僕の中では、もう憧れというか雲の上の存在だった寝台列車。
ここ数年で一気に廃止された寝台列車は、現在「サンライズ瀬戸・出雲」が唯一の定期列車となってしまった。
だから、寝台列車への憧れは大学入学後さらに大きくなっていた。
春休み、暇ができた。大学生の休みは長い。
寝台列車に乗るなら今しかない!ということで
「寝台特急サンライズ出雲」に乗ることにした!
「ノビノビ座席」という最も安い(雑魚寝スタイル)寝台ではあったけれど、
「列車の中で一晩過ごす」体験は、もうそれだけで素晴らしいものだった。座席のグレードなんて関係ない!
夜の東海道線、早朝の山陽線、窓の外を次々と通過していくターミナル駅。
薄暗い車内に響くモーターの音、ジョイント音。
大学生ひとり旅、ノビノビ座席乗車の記録。
寝台列車で過ごす夜~東海道線を快走!
横浜までは午前中のうちに,のぞみ222号で移動してきた.
新幹線からの富士山!のぞみ222号自由席で名古屋から新横浜へ
横浜から、いよいよ「憧れの」サンライズ出雲に乗車する。
待ちに待った瞬間・・・!
横浜観光の疲れも吹き飛ぶ、入線の瞬間から
ノビノビ座席で過ごす、夜の東海道線の記録!
サンライズ号、貫禄の入線@横浜駅
サンライズ瀬戸・出雲号は
横浜駅22時24分発。
22時過ぎに観光を終えて横浜駅に戻ってきた僕は、コンコースにあるNewDaysで今晩の飲み物と明日の朝食を買っておく。
晩酌もありかな・・・?と思ったが、この日は既にちょっと飲んでいたし
ノビノビ座席だから、揺れで酔う可能性もなくはない。だから今回は晩酌は無し!
純粋に(?)列車の旅を楽しむことにした。
横浜駅6番線へ。
東海道線下り列車が発着する6番線には
先発の普通列車熱海行きが入線してくるところだった。
いつもお世話になっているE231系も、今日は一段と格好良く見える。
これから入線するサンライズ号を引き立てる「名脇役」のようだ。
熱海行きが出発すると、ホームは静まる。
朝夕、日中は人でごった返す横浜駅ホームも
このくらい遅い時間になると、だいぶ人が少なくなり静かだ。
やがて6番線にサンライズ号の案内放送が流れはじめた。
いよいよだ・・・期待が高まる。
指定した座席は「12号車1A席」
ホーム上にあるサンライズ号専用の案内マークの上で待つ。
東京側から二つのライトが見えてきた・・・
サンライズ瀬戸・出雲号JR西日本285系のお出ましである。
旅情溢れる、駅員さんの味のある放送に注目。
憧れの幕!
噛みしめるようにホームからサンライズへ乗り込む。
意外と静かな「ノビノビ座席」
車内へ入るとすぐに出発。
とりあえず自分の座席へ向かった。
サンライズ瀬戸・出雲号には「寝台」と「指定席」があって、
「ノビノビ座席」と呼ばれる雑魚寝の席が「指定席」である。
瀬戸・出雲にそれぞれ1両連結されていて、出雲号は12号車が「ノビノビ座席」。
今回予約した1番A席は、2段ベッド形式になっている「ノビノビ座席」の1階。
そして車端部の座席だった。
細長い一人分が横になれるくらいのスペースに、自分の荷物を置く。
ノビノビ座席、意外と静かだ・・・
客層にもよるだろうけど、ノビノビ座席はもっとガヤガヤした雰囲気なのかと思っていた。
でも今回は、車内はかなり静かである。
モーター音とジョイント音、そして若干の話し声だけが聞こえるのみ。
これは快適だ!
高ぶった気持ちを落ち着かせながら、荷物を広げてくつろぐ用意をする。
秘密基地のような車内
着替えの準備、貴重品の管理を済ませたらサンライズの車内を探検。
若番の号車の方へ行ってみる。12号車以外はすべて寝台車。
両側に、しかもダブルデッカーで
個室がずらっと並んでいる様子は圧巻。。。
大人ひとりがやっと通れるくらいの通路は、まるで秘密基地のよう。
窓からは都市圏の駅が見える。
普段なら通過するはずのない主要駅をドンドンと通過していく・・・寝台特急の醍醐味!
ところどころ開いている個室があったから,中を覗いてみると
部屋によって狭い広いはあるものの、プライベートはしっかり確保されている。
シャワーカードは売り切れ
サンライズ号にはシャワー設備が備わっていて、車内で販売されている「シャワーカード」を購入すれば6分間利用できる。
3号車(瀬戸)・10号車(出雲)にシャワーカード販売機があるのだが、この日は10号車のは故障・3号車は売り切れ。
東京を出た時点で、売り切れてしまったみたいだ。
横浜から乗ると、閑散期でなければシャワーカードを手に入れることは難しいのかもしれない。
まあ予想はしてたし、1日くらいシャワー無しでも大丈夫だろう。
窓辺からの夜景を眺めながらくつろぐ
ノビノビ座席12号車へ戻り、くつろぐ。
さて、ノビノビ座席の設備も簡単に紹介しておく。
座席は先ほど紹介したような細長い、大人一人分が縦に寝られるくらいの幅になっている。
- 毛布
- 枕カバーのような布
- 紙コップ
- 読書灯
- 間接照明
- カーテン(通路側)
- 頭部分の仕切り
- ヒーター(常時ON)
- 空調(ONOFF可能)
設備はこんな感じ。
サンライズ「ノビノビ座席」で眠るための工夫
一晩眠るには十分の設備だと思うが
枕はノビノビ座席にはついていない。
サンライズ常連客はザックや上着を枕にするのだろうが、僕は秘密兵器「コンパクトエアピロー」をザックに忍ばせておいた。
(先日、自転車ブログとして超有名な「つむりの悠々自適ライフ」にて紹介されていたウルトラライトアイテム)
Sea to Summitのエアピローである。
このコンパクトさにして、膨らませるのは超簡単。
4回ぐらい息を入れればすぐにパンパンになる。
こんなに便利なものが世の中にあるなんて・・・!
あとはモンベルあたりの「エアマット」があれば、もう完璧な睡眠空間が整うが
生憎エアマットは持ち合わせていない・・・
サンライズ「ノビノビ座席」のカーペットは結構固い。
眠れないことはないが、熟睡するには固すぎる感じがした。
僕が施した工夫は「毛布をカーペットに敷いて、上着を掛け布団代わりに眠る」
そう、これは人気鉄道系YouTuberスーツさんが、サンライズの動画で紹介していた方法である。
「エアピロー+上着+毛布」
これでノビノビ座席での睡眠体制がバッチリ整った!
夜の東海道線を疾走!
ライトを落として、読書灯だけに。
窓辺から夜景を眺める・・・
東海道線はロングレールが使われているのだろう、「ゴトンゴトン・・・」というジョイント音は意外なほど少ない。
滑るように走るサンライズ号からの夜景は、なんとも不思議な感じ。
いつもならここら辺で海が見えるんだろうな、というところも暗闇を通してみるとぼんやりとしかわからない。
街路灯に照らされた、国道を走る大型トラック。
灯りだけがぽつぽつと灯る、海辺の住宅街。
1階席だから、普通列車や新幹線とはアングルも違う。
「これが寝台特急か・・・!」
今まで体験したことのない、旅情溢れる車窓に感動。
「モハネ」のモーター音を聞きながら就寝・・・
サンライズが停車するのは
熱海、沼津、新富士、静岡、そして浜松。
熱海駅のホーム上はほとんど人がいなかった。
新富士駅に着いた頃、ちょっと眠くなってきた。
周りを片付け、貴重品を頭の方に置く。
ザックを足下に立てかけて、ゴロンと横になる。
新富士を出発した、ゴトンゴトンと小刻みに揺れるけど眠れないほどの揺れではない。
むしろ心地良いくらいだ。
静岡駅に着いた頃には日付が変わっている。しっかりとは確認していないが、定刻通りなら0:20。
静岡県内での乗車はあるのだろうか・・・と思っていたが静岡駅から、空いていた隣のノビノビ座席に乗客が乗ってきた。
常連客だろうか、ものすごいスピードで寝る支度を済ませたようだ。
僕もそろそろ眠りにつく。
車端部だから、「モハネ」のVVVFが結構響いてくる。ジョイントの振動も定期的にある。
鉄道好き(音が好き)な僕にとっては、この音が心地良いBGMになる。
12時過ぎに眠り、1時と2時にちょっと目が覚めたが
そのあとは特に起きることもなく眠りについた。
おやすみなさい。
朝の伯備線・山陰線~旅の終わり
サンライズ号は東海道線・山陽線を夜通し走りきり、翌朝は姫路駅から停車し始める。
姫路、岡山と停車し岡山から伯備線へ。
岡山駅で目覚める
昨晩眠りに落ちた後、次に目が覚めたのは岡山駅到着時。
姫路にも停まったはずだが、一切気づかなかったようだ・・・!
岡山駅では「サンライズ瀬戸高松行き」「サンライズ出雲出雲市行き」が分割される。
駅のホームではその様子を見ることができるが、寝間着(ジャージ)だし靴を履いて外に出るのも面倒だったのでそのまま車内でぼんやりしていた。
昨日の酒が残っているのか、微妙に気持ち悪い・・・
寝ぼけ眼のままホームを眺める。
向こうに115系の普通列車がやってきた。115系を見ると「ああ山陽本線にいるんだな」と実感する。
構内放送によると、もう「サンライズ瀬戸」は瀬戸大橋方面へ出発したようだ。
「サンライズ出雲」出発の旨が繰り返し放送されている。
岡山駅出発~倉敷の様子は動画に収めてあるので、併せてご覧ください!(眠かったので写真はない・・・)
倉敷に着いた後、まだ眠かったから二度寝した。
出雲市駅到着は10時前、まだまだもう一眠りできる。
揺れる伯備線で起床
岡山駅で二度寝してから、かすかに「備中高梁」「新見」あたりの到着放送が聞こえた気がするが
ちゃんと起きたのは米子に着く前あたりだった。
車窓からは晴れ渡った中国山地の景色が目に飛び込んでくる!
良い天気だ・・・夜の車窓も良いけど
寝間着で眺める朝の車窓も風情があってすばらしい。
電車で横になって車窓を眺めるって普通列車ではありえない。
寝台列車に乗った人だけの特権。
それにしても、伯備線はカーブが多い。
二日酔いなのか、このカーブのせいなのかわからないが
珍しく電車酔いになりかけた。。。
(水を飲んで車窓を眺めていると回復した)
伯備線特急「ゆったりやくも」が「ぐったりはくも」と揶揄される理由は、この線形の悪さにあるのかも?しれない・・・
体調が戻ってから着替えて、昨日NewDaysで買ったサンドイッチとおにぎりを食べる。
列車は米子駅に停車中。
12号車のドアから、JR西日本の制服を着た若い乗務員がぞろぞろ7名くらい乗ってくる。
研修だろうか?出発後に車内を7名で巡回していた。朝の寝ぼけた醜態を大勢の乗務員に見られるのは、ちょっと恥ずかしかった。
雨の山陰本線
米子の2つ手前、「伯耆(ほうき)大山」から山陰線に入っている。
米子ではまだ朝日が差し込む良い天気だったが、松江あたりまで来て宍道湖が見え始めたときには
車窓はすっかり「冬の山陰」だった。
宍道湖はこの空である・・・!
小雨がシトシトと降っている。今日は出雲で観光する予定、午後までにやむ予報だが果たして大丈夫だろうか?
朝ごはんを食べ終わり、そろそろ身支度と片付けをはじめる。
10号車に設置される洗面所で顔を洗い歯を磨く。
ザックに荷物を詰め込んで、ゴミをデッキのゴミ箱へ。
列車は宍道に到着。車掌さんが寒そうに窓の外を確認し、出発ブザーを押している。
次が終点の出雲市駅だ。
12号車ノビノビ座席にはまだほとんどの乗客が乗っている。
みんな出雲市駅まで行くようだ。
すっかり片付いた1A席で車窓を眺める。
22時24分に横浜駅を出発したから、乗車時間は12時間近くだったが
出雲市まであっという間だった気がする・・・!
余韻に浸りながら出雲市駅までの車窓をしっかり楽しんだ。
出雲市駅に到着!
そして定刻9:58
サンライズ出雲号は出雲市に到着した。
東京駅を出発してから12時間。この長距離を定刻通りに運転してくるのは本当に大変だと思う。
寝台列車の運行はとても手間のかかること。運行してくれるJRに感謝!
まとめ:「ノビノビ座席」でも楽しいサンライズ号
あっという間だったサンライズ号の旅。
はじめてだったから、目にする景色・入っている音・車内の雰囲気すべてが新鮮で本当にたのしかった。
「ノビノビ座席」は寝台に比べると快適性は低いかもしれないが、
特急料金+指定席料金だけで乗車できるし
「寝台列車」の雰囲気もしっかり味わえる。
僕は今回の乗車ですっかりサンライズの魅力に圧倒されてしまったようだ・・・!
次に乗るときはお金を貯めて寝台に乗ってみたい!
最後までお読みいただきありがとうございました。
山陰旅の記録
ローカル列車で行こう!絶景を楽しむ快晴の山陰本線旅|出雲市→城崎温泉