315系デビューで気になる国鉄型・特急型車両の今後

今日は3月13日。

3・13といえば,JR東海電化区間の主力車両「313系」を思い出すのは,東海圏に住む鉄道マニアの性でしょうか。そんな313系の後継車両である「315系」が,去る2022年3月5日にデビューしましたね。

本年度は主に,中央(西)線:中津川ー名古屋間へ投入されるということで,沿線の利用客にとっては,快適に移動できるようになって,嬉しい限りではないでしょうか。私自身もたまに利用するので,最新型車両の登場にはわくわくします。

一方で,JR東海在来線車両について気になるのは,315系によって置き換えられる車両たちのこと。直近では,中央西線の211系,東海道線の311系,いわゆる国鉄型車両,そして今後はキハ85系,さらには383系などの特急型車両についても,置き換えの話が出てくると思われます。

本記事では,315系や国鉄型車両,さらには置き換えが予定される特急型車両をはじめとした,JR東海在来線車両についての現状と,それに対して思うところを書いていきます。

315系のデビューと国鉄型車両の淘汰

マニアにとって気になるのは国鉄型の方かと思いますが,まずは嬉しい話題の方から書いていきます。

315系デビューしましたね

315系,これまで試運転が重ねられてきたようですが,いよいよデビューしましたね。

【プレスリリース】

在来線通勤型電車315系
在来線通勤型電車315系 JR東海の主な駅情報・列車情報、きっぷ、運賃・乗換、時刻表、路線図などをご案内しています。| JR東海

毎日多くの人に利用していただく車両だからこそ、
誰もが優しさや安心を感じることのできる移動空間をご提供したい。
そんな思いから生まれたのが、在来線通勤型電車315系です。

バリアフリー設備をはじめ車内防犯カメラの新設、開放感あふれるインテリアなど
乗車中の快適性や安全性を追求した車内空間を実現。
さらには、非常走行用蓄電池や車両・地上間のデータ通信など安全性を重視した機能や、
電力変換装置に高効率素子の採用など、環境に配慮した先進技術も導入しています。

在来線通勤型電車315系|JR東海

コーポレートカラーとボディの無塗装は相変わらず,前面デザインもそこまで斬新なものではありませんでしたが,車内の機能は相当進化し,近代的なものになっているようです。車内空間も,プレスリリースや各所の動画など見る限り,いい意味で都会的になっている気がします。

乗り鉄的には,313系のような転換クロスではなく,ロングシートだったのは残念でしたが…通勤需要の高い中央本線,さらには東海道本線静岡地区への投入を考えると,ロングシートの導入が妥当だったのでしょう。

音鉄的な観点からは,電力変換装置としてハイブリッドSiC適用のVVVFが搭載されたのが興味深かったですね。JR東海の在来線車両へのハイブリッドSiC-VVVF適用は初めてでしょう。これによって,211系(抵抗制御)比で35%の消費電力低減が達成されているようです [2]。

まだ「生音」は聴けていませんが,YouTube上で動画を拝見すると,なかなかイイ音です…早く現地で聴いてみたい。

総合的にみて,長らく主力として活躍してきた313系の後継車両としては,十分な実力をもった車両だと感じました。

まずは中央本線への8両固定編成での投入ということで,これまで211+313や313,211単独編成で両数もバラバラだった中央本線の光景は大きく様変わりしそうです。

そんな315系,今後は,2025年度までに352両が新製され,中央本線のみならず,東海道本線静岡地区・関西本線(特に211系が運用に就いている区間)等への投入が予定されているようです [2]。これによって211系は順次置き換えられ,また,中央本線で余剰となる313系などの転属にともなって,311系も順次引退となるようです。

新製車両は352両(!)ということで,すべて8両固定編成とすると,352/8=44編成が製造される計算となります。後述のように,同社が保有する国鉄型(211・311・213)をすべて合わせても338両 [2]なので,315系のみで,これらの編成を余裕で置き換えられることとなります。JR東海在来線の風景が,2025年頃を境として,ガラッと変わることは間違いなさそうです。

211系・311系の引退

211系K17編成(名古屋駅)

このように,315系のデビュー・量産車投入にともない,211系・311系は順次引退となります。

まず,211系には,2022年3月時点で

  1. 国鉄から引き継いだ0番台(8両)
  2. 現在主力の5000番台(250両)

が所属していましたが,315系のデビューと同時に,211系0番台は引退し,廃車回送されました。これによって,同社保有の純・国鉄型車両はすべて,自社製造の車両に置き換えられたことになります。

5000番台も,中央本線の車両は2023年度中にすべて置き換えられるようです [2]。

他線で活躍する211系5000番台や,311系(60両),これに加えて213系(28両,主に飯田線で活躍)も,2025年度までに投入される315系によって,すべて置き換えられるようです。

211系5000番台は,中央本線・関西本線・東海道本線静岡地区,311系は東海道本線名古屋地区,213系は飯田線で,それぞれ活躍しています。これらが置き換えるということなので,中央本線のみならず,関西線・東海道線・飯田線でも,2025年度までに315系が走り始めるということになります。

中央西線を走行する211系(大曽根ー新守山間)

315系の投入が予定通り完了すれば,2025年度までに,JR東海が保有する国鉄「型」通勤電車(までもが,すべて自社設計・製造の車両に置き換えられることになります。JR他社では,これほどの勢いでは国鉄型を淘汰できていません。比較的コンパクトな路線網をもつJR東海だからこそ達成できたのだと考えています。

関連記事:中央西線の堀割線区間をゆくEF64重連と313系・211系

313系はまだまだ健在か

以上のように,JR東海の在来線電車は様変わりしますが,313系電車(539両)[1998-2014年製造] については置き換えの話は,今のところありません。315系が登場しても,しばらくは据え置かれ,引き続き活躍する模様です。

ちなみに313系の保有両数は,2021年11月時点で539両(!!)。大量投入される315系を,なお187両上回ります。同車両は,高性能を誇る「標準車両」として,15年以上にわたって製造されてきました。もっとも新しい車両は,2014年製造ですから,まだまだ健在でしょう。置き換えがあるとすれば,初期に製造された0番台あたりからと考えられます。

以上のことから,2025年度には,313系・315系がJR東海在来線(電化区間)の2本柱として活躍していることでしょう。

関連記事:全部同じに見える?JR東海313系の形式について勉強してみた【東海道本線】

※8000番台は,中央西線名古屋口から撤退するようです。順次,静岡方面へと回送されていたようなので,今後は静岡地区での活躍が期待されます。211系の引退にともない,神領車両区所属の313系についても,同様に配置転換がなされるかもしれません。

313系8000番台が名古屋地区での定期運用を終了|鉄道ニュース|2022年3月13日掲載|鉄道ファン・railf.jp
JR東海では,2022(令和4)年3月12日(土)のダイヤ改正により,3月11日(金)をもって313系8000番台の中央西線(名古屋&md
中央西線を走行する313系8000番台(千種-大曽根間)

JR東海 特急型車両の置き換え

以上は通勤型電車の話ですが,JR東海には,特急型車両にも置き換えの予定がありますね。こちらにも少しだけ言及しておきます。

キハ85系→HC85系

まず,高山本線「ひだ」および紀勢本線「南紀」として活躍するキハ85系 [1988-1997年製造]は,2022ー2023年度にかけて,「HC85系」によって置き換えられます。

HC85系は,ハイブリッド型の特急車両で,エンジンで発電した電力によって電動機を回して走行する形式です。ハイブリッド方式の導入によって,燃費の向上や環境負荷の低減が図られています。同期間において量産車64両+試験車4両の量産化によって,合計68両が投入されるようです[3]。

HC85系は,これまで,約1年間に亘る試験走行が行われてきました。そのようすは,YouTube上で拝見しました。音鉄的には,気動車→ハイブリッド化はすなわち静音化を意味するところなので,若干残念ではありましたが,モータとエンジンとが合わさった独特の走行音は,気動車とはまた別の楽しみ方ができそうで,これはこれでよかったですね。

HC85系の車内は,他社特急車両と同様,近代的で明るいデザインになっているようです。JR初期の雰囲気が残るキハ85系の車内は,正直陳腐化が進んでいたので,HC85系の投入は,一般の利用客にとっては歓迎されることでしょう。

関連記事:名古屋近郊,木曽川駅の撮り鉄スポットで東海道本線撮影【七夕ひとり鉄道撮影会②】

383系→??

上記のように,キハ85系は順次置き換えられることとなりました。

これによって,気になるのが,同じく特急型車両である383系電車の動向です。いまのところ,JR東海から,383系および後継車両開発についての公式な発表はありません。

中央西線での活躍が続く383系特急型電車(長野駅)

しかし,キハ85系の製造期間は,1988年から1997年である一方,383系の製造期間は1994年から1996年。製造開始期間の差が6年であることを考えると,今後数年で383系についてなにか話が出てきてもおかしくないのでは?と考えています。

逆に,383系置き換えの話が出ないのであれば,「383系引退&中央西線特急『しなの』消滅」なんて話が出てくるかもしれません(この可能性はかなり低いでしょうが…ネット上には,そういう意見を見かけないわけではありません)。

383系は振り子車両で,線形の悪い中央西線の高速化に貢献してきています。しかし,中央西線の利用状況自体が芳しくないのであれば,わざわざ整備コストのかかる振り子特急を走らせる意義はなくなります。

個人的に,383系は好きな車両なので,これからも走り続けて欲しいですが,いずれ置き換えなり引退なりの話は出てくると思います。そのときまでに是非,新型車両の計画あるいはプレスリリースが出てきてほしいものです。風光明媚な中央西線の風景を,特急車両から楽しみ続けられることを,ささやかながら願っています。

関連記事:【JR東海】特急型車両の貫通型先頭車の顔が好きだ

まとめ:去る者は追わず来るものは拒まず

以上,2022年3月に投入された315系の話を起点として,JR東海在来線車両の置き換えと今後について書いてきました。

今後もこうやって,10-20年スパンで,新しい車両の投入と旧型車両の引退があると思いますが,鉄道マニアとしては「去る者は追わず来るものは拒まず」の姿勢で,新入りは歓迎しつつ,引退する車両たちはささやかながら労ってあげたいですね。

JR東海の各型式について,また何か動きがあれば,ブログにて紹介していこうと思います。

それでは。

参考にした資料

[1] 在来線通勤型電車「315系」|JR東海HP (Access: 2022/3/13)

[2] 在来線通勤型電車「315系」運転開始について|東海旅客鉄道株式会社(2021年11月17日)

[3] ハイブリッド方式の次期特急車両「HC85系」量産車の新製について|東海旅客鉄道株式会社(2021年1月20日)

関連記事①:「しなの」グリーン乗車記

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関連記事②:名古屋駅撮影記

大都会・名古屋駅に入線する211系の姿も,徐々に見られなくなっていくものと思われます。記録はお早めに!

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