奥羽本線(山形線)を普通列車で旅する|米沢→新庄|北海道&東日本パスの旅(6)

北海道&東日本パスの旅3日目。福島から山形新幹線を1区間だけ乗車して米沢にやってきた。

米沢から先は,新幹線を降りて,普通列車を乗り継ぎつつ,新庄まで行くことにした。

昨年の田沢湖線の旅に続き,新幹線と並走する面白い区間。

719系5000番台で米沢から山形へ

山形新幹線「つばさ127号」を降りたあと,米沢駅1番線から3番線へと跨線橋を渡った。次に乗り継ぐ列車は,

435M:米沢10:40→山形11:25

だ。3番線とその横の留置線には,この区間を走る車両がスタンバイしていた。いずれも同じ車で,顔を見ればわかるように,いわゆる国鉄顔の生き残りである。

719系5000番台(米沢駅にて)

奥羽本線の福島から新庄の区間(通称:山形線)は,新幹線車両が直通できるように,レールの幅が新幹線仕様(標準軌)となっている。そのため,山形線を走る普通列車は,すべて標準軌を走れるようになっている。

今回,米沢から乗車する719系はその1つで,標準軌用として5000番台が付与されている。標準軌の本線を走れる在来線車両は,基本的に山形線と田沢湖線(いずれもミニ新幹線が乗り入れるために改軌された路線)でしか見られない。

5000番台は,標準軌(新幹線と同じ幅のレール)を走れるようになっている。

719系5000番台の車内は,あまり見かけない座席配置になっている。単なるボックスシートではなく,「集団見合い型」の構造が採用されている。3ドアの各ドア間に,進行方向向きと,逆向きの2列掛け座席が,それぞれ2組ずつ向かい合うように配置されている。つまり,4列のうち,中央2列はボックスシートになっていて,その背後の1列は,クロスシートのようになっている。ゆえに,進行方向向きの席に座ると,進行方向逆向き席に座る複数の乗客と「お見合いする」ような形になる。これが「集団見合い型」と呼ばれる所以だ。

719系5000番台では,「集団見合い型」という,ちょっと変わった座席配置になっている。

米沢から山形までの所要時間は45分。車内の乗車率は4割弱というところだった。山形までの乗客は,ほとんどが新幹線に乗るだろうから,この列車に乗っているのは,新幹線が停車しない駅の利用客か,私のようなマニアくらいだと思われる。

とはいえ,ダイヤ上では,山形ゆきの「つばさ」と普通列車の所要時間は10分も変わらない。いくら新幹線が速いとはいえ,この区間では,在来線の特急と同様の速度でしか走れない。山形線区間に限っていえば,速達性がバツグンにいいとはいえない。ミニ新幹線の利便性は,それよりもむしろ,「山形線の各線から東京まで乗り換えなしで行ける」という点にあると感じられる。

さて,昨日,一昨日と天気は良かったが,この日は一転して曇り空だった。いまにも雨が降り出しそうな空である。とはいえ,収穫間近の水田は,相変わらず眺めているだけで気持ちいい景色だ。

山形から701系5500番台にのりかえて新庄へ

山形に着いた。すぐに次の列車

1433M:山形11:27→新庄12:48

へ乗り換えた。乗換時間は2分しかない。同一ホームの乗り換えではあったものの,1433Mがかなり新庄寄りに停まっていたので,少し早足で乗り換えた。

山形では,奥羽本線の下り列車へ同一ホームで乗り換えられる。

この列車は,701系5500番台で運転。これは田沢湖線の車両(701系5000番台)と同じタイプではあるものの,座席がすべてロングシートになっているという点において違いがある。(5000番台は,ボックスシートとロングシートの千鳥配置)。

山形から羽前千歳駅までは,仙山線が並走している。仙山線は,在来線(狭軌)なので,狭軌と標準軌が並走している光景を見ることができた。同じ在来線なのに,レールの幅が違うというのはなかなか面白い。

仙山線のE721系と行き違い。あちらは狭軌(一般的な在来線と同じレール幅)だ。

山形地区に関していえば,この仙山線と,左沢(あてらざわ)線は,乗り残している路線の1つなので,次の機会でぜひ乗りに行きたい。

新幹線と近郊型電車が居並ぶ光景

山形から新庄までは少し離れていて,普通列車だと1時間20分かかる。ロングシートにずっと座っているのもつまらないので,たまには前面展望を見に行く。ちょうど天童駅に着くとき,E8系(つばさ140号)とすれ違うのを見ることができた。普通列車に乗っていて新幹線とすれ違うと,ちょっと不思議な感覚に陥る。すれ違ったつばさ号は,この天童駅から東京までちょうど2時間で到着する。

701系5500番台の前方から見た山形線の景色。線路の幅が広いことと,新幹線がいることに注目。

村山駅では,3番線に到着して大休止。ここで後続の「つばさ131号」に先を譲る。

701系は東北地区のスタンダードだが,足回りだけは特殊仕様。
あくまでも新幹線(つばさ)が優先。

少し待っていると,E8系が2番線に入ってきた。日中の新庄ゆき「つばさ」は,福島・米沢に停まると,山形までの途中駅を通過する。山形から先の新庄までは,天童・さくらんぼ東根・村山・大石田の各駅に停車するのが基本ダイヤのようだ。

普通列車の横を出発するE8系新幹線。ミニ新幹線を象徴する風景の1つ。
新幹線と比べるとずいぶん短い普通列車。地域輸送に徹している。

村山から先は,山形線の末端区間にあたる。先へ行くほどにロングシートはガラガラになっていった。ちょうど昼過ぎで,お腹もすいてきたところだったので,昼食をどうするか考えながら車窓を楽しんだ。

新庄駅:実は「つながっていない」奥羽本線

米沢からおよそ80分で,終点の新庄に到着した。福島ー新庄をむすぶ山形線の終着駅だ。東京からはるばる走って来た山形新幹線も,ここが終点となる。ホームではちょうど,701系とE3系新幹線が並んでいるのを見ることができた。写真のE3系は,2025年中に引退することが決まっている。

引退が迫るE3系新幹線。乗りに行くチャンスは今年限りだ。

新幹線区間が終わるということは,レール幅を標準軌にしなくてよいということ。つまり,新庄以北の奥羽本線では改軌の必要がなかった。したがって新庄駅は,標準軌と狭軌の境界駅となっている。山形線(新幹線)区間は,基本的に標準軌のみで,三線軌条にはなっていない。いいかえると,山形線と新庄から先の奥羽本線は,直接つなげることができない(レール幅が違うから)。

では,新庄駅でレールはどうなっているのかというと,完全に分断されている。つまり,同じ奥羽本線(福島~山形~新庄~大曲~秋田)なのに,レールがつながっていないのだ。以下の写真は,その分断部分に対して垂直にかかるコンコースから撮影したもので,この足元を境として,標準軌区間と狭軌の区間が分かれている。

新庄駅ホーム上から撮影。線路はこの真下で分断されている。つまり,奥羽本線はつながっていない。

さて,この新庄駅からも,引き続き奥羽本線を北上していく旅を続ける。乗り継ぎ時間は48分。駅から離れると乗り継げなさそうだったので,駅ナカにある蕎麦屋さんで昼食をとってから,次の列車へと乗り継ぐことにした。新庄から先の区間は,全国的にも珍しい「既存の電化設備をはがされることで非電化となった」区間となる。

(つづく)

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