自炊が節約するものと継続のためのルール

食事は,大学生活を支える土台だ。身体に栄養が足りていないと,体力が落ちてしまう。体力の低下は,日頃の生活における疲れを招きやすい。また,免疫力が落ちて体調を崩してしまうことにも繋がる。なによりも大切なのは「健康」なので,食事はすなわち最も重要な生活の一部であることは疑いない。

大学生の食事について,とかく話題にあがるのが「自炊」だ。「自炊は,外食より野菜を摂取できる分健康に良く,食費の節約にもなる。ただし,継続すること・習慣化することは難しい。」というのが世間の通論だと思われる。この記事では,そんな通論に対して,4年以上ひとり暮らしをして,それなりに自炊をつづけてきた大学院生の体験から意見を提示する。具体的には,以下の2点について書く。

  • 「自炊」が本当に節約するもの
  • 「自炊」を継続するコツ

自炊の目的?

自炊の目的として「節約」が挙げられる。もちろん,うまく自炊をすれば,お金の節約ができるかもしれない。ただ,私はこの意見に半分賛成で,半分反対だ。

自炊は時間を消費するが・・・

自炊には,食べること以外に時間が必要だ。それは,「つくる」ことと「片付ける」こと,ほかに「材料を揃える」ための時間だ。これに時間を使うことによる経済的損失は,社会人にとっては大きいと思われる。

時間は,貴重な資源だ。お金を多く持っていて,時間の方が足りないのであれば,食事は家で作るより外食あるいは中食で済ませるほうがいい。そのほうが,美味しいものを食べられて,かかる時間も少ないからだ。

ただ,一般的な大学生には,この意見は当てはまらない。なぜなら,金より時間の方が余っているからだ。したがって,大学生は,自炊によって余分に必要となる食事時間くらいは,差し出して良いと考えられる。

参考: 【日記#4】2020/06/01~06/07 時間の自由は手に入るか?

お金の節約は簡単ではない

ただし,このように時間をかけても,自炊が直接「節約」につながるとは限らない(ここでの「節約」とは,食費の節約の意)。

自炊によって節約するためには,食材を無駄なく使ったり,凝ったものを作らないようにしたりといった努力が必要だ。買った食材を腐らせて捨てたり,作りすぎて食べなかったりすると,それはすなわち食材を買うために支払ったお金を捨てていることになるからだ。

実家で暮らしてきた大学1年生の学生にとって,こういった努力はハードルが高い。作るだけで精一杯に違いない。このように,自炊は直接的には食費を節約しない。

では,自炊が節約するものは何なのか?

自炊は不健康と病院代を節約する

自炊が直接「節約」するのは,お金そのものではない。

自炊は,不摂生が招く不健康それに伴うQOL低下,および病院代を節約するのだ。

これは,大学院生になって研究室に籠る生活が続くようになって痛感したことだ。スーパーやコンビニの食べ物でも,お腹は満たされる。しかし,それらの味はどうしても均質的で,精神的に満たされないことが多い。精神的に満たされないと,気分が落ち込みがちになる。すると,(不思議なことだが)体調がすぐれなくなったり,病気にかかりやすくなったりする。こうなると,病院にかからなければならなくなる可能性が高まる。

参考: 健やかに研究をするためにやっていること7つ

一方,時間的に余裕をもって自炊ができている時は,気持ちが安定している。自分でつくった料理は,毎回味が少しずつ異なる。自炊できている時は,このアナログ的な味の違いもちゃんとわかるのだ。こういうときは,体調も安定していて,食事を主要因として病院にかかる可能性は低い。

もちろん,体調には食事以外の要素も絡んでいる。たとえば,睡眠や運動不足は,体調を不安定にする重要なファクタだ(実際に自分は,研究室に入ってから,後者が影響していると思われる体調不良で,数度病院にかかった)。ただ,食事をしなければ運動も睡眠もおぼつかない。だから,食事は体調を左右する重要なファクタであることは間違いない。

参考: GW明けの先生との雑談~M1の終わりに国際会議?~

自炊のルール

大学4年間,朝ごはんと夜ごはんは,できるだけ自分で作ってきた。たまには外食に行くが,家で食べることの方が多い。昼ごはんについては,家より大学で食べることが多い。たとえば,大学の購買で弁当を買ったり,学食を食べたり,といった具合だ。おかげさまで,大学院生の私は,なんとか元気に生きている。

このようにして,自炊を続けるためにはどうらすればいいのか?ここでは,私が4年間で確立したルールを紹介する。

凝った料理・難しい料理を作らない

つくる時間が食べる時間(10-15分)を上回るようなものはできるだけ作らないようにする。

時間や気持ちに余裕があるときには,そういったものを作るのもいいかもしれないが・・・お腹を満たせて体調を維持できるレべルの食事でよいならば,張り切らなくていい。

ごはんを炊飯器で炊いておいて,それと炒め物など簡単につくれるもの(缶詰や焼き物でもいい)を食べるだけで十分元気に生きていける。大学生の「自炊」なんて,それで十分だ。凝った料理が食べたくなったら,近所の食堂や大学生協の食堂へ行けばいい。

(料理研究家・土井善春 先生の「一汁一菜でよい」という提案はとても興味深い)

献立を考えずに食材を買う

自分が食べられるものを作ればいい。自炊は自由だ。なにをどんな風に調理するかは,完全に作り手の自由だ。

参考: 結局いちばん面白いのは「つくって」「考える」こと

最低限のルール(料理のさしすせそって知ってますか?)を守れば,それなりに食べられるものが作れる。

最近は便利な調味料もあって,炒めたりレンジでチンするだけで作れるものも多い。

スーパーでは,献立を考えず旬の食材や安売りしている食材を買ってくる。そして,その安くて美味しそうな食材から,毎日の夜ごはんを作り出すのだ。

できるだけレシピを調べない。基本だけ知っておく。最初は大変かもしれないが,何ヶ月か続けるといくつかの成功パターンを知ることができる。

無理をしない

自炊をしなければ死ぬということはない。

自炊はbetterな選択肢であって,mustでもsholdでもない。

疲れたらコンビニに行けばいいし,友達とごはんを食べに行けばいい。

普通の時にふつうに自炊できる習慣が作られれば十分だ。

下宿にて親子丼づくり…鶏むね肉と玉ねぎと卵でできるシンプルな親子丼は,比較的よく作る。

まとめ:食事は生活の基盤

今回の記事では,大学生の「自炊」に関して,

4年間を超える下宿生活で考えたことをまとめて紹介した。ポイントは以下の2点。

  1. 自炊は,不健康,すなわち病院代を節約する
  2. 自炊継続のルールは「3ナイ主義」(凝った料理は作らない,献立は決めない,無理はしない

「自炊」をすると,健康になれるのはもちろん,精神もととのえられる。料理する=自然の食材を調理するのは,古来から人間がやってきたことで,今も生活の基盤を支えていることだ。日常の雑多なことを優先するより,まずは生活の基盤をしっかりするのが,現代人のやるべきことではないだろうか。

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