
観光快速「リゾートしらかみ3号」に乗って,五能線をゆったりと旅してきた。
秋田から弘前までの5時間は,日本海の景色はもちろんのこと,能代の駅弁や,車内での津軽三味線演奏などのおかげで,飽きることなく満喫できた。
「リゾートしらかみ3号」くまげら編成
秋田駅に行くと,列車はすでにホームへ入線していた。秋田駅のいちばん端のホームで,昨日,男鹿線に乗ったのと同じホームだった。今回は,
快速リゾートしらかみ3号
(8623D,東能代~弘前間は8523D)
秋田10:50→弘前15:50
(全席指定・11月30日までの繁忙日のみ運転)

に乗車した。
リゾートしらかみの車輛には,ぜんぶで3つの種類がある。橅(ぶな)・青池・くまげらの3つだ。今回乗車したリゾートしらかみ3号には,「くまげら」が割り当てられていた。3つある編成のうちで唯一の国鉄型だ。
参考:のってたのしい列車 ポータル>リゾートしらかみ(橅/青池/くまげら):JR東日本


くまげら編成は,国鉄型車両を改造しているため,他の2編成(橅と青池)より古い。

とはいえ,観光快速に事足りるよう,必要なところはしっかり改造してあった。
具体的には,座席がリクライニングつきで,足元のスペースも相当広かった。脚を目一杯のばしてもなお,足先に余裕があるくらいの広さだった。そして,座席自体も通路より一段高くなっていた。いわゆるハイデッカー構造になっている。さらに,窓も通勤型より格段に大きい。
1号車と4号車には,運転席後ろに展望スペースが設けられていて,運転士と同じ高さから,前面展望を楽しむこともできた。あとで書いているように,座席からの景色もじゅうぶん素晴らしいのだけど,この展望スペースからの前面展望もまた,くまげら編成の隠れた楽しみだ。

このように,くまげら編成は,若干,冷房の効きが悪い1のと,展望スペース以外にこれといったスペースがないことをのぞけば,ゆっくり観光するには十分快適なくるまだった。
東能代から五能線へ
リゾートしらかみ3号は,秋田を出ると,東能代まで奥羽本線を走る。この日は快晴で,奥羽本線の車窓には,絶賛刈り入れ中の田んぼの風景が見られた。

東能代に着くと,列車はしばし小休止。ここで方向転換が行われる。車内の座席も,各自で向きを変える。


東能代からは,五能線へと入る。ここが五能線の起点駅。駅ホーム上には,「しらかみの響き」という鐘が設置されていて,誰でも鳴らすことができる。

列車の出発を待っているところに,奥羽本線の上り貨物列車がやってきた。コキの奏でるジョイント音があまりによかったので,思わず動画を撮ってしまった。
東能代を出発すると,すぐに能代駅に到着。私の座っている4号車は最後尾だったが,東能代で方向転換したので,先頭になった。

能代で弁当受取&物販
能代駅にて大休止。ここでは,事前に予約しておけば,弁当や飲み物などを受け取ることができる。乗車時間も長いし,外へ出て買いに行くほどの時間はなさそうなので,事前予約サービスを使うのが賢明かと思う。

今回は,のしろ牛弁当とホットコーヒーを予約しておいた。駅にて予約画面を見せると,スムーズに受け取ることができた。ホーム上では,記念品や特産品のグッズ売り場もあった。ちょうどコースターが欲しかったところなので,「五能線オリジナルコースター」を購入してみた。

進行方向左側から日本海の絶景を
さて,ここから五能線は,進行方向左手側に日本海を見ながら北上していく。のだが,あいにく座席を進行方向右側(山側)でとってしまっていた。
そこへ,能代駅の出発前に,車掌さんが,「座席に余裕があるから」と,座席を海側へと変更してくれた。この日,一部号車にはツアー客が団体予約をしていたものの,それ以外の号車は,かなり空いていた。これはありがたかった。おかげで,ここから数十キロ近くにわたってつづく日本海を,じっくり眺めることができるようになった。

もちろん,座席からのみならず,先頭ラウンジの前面展望からも,海の景色を楽しむ。

このラウンジには,先頭前向きだけでなく,左右側面の窓に向いた座席も設置されている。ハイライト区間では,この席に腰掛けて,奇岩群を眺めることができる。

日本海だけでなく,山の景色も忘れず見たい。のしろ牛弁当を食べながら,放送の案内にしたがって後ろをみると,ちょうど白神山地が見えた。

東能代から鰺ヶ沢まで乗務された車掌さんは,このように,要所要所で丁寧な案内放送をしてくれた。それだけではなく,五能線の歴史や沿線自治体の紹介もしてくれていた。もちろん,運行上の基本放送も欠かさない。運転士も,見どころでは徐行してくれる。観光快速だけあって,乗務員の質も高い。

途中駅である深浦にて,上り普通列車と行き違い。運転士はここで交代。周辺は相当田舎のようだが,五能線の主要駅の1つ。
深浦を出ても,左側の車窓はまだまだ絶景。日本海ギリギリを見下ろすようにして走ると,自然そのままの地形を車内からしっかり見られる。

千畳敷駅で散策タイム
千畳敷駅では,15分ほど停車。ここでは,列車を降りて,千畳敷を散策することができる。青空の下,潮風がちょうどいい。湿度も低く,歩いているだけで気持ちいい。

五能線は本数が少ない。ついうっかり乗り遅れると大変だが,出発の数分前に,列車が汽笛を鳴らしてくれる。おかげで,安心して景色を楽しめた。

岩木山の絶景を津軽三味線とともに
鰺ヶ沢からは,日本海と別れ,内陸へと入っていく。右手に岩木山が見え始める。

そして鰺ヶ沢から五所川原までは,津軽三味線の実演が,車内のラウンジにて行われる。車窓・車内の雰囲気に退屈し始めないよう,絶妙なタイミングである。岩木山を眺めながら,三味線の音色を間近で聴く。三味線なんて,と思っていたが,鳥肌が立つくらい,心身にしみるものだった。特に,「じょんがら節」がよかった。
弾き手曰く,津軽三味線は,他人と同じ曲でなく,オリジナルのものを弾かないといけない。他人真似をすると,猿だ鶏だといわれるのだそう。あとでホテルにて調べたところによると,この精神は,津軽三味線の祖にあたる人物の信念なんだとか。この精神は,三味線に限らず,創造性を要求されるものすべてにおいて欠かすことのできないもの。大事にしたい。
三味線の演奏に感激し,心一杯になったところで,ちょうど列車は五所川原駅に到着。到着前には,左側に津軽鉄道のホームや車両が見えた。「ストーブ列車」で有名だ。

五所川原駅では,これから五能線を上っていく「リゾートしらかみ4号」と交換した。

五所川原を出ると,弘前にむけてラストスパート。五能線の旅もあと少しだ。

車窓からは,りんごの木が多くみられるようになる。以前,特急「つがる」で奥羽本線を北上したときも,りんごの木をみて青森に来たなあと,同じようなことを思った記憶がある。
【日本海縦貫】いなほ1号とつがる3号を乗り継いで青森へ|在来線で北海道をめざす旅④

五所川原から川部の区間では,岩木山がかなり綺麗に見えるようになった。富士山のような綺麗な山体をしていると思ってネットで調べてみると,やはり「津軽富士」の通称が付されているらしかった。

川部から弘前へ
長かった五能線は,川部駅で終点。リゾートしらかみ3号は,ふたたび方向転換して,終点の弘前まで走る。

川部からは,奥羽本線を走って,終点の弘前に到着。5時間の旅は,車窓とダイヤ(イベント)の工夫のおかげで,最初から最後まで面白かった。


弘前からは,奥羽本線の下り普通列車(665M:弘前16:15→青森17:04)へのりかえて,終点の青森まで向かった。

おわりに:のってたのしい観光快速
五能線は,多くの区間で,日本海のすぐ内陸を走る。その沿線の環境は,ほとんどが「よくこんなところに線路を敷いたな」という,過酷なものばかりだった。海沿い以外であっても,窓や車体に草や木がぶつかってくるような路線である。
このためか,沿線では,保線作業員が「リゾートしらかみ」の通過待ちをしているのを何度か見かけた。夏は草刈りに枝の剪定,冬は豪雪。「リゾートしらかみ」が走るのは11月30日までだけど,そうであっても,こんな路線に,1日3往復も観光列車を走らせ,おまけに座席料金(840円)だけで乗せてくれるなんて,本当にありがたいことだ。
時刻表でたまたま見つけて,スケジュールもあったから乗ったけど,まさかこんなにいい列車・いい旅ができるとは,思っても見なかった。冬場の運転はないらしいけど,ぜひまた乗りに行きたい。

(つづく)
- 夏でも比較的涼しい東北地方のみ走行することを想定しているため,こればかりは仕方ない。 ↩︎
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