廉太郎トンネルと名付けられているゆえ,ここでは「荒城の月」をはじめとする彼の曲がランダムでながれてくるのだが,薄暗いトンネルにひびくメロディラインが絶妙に怖かった。
竹田観光を終え,豊肥本線秘境区間へ
こんな感じで竹田駅前を散歩して,15時発の2424D出発10分前くらいに,駅に戻って来た。竹田には,まだまだ行ってみたい喫茶や店がいくつかあったし,岡城跡にも登ってみたかったのだが,それは次回訪問時の宿題としておこう。
さて,ここからがいよいよ豊肥本線(阿蘇高原線)の本番。列車本数の激減する秘境区間へと入り,阿蘇カルデラを貫通するトンネルをぬけ,阿蘇市街地の宮地駅へとむかう。
(つづく)
記事内で紹介した「荒城の月」と「三笠」のセットは,大分県竹田市のふるさと納税返礼品になっているみたいなので,気になる方はどうぞ。
- キハ185系で運行される。上り(大分→熊本)は,2号・84号の2本。このうち,84号は,後述の脚注にもあるように,臨時特急「あそぼーい!」と同ダイヤ列車であり,「あそぼーい!」運転日には運休となる。 ↩︎
- 「あそぼーい!」は,運転日が決められている。運転日以外は,同時刻・同じ停車駅にて,「九州横断特急(84号:2024年4月ダイヤ)」として運行される。くわしくは,「特急あそぼーい!|JR KYUSHU D&S TRAINS D&S列車の旅」を参照。 ↩︎
- 4432Dに乗れば,豊後竹田には12時過ぎに到着できる。竹田で城下町の散策に時間をとりたいのであれば,4432Dの方がオススメ。 ↩︎
- 由布院へゆく観光客で満席だった。くわしくは「九大本線特急「ゆふ1号」5両増結編成の指定席 乗車記|鳥栖→大分」を参照。 ↩︎
- JR九州キハ200系気動車 – Wikipedia,URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/JR%E4%B9%9D%E5%B7%9E%E3%82%AD%E3%83%8F200%E7%B3%BB%E6%B0%97%E5%8B%95%E8%BB%8A (Access: 2024.5.25) ↩︎
- 竹田市観光ツーリズム協会,「茶房だんだん(但馬屋老舗本店内) | 観光スポット | たけ旅 take_tabi|」,URL: https://taketa.guide/spots/detail/cb4d9479-050f-4495-abd6-dbb698958ba2 (Access: 2024.5.25) ↩︎