
奥羽本線の旅は,お昼過ぎまでの時間で,山形線(福島~新庄)区間を終えた。新庄から先は,ふたたび狭軌の在来線に戻る。奥羽本線といえば,東北本線とならんで,東北地方における在来線2大幹線の1つ。これまでは,当然,全線が電化されていた。
しかし,2024年夏の豪雨のため,一部区間では電化設備を復旧することなく,運転を再開するに至っている。今回は,その非電化区間をふくむ奥羽本線の新庄~秋田間を旅した。
系統分割された奥羽本線 新庄~秋田間
新庄駅では,奥羽本線における狭軌と標準軌の境界が設けられている。以下の写真における足元(通路部分)が,ちょうどその境界にあたる。前回の記事では,ここより上り側(山形線:標準軌)側の写真を紹介した。一方で以下の写真が,その下り側(秋田方面:標準軌)である。

導入で書いたように,新庄から秋田方面へは,非電化区間を挟むために,同一列車で移動することができなくなった。奥羽本線:新庄~秋田間は,途中の院内駅にて系統が分離されているのだ。上の写真の案内板は,下り列車で院内より先へ向かうには,院内ではなく,次の横堀で乗り換えた方が便利であることを説明している。これについては,後ほど説明する。
新庄駅から乗車するのは,以下の列車だ。
9485D:快速 横堀ゆき
新庄13:36→横堀14:25

記事冒頭の写真がそれで,JR東日本のGV-E400系気動車1両編成が充当されている。GVとは,Generating Vehicleの略で,一般的な気動車に名付けられる「キハ」の「キ」にあたる。つまり,気動車で運行されている。
また,列車番号からもわかるように,9000番台を附番されている。この列車だけでなく,新庄~院内(横堀)の列車は,すべて9000番台が付けられている。一般に9000番台は,臨時列車に与えられるので,この区間は暫定的に運転再開している,とみるのが適当かもしれない。
電化→非電化になった区間|新庄~横堀
乗車した快速列車は,横堀まで49分かけて走る。途中かなりの駅を通過したが,それでも普通列車と所要時間が変わらない。速達性を上げるためというよりもむしろ,需要が少ない途中駅を通過するためだけに設定された「快速」だと推測される。
さて,標題の通り,この区間一番の見どころは,失われた電化設備にある。前面を見ていると,たしかに,架線していたであろう柱があるにもかかわらず,架線とそれを吊架する設備が無くなっているところが散見された。

ただし,横堀まで全線にわたって,非電化となっているわけではなかった。以下の写真のように,まだ架線柱に対して架線を張り残している区間もあった。むしろ架線区間の方が多いくらいだったと記憶している。

とはいえ,この区間はもう,「非電化」として運行されている。おそらく,架線および関連設備のメンテナンスは,保守作業から外されているのだろう。したがって,設備があるからといって,電車がすぐに運行できるかというと,そうではない。むしろ,保守の手間を減らして合理化を図りたい,というのが本音だと思われる。
この区間は,真室川より北では,需要が少ない。現に,1両編成の気動車で十分事足りている。快速として通過していることが,その需要の少なさを物語っている。幹線ではあるものの,この区間は,地方ローカル線と同じような雰囲気である。

このような光景を見ると,非電化で復旧させただけでも,まだよかったのでは?と思う。これが地方のローカル線であれば,復旧されることなく分断もしくはバス転換,というシナリオもありえたかもしれない。
最近,国交省では,鉄道車両のGX化に関して議論されている1。将来的に,ハイブリッド気動車の性能向上が進んでいけば,電化線を非電化する,という災害からの復旧方法も,一般的になっていくのかもしれない。

さて,列車は山越えを終えて,院内駅にやってきた。列車は14:20に院内を出発する。停車中の間,反対側のホームに701系がみえた。この列車が,実はこのあと横堀で乗り換える電車だ。時刻表をみると,この701系は,9485Dが院内を出た5分後に,後を追いかけるようにして院内を出発する。

要するに,院内駅でも,9485Dから次の電車に乗り換えられる。ただし,跨線橋を渡って反対側のホームへ行かないといけないので,多少面倒。これを考慮して,9485Dはわざわざ1つ先の横堀まで走り,同一ホームで対面乗り換えできるようにしているのだった。冒頭で紹介した案内標識は,これを説明しているのだった。時刻表をみて,「なんでどちらの列車も院内→横堀を走るんだろか」と疑問に思っていたが,この光景を見て,それが解消できた。
横堀駅で701系に乗り換え

GV-E400系気動車は,定刻通りに横堀駅に到着した。横堀という駅名は,今回の旅で時刻表を見るまで,耳馴染みが無かった。それもそのはず,従来は終着駅ではなく,単なる途中駅だったのだ。

当然,この駅が乗り換えのための拠点となることは想定されておらず,周囲は素寒貧としている。のりかえ以外に用事はないお客さんがほとんどで,5分あとを走っている701系をホームで待っていた。9月だが,東北もかなり北まで来ているので,風は涼しいというより肌寒いに近い。まだ夏なので耐えられるが,これが真冬だと結構辛いのではないだろうか。
特にすることもないので,701系を待つ間,GV-E400系気動車を観察していた。どこかで見たような顔だなあと思っていたが,JR北海道の気動車H100形とよく似ている。個人的には,最近の普通列車用気動車として,悪くないスタイルだと思っている。

ちなみにこの車は,製造当初は青森の方で走っていたらしい。車内には,青森県警のポスターが貼られたままになっていた。津軽線:蟹田~三厩あたりで走っていたのが,そこが代行輸送になったために,長期出張に来ているという記事を読んだような。

するとまもなく,後続の701系がやってきた。
2445M:(院内14:25発)横堀14:30→秋田16:12
ワンマンカー。GV-E400系と同じホームの向かい側に停車した。さっき降りた乗客のほとんどが,この列車に乗り込んでいった。ここから秋田までは,1時間42分だ。

701系で横堀から秋田へ

この区間は,大曲から少し先に至るまでの間,基本的には田んぼの中をただひたすらに真っすぐ走る。701系は,電動機のせいか,歯車比のせいか,高速域に至ると,とんでもない爆音を立てながら走る。そして車窓は単調。拍車をかけるようにして,リズムよくジョイント音が響くので,どうしても眠くなってしまう。

大曲駅で,どっと降車した。大曲から先では,奥羽本線(狭軌)と並ぶようにして,田沢湖線経由の標準軌が並走する。新庄からはるばる北上してきたここでまた,ミニ新幹線と並走する区間となる。結構な区間を並走するので,新幹線と並走するチャンスは多そうだ。

羽後境の前後は,ふたたび峠越え。標準軌と狭軌が,なかよく並ぶようにしながら,左右へカーブしつつ,峠を登り下りした。さっき乗ったGV-E400系気動車と比べると,ずいぶん軽やかに登坂していたと思う。電化というのは,こうも素晴らしい技術なのかと感心した。
最後,四ツ小屋に着くあたりから,隣の標準軌を「こまち」が走って来た。時刻表を見ていると,この辺りで抜かれるだろうな,と予測していたのがあたった。これが時刻表の醍醐味の1つだ。
こちらが2両編成でちょこちょこ走っているのに対して,向こう側は7両編成で悠然と追い抜いていく。あちらは大曲からノンストップで走っている。こっちが停車せんとするところを,一息で追い抜いて行った。新幹線のなかでは小柄な部類のはずなのだけど,高速走行に対応した機器類に長編成,それに何より鮮やかな赤色のボディが鮮烈な印象だった。

秋田駅に着いた。今日の朝,福島以来のターミナル駅だ。奥羽本線,羽越本線,そして秋田新幹線が一同に会する。それだけに,ホームの数も多い。名古屋駅とか,岡山駅とか,その辺の雰囲気とよく似ている。
秋田駅からは,もう少し先まで足を延ばして,男鹿半島まで行ってみることにした。
(つづく)
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- 国土交通省「鉄道分野の GX に関する官民研究会」:「鉄道分野の GX に関する基本的考え方(案)」,URL:https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001908709.pdf(最終アクセス日:2025年10月26日) ↩︎
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