特急「しなの」パノラマグリーン1A席乗車記|中津川→塩尻|信州鉄道旅(1)

学位に関する大仕事が終わった3連休の後半をつかって,ちょっとした旅にでた。

目的地は信州方面および飯田線に決めた。まずは,名古屋市内から,383系「しなの」に乗って,中央西線で塩尻まで向かい,そこから辰野線経由で飯田線へと向かうことにした。

383系特急「しなの」は,中津川まで普通車,中津川からグリーン席に乗ることにした。このようにして,グリーン料金を節約しつつ,普通車のモータ音も,グリーン車の前面展望も,一度の乗車で味わうという,ちょっと贅沢な鉄道旅を試みた。

383系「しなの」で塩尻へ行こう

下りの「しなの」では,基本的に,流線形・大きな窓ガラスの「非貫通型」グリーン車が先頭に立つ。

まえがきのように,今回の旅ではまず,中央線で塩尻まで北上し,そこから中央東線(辰野線)経由で辰野まで向かうことで,飯田線の旅をはじめる旅程を立てた。これは,飯田線のダイヤや沿線の宿の空き状況を考慮すると,辰野方面から南下する方が旅しやすいと考えられたからだ。

まず,名古屋から塩尻まで,中央西線特急「しなの」383系に乗ることにした。「しなの」にはもう何度も乗っているが,これからはもう何度も乗る機会がなくなると予想されるので,ちょっと奮発してグリーン車で行くことにした。ただし,後述するように,乗車区間を少し工夫することで,コスパよくグリーンに乗ることを考えた。

グリーン席を中津川~塩尻のみ指定するのがコスパ◎

「しなの」には千種駅から乗車した。塩尻にて降車するので,特急券区間は千種➡塩尻とした。今回は,このうち,中津川~塩尻の区間だけグリーン座席を指定して,千種~中津川の区間は,自由席とすることで,グリーン券料金を節約した。

営業キロとグリーン料金|100kmまでなら割安

JRのグリーン料金は,基本的に距離が長くなるほど高くなるが,完全に距離に比例するのではなく,いくつかの距離区分にのみ分けられている。具体的には次のような具合だ。

営業㌔100 kmまで200 kmまで400 kmまで
グリーン料金1,300円2,800円4,190円
JR東海内の特急列車にのる場合のグリーン料金(グリーン券(特急・急行のグリーン券)|JR東海HP より抜粋)

すなわち,次の距離区分に上がらないギリギリの区間だけグリーン券を出せば,コスパよくグリーン席を楽しめるのだ。

特急「しなの」号の営業㌔についていえば,

名古屋や多治見からグリーン券を買うと

  • 名古屋~塩尻(174.8 km)
  • 多治見~塩尻(138.6 km)

と,いずれも100 kmを超える。いっぽうで,途中の区間に目をむけると,

  1. 名古屋~多治見(36.2 km)
  2. 名古屋~中津川(79.9 km)
  3. 中津川~塩尻(94.9 km)

であり1,3. 中津川~塩尻の区間はギリギリ100kmを超えないので,「コスパよくグリーン席に座れる区間」の1つといえる。

通しのグリーン券より1,500円割安(通常期)

このようにすると,名古屋起点の場合は,通常期で計算すると

  • 名古屋~中津川(自由席):2,200円
  • 中津川~塩尻(グリーン席):1,300円
    __________________
    計:3,500 円

となり,通しでグリーン券を買った場合(5,000円)より,1,500円安くなる。

ちなみに,全区間を自由席とすると,特急料金は2,200円。つまり,上表のように,100kmを超えない(中津川~塩尻)区間であれば,自由席料金に1,300円加えるだけで,グリーン席に座れるということだ。

383系パノラマグリーン先頭席:1A1B席と1C1D席の違い

今回は,以上の考えのもと,名古屋11時発の「しなの9号(1009M)」に乗車し,千種~中津川は自由席(10号車),中津川~塩尻はグリーン車(1号車1A席)に座った。

1号車(パノラマグリーン)最前列の座席配置

383系1号車(非貫通型パノラマグリーン車)の車内。

1A席をふくむグリーン車最前列座席について,下り383系1号車1列目の座席配置は

↑(長野・松本・塩尻)

/‾‾‾‾パ‾‾‾ノ‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾ラ‾‾‾マ‾‾‾‾‾‾\

——運転台————\_____________________

_____壁_乗務員扉(施錠)______

(左窓)–1A—1B—–|通路|—–1C—1D– (右窓)

↓(名古屋・中津川)

となっている。上図のように,1A・1B席の前には,運転台がある。いっぽうで,進行方向右側の1C-1D席の前には,運転台がない。

したがって,前面のパノラマを最大限に楽しむなら,基本的には1C 1D席の方がいい。一方で今回は,残念ながら1C席に先客があったので,1A席に座った。

以下では,1A-1B席と,1C-1D席を乗り比べてみた感想を書いておく。

なお,1C 1D席の乗車記については,以下の記事で紹介したので,そちらを参照してほしい。

特急しなの 383系パノラマグリーン乗車記|名古屋→長野

1A(1B席)は運転士気分と木曽谷の景色を楽しめる

1A(1B席)からの前面展望は,1C-1D席よりは劣るものの,視界の半分より上くらいは,十分に展望を楽しめる。

383系1号車1A席からの前面展望。運転士気分で前面を眺められる。

進行方向左側1A-1B席が,1C-1D席より優っているのは,運転士の動作や喚呼を楽しめることと,側面窓から木曽谷(木曽川)の風景をしっかり見られることだ。

前者については,特に,JR東海の運転士は,しっかり指差喚呼されるので,見ていて楽しい。背筋をのばして座れば,運転士気分を味わえる。

後者については,名勝「寝覚の床」をはじめとして,中津川~木曽福島~塩尻の大半の区間にて,左側の景色が素晴らしい。この区間,進行方向右側は,すぐ近くまで山が迫っていることが多い。

名勝「寝覚の床」は,中津川~塩尻間のハイライトの1つ。木曽川は,この区間,進行方向左側に見えることが多い。

このように,運転士の動作や側面展望を楽しむことを考慮に入れるならば,1A-1B席でも十分に楽しい2

特急券分割乗車の長短

ここまでは,グリーン車の指定料金の節約と,最前列席のようすを書いてきた。ここからは,もう少し視野を広げて,1つの特急列車で,座席を変えることの良しあしについてもまとめておく。

いいところ|モータ音も前面展望も味わえる

グリーン車,とりわけ383系パノラマグリーンの楽しみは,上記の通りで,運転士の指差喚呼や,前面・側面の2方向の車窓を楽しめるという点にある。特に,広い窓から眺める前面展望は,他の列車にはない格別の景色で,これだけでも追加料金の元がとれる。

一方で,383系普通席にもグリーン席にはない楽しみがある。具体的には,自由席・指定席に限らず,モータ車(モハ)では,床下から響くGTO-VVVFインバータサウンドを楽しめることだ。

1号車のグリーン車は「クロ」で,モータがついていない。展望は面白いが,モータ音が聞こえない。音鉄にとって,これはちょっとつまらない。そこで,今回のようにして,前半は自由席(指定席),後半はグリーン席とすれば,一度の乗車で383系の魅力を最大限に楽しめるのだ。

383系「しなの」は,名古屋~中津川の都心・郊外区間においては,以下の動画(1D席から撮影)のように,振り子全開の高速コーナリングで駆け抜けていく。

これに対して,中津川以北の木曽谷は,風光明媚な区間を,比較的ゆっくりと走っていく。

したがって,塩尻までの区間で「しなの」の座席を座り比べるなら,中津川以南は自由席として,中津川以北でグリーン車に乗るのがベストだと思う。

気を付けるべきこと|自由席だと座席移動がやや面倒

ただし,同じ列車で座席を変えるとなると,最初のほうで少し書いたように,列車内で座席を移動しなければならない。383系「しなの」は,残念なことに,自由席を名古屋方に連結している。中津川以南で自由席に座ると,中津川到着までに,編成の後ろから先頭号車まで,いくつもの車両を通り抜けていかないといけない。

多治見を過ぎると,沿線の風景は長閑になってくる。中津川までは,側面からの展望も十分に楽しいので,普通車でも満足度は高い。

今回乗車した「しなの9号」は,10両の増結編成になっていた。私は,モータ車だからといって,何も考えず10号車自由席に座った。それゆえ,中津川に着く前から席を立って,編成の端から端まで歩いていって,1号車まで移動する羽目になった。振り子でグイグイ揺れる車内を,いちばん前まで歩くのは,やや面倒だった。

この手間を避けたいなら,1号車のすぐ後ろの2号車や3号車指定席をとることが勧められる。

383系グリーン車,乗るなら今のうち!

383系「しなの」塩尻駅にて。JR東海の運転士とJR東日本の運転士が交代する一コマ。

383系パノラマグリーン車について書いてきた。今回は中津川~塩尻の区間でグリーン席に座ったが,日中下りのグリーン車最前列席さえ予約できれば,どの区間に乗っても楽しい。したがって,グリーン券を買う時は,指定席券売機のシートマップをつかったり,駅員さんに伝えるなどして,1号車の最前列を指名買いすることが勧められる3

383系は後継車両への置き換えも発表されている。一応,パノラマ車もつくようなデザインになっているが,383系のパノラマを味わうなら,今のうちだ。

(つづく)

【過去の「しなの」乗車記】

【振り子全開!】しなの3号自由席で名古屋から長野へ|在来線で北海道をめざす旅①

特急しなの 383系パノラマグリーン乗車記|名古屋→長野

外から見る分には,貫通型の顔の方が格好いいと思っています。

【JR東海】特急型車両の貫通型先頭車の顔が好きだ

  1. Yahooのりかえ案内による検索結果。 ↩︎
  2. 一方で,塩尻から先のJR東日本の区間(塩尻~松本~長野)については,進行方向右側に,日本三大車窓「姨捨」が見える。また,同区間ではJR東日本の運転士に交代する。同社では,運転士の指差喚呼は最小限であるように観察され,それゆえ,塩尻以南のJR東海の運転士ほど大きくない。このことからも,1A-1B席だと,少々退屈するかもしれない。以上のことから,塩尻より北の区間もグリーン車に乗るなら,1C-1D席(特に窓側の1D席)の方が楽しいといえる。 ↩︎
  3. 多客期に8両もしくは10両となった場合に,前面展望のないグリーン車が増結されることがあるが,指名買いすればこの車両を避けられる。ただし,稀に,パノラマでないグリーン車が,長野方の先頭に立つ編成で運転されることがある。つまり,1号車を指定すれば,100%パノラマ車に座れるわけではない。グリーン席を指定するときには,この点も,頭の片隅に置いておきたい。どうしても気になる人は,始発(名古屋)駅で10分前くらいにホームに入ってくる列車を確認して,貫通型の車が先頭だったら,グリーン車を指定席や自由席に変えるという方法もなくはない。 ↩︎
Rin Suigetsu

工学研究者(をめざす博士後期課程の大学院生)。専門は電力工学。鉄道を主とした一人旅の見聞録を書いています。国鉄型と凸型の電機が好き。ときどきロードバイクにも乗ります。

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