上田電鉄別所線での旅を終えて,上田駅に戻って来た.
上田からは,名残惜しいけど名古屋への帰路につく.
長野方面へ延びる「しなの鉄道」の115系に揺られて,まずは篠ノ井へ.
そのあと篠ノ井から,篠ノ井線・中央西線を
名古屋へ走る,上りの特急「しなの」に乗車する.
2泊3日の旅の終わりを,旅情あふれる「国鉄形」で締めくくる.これぞまさに有終の美.
しなの鉄道115系|上田→篠ノ井
この日午前中は,上田から別所温泉へ延びるローカル線・上田電鉄別所線での旅を楽しんだ.
さて,今日で4連休もおわり.明日から大学で卒業研究をしないと.名残惜しいけど,そろそろ帰路につくこととしよう.
上田から名古屋方面へ帰る最短ルートは,しなの鉄道でまず篠ノ井まで行き,篠ノ井からJR中央西線方面へ向かうルートとなる.今回は,このルートで,篠ノ井からは特急列車で帰ろう.
115系がバリバリ活躍
上田駅で長野方面の列車を待つ.2面3線のホームには,小諸方面も長野方面も乗客が多く待っている.昼間は暑かったが,もう14時を過ぎている.信州の風は涼しく,乾燥している.ホームでボーっとしているだけでも気持ちいい季節だ.毎年5月と,この9月末~10月ごろには「これくらいの温度が,ずっと続いてほしい」と思う.まあ,そうはいかないのだが.季節は巡るからこそ,ちょうどいい気温がいとおしく感じられるものだ.
先に小諸・軽井沢方面の列車が到着した.1648M普通小諸行き,しなの鉄道色の編成だ.
鉄道ファンの間では有名だが,この「しなの鉄道」では,かつて首都圏や幹線で隆盛を極めた国鉄形電車115系が,大量に走っている.それも,各地区で走っていた懐かしのカラーリングで.今やってきた電車はしなの鉄道色と名付けられた,会社独自の塗装だが・・・
「湘南色」や,昨日ちょうど見かけた「横須賀色」など.こんな列車に乗れるなんて,首都圏のオールドファンにはたまらないのではないだろうか.別に首都圏のオールドファンではない自分でも,かつて首都圏を走っていた車両に乗れるだけでも,なんだかうれしい気分になる.
さて,自分が乗る方面の列車は,何色の編成が来るかな?わくわくして待っていると,スピーカーから列車接近の放送が流れる.数名の鉄道ファンが,ホーム端でカメラを構えている.こうやって古い車両が活躍しているのは,鉄道ファンにとっては相当うれしいことなのだろう.かくいう自分も.
やってきたのは,「湘南色」だ.東海道線で走っていた湘南電車のカラー,オレンジと緑で塗り分けられた,カボチャ電車ともいうべきカラーリング.しなの鉄道の復刻塗装の中では,このカラーが最も好き.
普通 長野行
上田14:06 = 篠ノ井14:36
上田駅で多くの乗客が下車.それと同じくらいの乗客が乗り込んでいく.かつての信越本線は,新幹線開業後でもまだまだ多くの乗客を抱えていることがうかがい知れる一幕だった.”本線らしさ”はまだまだ健在といったところか.
115系の「音」が楽しい!
115系は,低い唸り声を上げながらゆっくりと出発.
古いボックスシートに座っていると,ガタンガタンと,独特の振動が伝わってくる.ボックスシートで感じるこの振動がまた,旅情をさそってくるのだ.
次の駅に向けて,徐々に加速していく.鋼製の車体は,ジョイントに差し掛かるたび,「ゴトンゴトン,ゴツンゴツン...」と最近聞かなくなった重々しいジョイント音を響かせる.
高速域に達すると,ブォォォォォオォォォォォン….というモータの音.
そして停車前になると,けたたましいコンプレッサの音.
もう,音鉄にはたまらない,古めかしくてメカメカしい音が最高だ.
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窓開くかな?と思って,つまみをつかんでグイっとやると開いた.
一段だけ開けて動画に撮ってみた.この音,最高じゃないですか(伝われ).
田園風景を眺めながらの国鉄形電車の旅.
ぼんやりと外を眺めながら,いい音を楽しんだ.
優良路線に見えるけど・・・
しなの鉄道115系の車内は,部活帰りの学生,休日出勤か出張中と思しきサラリーマン,長野方面へおでかけ?の友達連れなどなど.混雑とまではいかないものの,空気輸送では決してない.車内の混雑具合が示すように,開業20年が経ってもしなの鉄道の経営状況は良好らしい(3セクで黒字なのは珍しい).もちろんこれは,経営努力のたまもの.でも,信越本線というそれなりの需要スケールをそのまま引き継いだというのも,安定した経営の要因となっているのではないか.
逆に,JRの方を考えると・・・
整備新幹線だった長野新幹線の開業で,並行在来線となった信越本線・横川=軽井沢=小諸=篠ノ井=長野のうち,軽井沢=篠ノ井間が,「しなの鉄道」として第3セクター化された.これはたぶん法律のせいなのだろうけど,このように今でも多くの乗客を抱える信越本線を切り離したことは,JR東日本にとって本当にいいことだったのだろうか?
もちろん,並行する2本の線路(新幹線・信越本線)を両方運行していくには,それなりの維持費や人件費が必要だ.でも,現にこうして近距離輸送の需要は大きいことがわかる.それをすっかり手放してしまって,長距離客が中心で,途中の小駅の利便性が低い新幹線に集中してしまっている.経営的には効率はいいのだろうけど,これだけの需要をさっさと手放したのは,一鉄道ファンから見るともったいないなーと思わざるを得ない.しなの鉄道が懸命に頑張って黒字経営をしているのだから,一大企業のJRが本気になって運行すれば,信越本線のまま黒字にすることもできたのではないか__?
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ちなみに,3セク化されなかった篠ノ井=長野間は,今でも「信越本線」としてJR東日本の管轄となっている.北陸新幹線開業でブツ切りになっている信越本線の一部だ.なぜ,軽井沢から長野まで一括で3セク化せずに,この区間だけ残しているのか・・・それはおそらく,この区間の旅客収入が良好なのが要因のひとつだろう.現に,しなの鉄道はこの区間を,JR側に「移譲してくれ」といっていたらしい(wiki情報).wikiの情報なので,真偽は不明だが.
しかしながら,JR側が篠ノ井=長野間を譲らないれっきとした理由として,JR東海区間から走ってくる特急「しなの」や松本から長野方面への乗客を乗せてくる普通列車が直通してくる,ということも挙げられる.これは確かに重大な問題で,もしこの区間をしなの鉄道側へ譲渡すると,しなのやJR線直通の普通列車を,どのようにして運行管理するのかという問題が浮上してくる.
こういったプラスとマイナスの問題が混在しているのが,この3セク化から残された区間のようだ.なかなか簡単な話ではない.
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正直言って,並行在来線問題の闇は深い.しなの鉄道は経営努力を重ねて路線維持に努めているけど,すべての3セクがそういうわけではない.新幹線開通前から,徐々に経営状況が悪化した状態で引き渡されれば,どんなに努力をしても衰退は避けられない.地域に密着した旅情あふれる地方路線が,大都市圏を結ぶ新幹線に打ち倒され,徐々に衰退していく姿を見るのは悲しい限りだ.地元・四国でも,四国新幹線期成会の動きが活発になっているらしいが,ストロー効果などによる地元の衰退の危険性は考慮しているのだろうか.もし予讃線を第3セクター化すれば,どうなってしまうのか.心配ではある.
篠ノ井でのりかえ~しなの18号自由席
そんなことを車窓を眺めながら考えていたら,篠ノ井についた.115系とはここでお別れ.
ここからしなの鉄道の列車は,JR線である信越本線を走って長野まで向かう.
篠ノ井駅は,信越本線(篠ノ井=長野)と篠ノ井線(松本=長野)の2線が乗り入れる駅.なお,しなの鉄道から長野へ向かう場合は,長野までのきっぷをしなの鉄道の駅で買うことができる.
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篠ノ井駅はJR東日本管轄なので,もちろんみどりの窓口があって,JRのきっぷを買うことができる.窓口に行って,名古屋(市内)までの学割乗車券と,自由席特急券を買った.4連休最終夕方の上り列車だけど・・・まあコロナだし座れるだろう.それにこの日は,白馬からの臨時しなの84号の運転日.幾分かはそちらへも乗客が流れてくれるだろう.
出発までちょっと時間があったので,駅にあったNewDaysでお菓子を買ってから,北陸新幹線を見に行く.見に行くといっても,駅外の2F広場から覗くだけ.
ちょうどよく,長野方面のE7系下り列車が通過していった.東北新幹線よりは速度が遅いけど,それでも並行する在来線よりは断然速い.新幹線にも乗りたくなったな~.もう帰らないといけないけど....
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在来線のホームへ降りると,EH200が入換作業をしている.
タキ1000の方向転換をするようだ.
もぉ~~~~と,起動して,徐々に近づく.
線路側にいる作業員の方とちょっと話してから,がちゃんと連結.素早い作業.
EH200も,いずれEF64重連を置き換える日が来るのだろう.2車体連結8軸機関車は,重連でなくて単機でタキをけん引することができるらしい.
今のうちに,EF64の雄姿を撮っておこう.そう心に誓ったところで,ちょうど上りのしなの号が長野側から入線.
この旅で,入線する列車を縦構図で撮るのにハマった.この旅最後の列車も,縦構図で撮影.
特急(ワイトビュー)しなの18号 名古屋行
篠ノ井15:09 = 千種17:57
しなのは,長野側の顔が宣伝等で使われるけど,名古屋側の方がすっきりしていてかっこいいと思う.これは同じワイドビューのキハ85系も同じ.下り先頭側よりも,南紀やひだのヘッドマークがバーンと見えている貫通顔の方がかっこいい.
しなのはもう何回も乗っているので,乗車記はほかの記事へ譲る.
車内では,読みかけだった新書を全部読破した.あと,NewDaysで買ったじゃがりこをバリバリ食べた.おいしかった.ちなみに,2両繋いだ自由席の混雑具合は,8号車は窓側がほとんどすべて埋まっていた.通路側にはまだそれなりに空きがあったが,自分の横には塩尻から,山帰りと思しき女性が乗ってこられた.7号車は,篠ノ井時点では窓側もいっぱい空きがあった.塩尻からは確認していないのでわからない.
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もうすっかり暗くなったころ,千種駅で下車して,旅はおしまい.名古屋でもこの時間になると,秋の風が吹いていた.すっかり乾いた別所温泉のタオルをぶら下げて,下宿への帰路についた.明日からまた卒業研究だ.
まとめ:115系に乗るなら今のうち
今回は主に,しなの鉄道115系について書いた.
しなの鉄道でも,ついこの間,SR1系というライナー列車用の新型車両が投入された.第3セクターで中古でなく新車を投入するのはすごい.経営努力に脱帽.
この新型車両は,今はまだ数は少ないけど,今後5,6年の間で老朽化した115系をどんどん置き換えていくものと思われる.爆音モータを奏でて走る,115系の旅情を味わうなら,今のうちに...!
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これで【秋の現実逃避旅】記事は終了です.
さいごまでお読みいただきありがとうございました.バックナンバーは,記事末尾の「関連記事」からご覧ください.
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旅の写真はPENTAX K30+DA18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR
でお送りしました.
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