【竹鼻線乗車記】岐阜羽島駅へ名鉄線でアクセスしてみた|金山ー新羽島

岐阜羽島駅は,岐阜県羽島市にある東海道新幹線の駅だ。当駅には,数本の「ひかり」と,「こだま」のみが停車する。ただ,その存在意義が微妙なのはよく知られている。この駅で新幹線を乗降したことのある方はきわめて少ないのではないだろうか。実際,岐阜羽島駅の利用客数は,東海道新幹線のすべての駅のなかで最も少ない(岐阜羽島駅 – Wikipedia)。

利用客数が少ないのは「名古屋駅の方が圧倒的に利便性が高いから」である。岐阜や大垣の人でも,本数の多い東海道本線によって移動し,名古屋駅から新幹線に乗る方が,接続交通機関の乏しい岐阜羽島駅から新幹線に乗るより利便性が高い。もちろん,名古屋の人は名古屋から新幹線に乗る。よって,ほとんどの人にとって,岐阜羽島駅で新幹線を乗降するという機会は,まずないといってよい。利用客は,名古屋より遠方から,羽島市とその近辺に用がある人に限られるといえる。

それでも,自分のようなひねくれた鉄道ファンは,「通過すれども乗降せず」な,岐阜羽島駅を利用することに興味が湧くはず。そして(ありがたいことに),それを実現してくれる交通機関がある。それが名鉄竹鼻線・羽島線だ。今回は,金山から名古屋本線経由で竹鼻線に乗り,新羽島駅までアクセスしてみたようすを紹介する。

岐阜羽島への名鉄によるアクセス

名古屋・金山から,名鉄で岐阜羽島ぎふはしま駅へアクセスするルートは以下の通り。

名古屋・金山→(名古屋本線)→笠松→(竹鼻線,羽島線)→新羽島

笠松かさまつから新羽島しんはしまへは,途中の江吉良えぎら駅までが「竹鼻たけはな線」,江吉良から新羽島までの1区間のみが「羽島はしま線」だ(ただし,この区分は規則上そうなっているだけで,ほとんどの場合は笠松から新羽島までのりかえなしで行ける)。

今回は,上記のルートを実際に乗りとおし,金山から新羽島まで移動した。

名古屋本線特急|金山→笠松

まずは,地下鉄で名鉄金山駅へ向かう。金山から,竹鼻線のりかえ駅である笠松まで,名古屋本線の列車に乗車する。

ちょうどいい時間に,岐阜ゆきの特急列車が来るようだ。せっかく特急に乗るなら,特別車に乗って優雅に行きたい。改札を通る前に,券売機で笠松までのミューチケットを買う。

券売機の硬貨投入口には,「新500円つかえません」のシールが貼ってあった。そういえば新しい500円硬貨が流通し始めるような話を聴いたことがある。現役の硬貨のデザインが変わるのは,人生で初めての経験だ。

さて,券売機では,20:50発の名鉄岐阜ゆき特急(403号) 1-9-D席を,竹鼻線のりかえ駅の笠松まで購入した(ミューチケットは1枚360円)。金山駅の名鉄線改札を通り,ホームへ降りる。名鉄線はいつもモバイルSuicaにて利用している。

参照: さよならmanaca…名古屋民の『モバイルSuica』導入記

岐阜・新鵜沼うぬま方面の発車標を確認,乗車予定の岐阜ゆき特急は,②番のりばから出発するようだ。名古屋本線特急の特別車(1・2号車)は,豊橋寄りについている。なので,ホームの豊橋寄りにて列車を待つ。

名鉄金山駅は,隣の神宮前じんぐうまえ・名鉄名古屋と並んで,名鉄主要駅の1つだ。もう21時を回ろうかという時間なのに,ホームにはまだまだ乗客が待っている。金曜日の夜ということもあるのだろうが,それにしても遅い時間まで多くの利用客がいることがうかがえる。

一度,当駅で動画を撮影したことがある。名古屋本線唯一の複々線区間にあり,隣の名古屋駅が複線であることから,当駅では大量の列車が発着する。特に撮影した夕方時間帯は,夕方ラッシュにあたっており,駅員さん・乗務員さんのすばらしい列車捌きを見ることができる。

階段から離れた特別車乗降位置で待っていると,新鵜沼ゆきの特急に続いて,岐阜ゆき特急がやってきた。2200系車両での運転だ。

2200系|特急 岐阜ゆき

特別車に乗り込むと,車内にはちらほら乗客がいた。スーツを着たサラリーマンもいたが,スーツケースを持っている女性2人組もいた。このときは,「金曜日なのに旅行帰りなのか?」と思った。この記事を書くために調べてみると,この特急はセントレア始発だった。セントレア出発時刻は19:14,それなら女性2人組がスーツケースを持っていたことも納得だ。きっと彼女らは,セントレアに夕方到着する飛行機で旅行から帰ってきて,それからこの特急に乗っているのだろう。

関連: 空港線を爆走!名鉄の空港アクセス特急ミュースカイに乗る|中部国際空港【セントレア】散策その3

座席に座って,特別車特有の優越感に浸っていると,名古屋駅に到着する。名古屋駅では,金山駅と同じく大量の乗客が列をなして待っていた。特別車の前で待っている乗客のほとんどは,この特別車には乗らず,次やその次の列車の普通車に乗るようだ。金山から笠松までは30分ほどだが,ミューチケットを買えば,360円でゆったり座れる。コロナ禍において,こういう座席指定のサービスは受けがいいのではないだろうか。特に,通勤客と旅行・行楽での利用客が混在する名鉄のような路線では,重宝されると思う。

名鉄岐阜ゆき特急のミューチケット:車掌は,目視と手元の端末で乗客の着席を確認しているようだった。

名古屋を出ると,夜の名古屋本線を快走する。2200系は,「竜巻インバータ」と呼ばれる三菱製IGBT-VVVFインバータを制御素子として搭載しており,その独特な走行音は音鉄である私の耳を楽しませてくれる。とっぷり日は暮れてしまい,車窓は楽しめないが,走行音だけでも十分だ。

金山から笠松まで28分,途中,国府宮こうのみや一宮いちのみや新木曽川しんきそがわに停車した。特別車では,各駅で数名ずつ乗降があった。いずれの駅でも,前方の普通車からは大量の降車客が改札方面へ歩いてきていた。普通車は結構な混雑だったように推測される。

笠松駅には定刻21:18に到着。次は終点の岐阜駅だ。自分のように,あまり名鉄を利用しない者にとって,「笠松」と聞くと,少々地味な駅という印象を覚える。しかし,この駅は名古屋本線の特急が毎時4本発着する重要な駅だ。この夜も,後続の岐阜方面の普通電車が出た後すぐに,名古屋方面の特急が到着し,出発していった。JR駅がない分,この周辺の需要をきっちりと拾うべく,特急を停めているのだろう。

2200系のロゴ。金色でSeries 2200と描かれている。

笠松駅でのりかえ

さて,笠松駅から,新羽島方面の列車へのりかえる。

笠松駅は,ちょっと入り組んだ2面3線構造となっている。2・3番線が,名古屋本線が発着する対面式ホーム。そして,階段を挟んで1番線がある。竹鼻・新羽島方面の列車は,1番線から発着するようだ。

笠松駅のホーム。新羽島ゆきは1番線から出発する。

この写真の後ろ側に改札口があり,改札から入るとまずこの視点に立つことになる。また,特別車から降りたときも,この視点となる。この視点に立って,「1番線ってどこだ?」と,ほんの少しだけ迷った。ちょうど正面に階段があって,1番線が視界に入らないからだ。が,発車標の下側にぶら下げられている「竹鼻方面は左側①番線」の注意書きが目に入り,階段の左側を覗いてみると,たしかに1番線があった。

なお,階段の裏側は,ふつうの島式ホームとなっており,1・2番線の両方を乗り降りできるようになっている。特別車の乗客には少々のりかえづらい,笠松駅ホームの構造だった。

竹鼻線・羽島線|新羽島行き

1番線には,すでに新羽島行きの普通電車が入線していた。

笠松駅から羽島方面へは,毎時4本の普通電車が出ているようだ。ほとんどの電車が,この笠松駅始発となっている(早朝と深夜帯のみ,岐阜始発の電車もあるようだ)。

3150系 普通|新羽島ゆき

この普通電車には,3150系2両編成(3153F)が充てられていた。ステンレスの車体が特徴的なこの車両,「3300系」とも呼ばれている気がしたが・・・名鉄のHPによると,2M2Tの編成を「3300系」,1M1Tの編成を「3150系」と呼ぶそうだ。もう名古屋に住み始めて5年目になるが,未だに名鉄の通勤車の名称と顔が一致しない。そろそろしっかり覚えたいところだ。

参考: 車両詳細|車両一覧|名鉄ライブラリー|名古屋鉄道

車内には転換クロスシートがあり,通学・通勤客で占められていた。車両全体としては,座席の半数ほどが占められている。端部のロングシートが空いていたので,そこに座る。名鉄通勤車両の普通車の座席は,JRと比較すると硬い座り心地だ。

3153Fは,笠松駅を21:25に出発。

竹鼻線には廃止区間がある

竹鼻線は笠松から,羽島市へ向けて延びる路線だ。路線の終点は,現在では江吉良えぎら駅となっている。江吉良からは,岐阜羽島駅と隣接する新羽島駅までの羽島線が続いている。笠松より江吉良方面へ竹鼻線を走る列車は,そのほとんどが新羽島まで直通する。

竹鼻線路線図|ジョルダンより引用

江吉良ー新羽島間のみが「羽島線」と区別されているのは,

  1. 2001年までは,竹鼻線が江吉良から先まで伸びていた(江吉良ー大須おおす)
  2. 羽島線が竹鼻線より後に開業された(1982年)
  3. 羽島線が江吉良ー大須間廃止後も存続した

以上の経緯をふまえてのことだろう。竹鼻線のうち,江吉良より先の廃止区間は,全線が羽島市内を走る路線だったそうだ。おそらく住宅街の中を走る郊外線のような扱いだったと思われるが,その区間は廃止された。一方の羽島線は,わずか一駅区間のみながら,竹鼻線と一体となって運行されることで今まで順調に運行されてきている。

これは,(新幹線の中ではごく小さい駅ながらも)存在感のある東海道新幹線岐阜羽島駅と隣接する路線であることが関係しているのだろうか,また,岐阜羽島駅周辺が徐々に発展してきていることが理由なのだろうか。詳しいことはわからない。

郊外を順調に走行

3150系は,郊外の方へと順調に歩みを進める。そんなに飛ばさず,コツコツ走って短い駅間を進むさまは,地元伊予鉄道の郊外線と似ている。

参考: プラレールと伊予鉄道が鉄道好き大学院生の原点だった

車窓はほとんど楽しめないが,走行音は相変わらず満喫できる。せっかくなので,iPhoneで録音した走行音をどうぞ。

【名鉄】竹鼻線|南宿→須賀→不破一色3153F(3253)|iPhone SE2 ボイスメモにて収録,Online Auidio Converterにて変換(m4a→mp3)

途中,不破一色ふわいっしき駅にて,多くの下車があった。半分近くあった乗車率は,一気に20%程度まで低下した。

そのあと,高架線を走ったりしながら,江吉良駅から羽島線に入る。

羽島線終点・新羽島駅

新羽島駅到着前の車内放送では,「新幹線はお乗り換えです。」との案内があった。新羽島から岐阜羽島駅の新幹線に乗るような人なんて,そうそういないものだと思っていたが・・・新羽島駅は,名鉄にとって「新幹線の乗換駅」であるようだ。おそらく,羽島線開業の目的も,江吉良からほんの少し先にある岐阜羽島駅への接続にあっただろう。目的を十分果たせているかどうかは・・・微妙だが。

新羽島駅。駅ナンバリングは,竹鼻線と共通の「TH」,番号も連番となっている。

新羽島駅に到着。駅ホームに降り立つタイミングで,ちょうどN700系が岐阜羽島駅を通過していった。新羽島駅と岐阜羽島駅は,ほとんど同じ高さだ。N700系通過時の風圧で,新羽島駅ホームがゆさゆさと揺れたのを感じられた。

新羽島駅ホームから,東海道新幹線岐阜羽島駅のホームを望む。

「のりかえ駅」としているだけあって,当駅は岐阜羽島駅と隣接している。ただし向こう側は2面4線の立派な駅なのに対して,こちらの新羽島駅は1面1線の小駅だ。なお,新羽島駅には,現在の1線に加えてもう1線追加できるような空間も備えられているようだ。

将来的に1面2線とする構想があり、現在もホームの直下は何もない空間で、2線目の高架橋の建設を想定した構造が確認できる。また、現在線の江吉良方の高架橋には北方に少し開いた箇所があり、ここで2線目に分岐する予定となっている。

新羽島駅 – Wikipedia

ホームから改札までは,少々距離があった。改札を出ると,すぐに岐阜羽島駅前の大きなロータリへとつながる。新羽島駅は,岐阜羽島駅とは直接つながっていないが,ロータリの歩道を歩けばすぐに移動できそうだ。これなら「接続駅」といっても問題なさそうだ。

本当ならここから新幹線にでも乗ってどこかへでかけたいところなのだが・・・もう夜遅いので,今夜は岐阜羽島駅近くのホテルにて1泊する。翌朝から,久しぶりの鉄道旅に出かける予定だ。そのようすは,また別の記事にて紹介する。

次の記事 >> 岐阜羽島から1日1本だけの「広島ひかり」乗車記

まとめ: 「いつもと違う」出発地として

夜の岐阜羽島駅前ロータリー。利用客は少なく,閑散としていた。

以上,名古屋から名鉄をつかって岐阜羽島までアクセスした記録を紹介してきた。

新羽島駅までは,名鉄名古屋本線と竹鼻線を使って,電車のみでアクセスできた。新羽島駅は,決して利便性が高いとは言えないが,新幹線への「接続駅」としては機能しているようだった。名古屋在住の鉄道ファンであれば,「一風変わった」「いつもと違う」出発地を求めて,この竹鼻線を利用すると面白い旅ができそうだ。

接続先である,岐阜羽島駅における新幹線乗車ついては,次回記事にて紹介する。

岐阜羽島から1日1本だけの「広島ひかり」乗車記

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