JRや私鉄各線を走る列車には,定期列車・臨時列車を問わず,すべての列車に「列車番号」が割り当てられている.
列車番号割り当てには細かいルールがあるが,今回はトップナンバーである「1M・1D」という番号が当てられている列車(JR線)にフォーカスしてみた.
各路線の看板特急が背負っている場合が大半だが,中にはちょっと意外な列車にトップナンバーが与えられていることも・・・?
(※当記事記載の列車名・列車番号は2020年改正前のものです)
それでは,時刻表片手に行ってみよう.
「1M」列車
まずは1M列車から.
時刻表を開く前に自分で予想してみた.列車番号の細かいルールについてはまったくの素人なので,とりあえず速そうな特急列車,そして各会社の主力電車特急に割り当てられているだろうから,以下の特急なんかが該当するのでは,と予想した.
- あずさ1号
- サンダーバード1号
- しおかぜ1号
さあ,正解を探しに時刻表を開いてみよう.
「1M」列車は4つ
コンパス時刻表をパラパラとめくり続け,発見した1M列車は以下の4つ.
- 「しらさぎ1号」名古屋→金沢
- 「あずさ1号」新宿→松本
- 「ひたち1号」品川→いわき
- 「しおかぜ1号」岡山→松山
事前の予想と外れたのは,しらさぎとひたち.
あずさとしおかぜは順当.有無を言わせぬJR東日本・JR四国の看板特急.
しらさぎとサンダーバード?
「しらさぎ」については,ちょっと意外だった.事前に予想していた通り,北陸系統の特急は「サンダーバード」のほうに1Mが与えられていると思ったからだ.
「しらさぎ」と「サンダーバード」は,それぞれ以下のような使命を背負って運転される特急列車.
- しらさぎ:中京圏対北陸優等列車
- サンダーバード:京阪神対北陸優等列車
「しらさぎ」は東海道から米原を経由して金沢(かつては富山)まで,ずっと本線を走る.
また,現在の区間・系統での運行開始は1964年(出典:Wikipedia).
対する「サンダーバード」は,途中湖西線を経由する.
また,現在の区間・系統での運行開始は1995年(当初は”スーパー雷鳥”として運行開始,出典:Wikipedia).ただし,”スーパー雷鳥”の前身である「雷鳥」は1964年から運行されている.
運行開始については,雷鳥としらさぎは同時期であり,兄弟列車のような関係であると考えられる.一方,走行路線については「しらさぎ」が全線にわたって本線,「サンダーバード」が途中短絡線(湖西線 ≠ 本線)を経由することになっている.
これらのことから,「しらさぎ」にトップナンバーを振っているのだと推測される.
また,後述するように,JR西は「はまかぜ」という1D列車を抱えている.「はまかぜ」も「サンダーバード」も大阪駅に乗り入れる.これも「サンダーバード」にトップナンバーを与えられない理由として考えられる.
あずさとひたち
JR東日本の看板特急といえば「あずさ」.
首都圏対山梨・長野地区の輸送を担う特急列車で,「最新車両のE353系・全車指定席・最速達」というトップナンバーにふさわしい運行形態.自分はまだ乗ったことがないので,今すぐにでも乗りに行きたい特急列車のひとつ.
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また,JR東日本にはもうひとつ「ひたち」という1M列車がある.「ひたち」は常磐線の速達タイプの特急列車で,同じ路線を走る停車タイプに「ときわ」という列車もある.2020年の改正で仙台までの運行が復活した今話題の特急列車.
常磐線は「本線」という名前がつかない.東海地方に住んでいてなじみが薄い自分にとっては「影が薄い」とも思えてしまう路線だが・・・
実際はたくさんの列車が走る重要な路線.
「影が薄い」なんて失礼,トップナンバーにふさわしい特急列車だ.
同じ会社の中で2つも「1M」列車を持っていていいのかな?と思ったけど,常磐線と中央線は系統が全く異なるので,運行上同じ番号にしても支障はないのだろう.
四国の看板特急「しおかぜ」
JR四国を走る看板特急といえば「しおかぜ」.
岡山から瀬戸大橋を渡って,予讃線を松山まで走る特急列車.自分も長らくお世話になっている特急列車だ.四国で最も人口の多い松山と,中国地方のターミナル駅・岡山を結ぶ特急列車,トップナンバーを与えられるにふさわしい列車だと思う.
宇多津=松山間は,予讃線内完結(高松⇔松山)の「いしづち」と併結して運転される.
「しおかぜ」には「号数M」が,「いしづち」には「1000+号数M」の番号が割り当てられている.
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8000系の登場までは気動車での運転だったが,8000系の増備,および8600系による2000系気動車の置き換えによって全列車が電車での運転となった.
気動車時代は宇和島までの直通「しおかぜ」もあったが,電車統一により,松山で完全に系統が分離された.松山=宇和島間の輸送は気動車特急「宇和海」が担っている.
「1D」列車
「1M」列車の次は,「1D」列車.
気動車特急は,電車特急に比べて数が少ない.その中で「1D」が与えられる列車ってどんなのがあるだろうか?事前の予想はこの列車.
正直,トップナンバーを与えられそうな気動車特急は北斗くらいしか思いつかなかった.では,実際はどうだろうか?再び時刻表を開き,今度は「1D」をくまなく探す.
「1D」列車は2つ
「1D」を背負う列車は2つ見つかった.
- 「スーパー北斗1号」函館→札幌
- 「はまかぜ1号」大阪→浜坂
「北斗」については,予想通りだったが,「はまかぜ」は意外だった.
意外というより,そもそも「眼中になかった」という表現のほうが相応しい.
JR北の看板特急「北斗」
北斗は,JR北海道の玄関口である函館駅から,道都・札幌を結ぶ特急列車.
北海道には列車番号末尾にDがつく気動車特急が多い.北斗,とかち,おおぞら,大雪,オホーツク,サロベツ,宗谷と,多くの特急が走っているが,その中でも北斗がトップナンバーをもらっている.
北海道の玄関口から札幌へと乗客を運ぶ特急で,道内気動車特急列車の中では最も本数が多い.それゆえ,トップナンバーが与えられるにふさわしい列車だといえる.
ただ,北海道新幹線が札幌まで延伸開業すると,北斗が担う区間は3セクに分離されることが予想される.そうなった場合,1Dの番号はどうなるのだろうか・・・?気になるところだ.
京阪神対山陰?「はまかぜ」
「1M」「1D」列車を調べていく中で,もっとも意外だったのが「はまかぜ」だ.
自分が京阪神・山陰地区の特急列車について疎いということもあるのかもしれないが・・・それにしても意外だ.
はまかぜが担うのは,大阪と北近畿・山陰エリアの輸送.播但線を走る唯一の定期特急列車であり,非電化区間を走るため,気動車で運転されている.
より詳しく書くと,
- 大阪→姫路:JR神戸線(東海道・山陽本線)
- 姫路→和田山:播但線
- 和田山→浜坂:山陰本線
こんな具合.
はまかぜの運行本数は多くなく,下り列車は1日3本.各列車行き先が異なる.(浜坂,香住,鳥取).本数が少ない,行き先もまちまちなはまかぜが,なぜトップナンバーを背負っているのか?
***
京阪神対北近畿・山陰を結ぶ特急列車はたくさん走っている.まず,
- こうのとり(新大阪~福知山・豊岡・城崎温泉)
- はしだて(京都~天橋立)
- きのさき(新大阪~福知山・城崎温泉)
などが挙げられる.
ただし,これらの列車はいずれも電化区間を走る電車特急で,1Dは与えられない.
では,もうちょっと視野を広げて,山陰地方全般を見てみると,多くの気動車特急が走っている.
- スーパーはくと(京都・大阪~鳥取・倉吉)
- スーパーまつかぜ(鳥取~米子・益田)
- スーパーおき(鳥取・米子~新山口)
- スーパーいなば(岡山~鳥取)
スーパーはくとは智頭急行を経由するので例外として,スーパーまつかぜ・おき・いなばあたりはどうだろうか?・・・という風に考えてみると,これらの特急は,はまかぜに比べると一段格下の特急とみられなくもない.
はまかぜは,ほかの会社の特急列車と比較すると,本数が少ないしローカル線を走る列車.しかし,「同じ会社内の他の気動車」という枠の中で見ると,まあトップナンバーを与えられてもいいかな,と思えてくる.はまかぜは大阪発着でもある,大都市対地方輸送という大きな使命を,少ない本数ながら背負っているのだ.
まとめ:時刻表は面白い
以上,トップナンバーが与えられている列車についてまとめてみた.
列車番号は結局のところ,運行の便宜上必要なため,各会社がつけているにすぎない.
したがって,この記事で書いているようなことは全然考えていないかもしれない.多分そうだろう.
でも,こうやって時刻表をめくりながらあれこれ思索をするのは,鉄道ファンの勝手だ.そしてそれは,予想以上に面白いものだ.
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今度は列車番号についてもいろいろ調べてみようと思う.
コロナで外に出られないのはつらい.
そんなご時世,時刻表でも買って,パラパラとめくってみると面白い.時刻表が織りなす数字と地図の世界に没頭して,頭の中で妄想を膨らませてみては・・・?
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