伊予鉄市内線|移転した松山市駅からモハ50形に乗る

松山から関東への戻りも,JRを利用することにした。ついでなので路面電車にでも乗っておこうと思い,松山市駅へ向かうと,最古参形式のモハ50形がタイミングよく来たので,これに乗ってJR松山駅まで移動することにした。

松山市駅の路面電車電停移設

松山市駅前電停にやってきた。松山市駅は伊予鉄の市内電車と郊外電車の中心駅だ。松山市民には「市駅」と呼ばれ,JR松山駅を差し置き,松山を代表する駅として君臨している。

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そんな松山市駅には,長らく1つの問題があった。それは,市内電車(路面電車)の電停が,松山市駅ビルと郊外電車の松山市駅と,道を隔てて設置されていたことだった。これにより,市内電車をこの電停で降りた乗客が松山市駅へ向かおうとすると,どうしても信号を1つ渡らなければならなかった。

移設前の松山市駅前電停。写真ではまだ,電停が2本の道路の真ん中にあることがわかる。現在では,この電停がまるごと松山市駅側に移設されている。

そのような状態は,最近になってようやく解消された。具体的には,路面電車の電停を,松山市駅側へまるっと移設したのだ。2面2線の島式ホーム自体は以前と変わっていないが,軌道や停留所がきれいになっていた。

最古参のモハ50形電車

そんな市駅前電停を眺めていると,ちょうどJR松山駅方面の電車がやってきた。しかも,最古参のモハ50形電車だ。

新しくなった伊予鉄道市内線の松山市駅前電停。写真右の車両がモハ50形。色はともかく,昔っぽい丸みを帯びたデザインであることがわかる。

モハ50形には,2021年の年末年始に松山へ赴いた際にも乗車した。このうち,最古参のグループ(前期形:51 – 61)は,1950年代製造の大ベテランである。この時代の車が残っているのは,ほかに広電くらいだろうか?

【松山“通”の観光】伊予鉄路面電車最古参「モハ50形」の旅

そんなモハ50形だが,最新型のモハ5000形の増備によって徐々に数を減らしている。2026年時点では,最古参のグループは,わずか2両しか残存していない1。上記の記事で紹介したモハ52形も,残念ながら2023年度に廃車されたようだ。

眼の前にいる54号も,いつ廃車になってもおかしくない車種。ということで今回はこの車でJR松山駅まで行くことにした。

モハ50形前期形のうち,残存する2両のうちの1両。最近,国内では,路面電車が復権する兆しを見せている。最近の路面電車(LRT)は流線型の車両が多いが,このモハ50形は,四角い箱の角を丸めたような形をしている。路面電車というと,私にとってはこの形がスタンダード。

モハ50形の車内

松山市駅前では,現在も再開発が進められている。後述するJR松山駅前と比べると,電停が移設完了していることも含め,少しは進捗があるように見える。

外装こそオレンジに塗り直されているものの,車体の骨格は製造当時からほぼ変わっていないと思われる。その証拠に,床は板張りだし,柱も木造だ。この日は小雨だったこともあってか,車内に入ると,ほんのり木の香りが漂っていた。今の電車で,主たる構造部材に木を使うということはまずありえない。したがって,このような匂いを嗅ぐだけで,昔にタイムスリップしたような気分に浸れる。

このような路面電車,あるいはバスは,降車を希望する場合,ブザーを鳴らすことが一般的だろう。それがこの車では,ボタンを押すと「チン」と電鈴が鳴る。このボタンがいつのものかはわからないけれど,これもまあ今の電車やバスではほとんど見かけなくなった。

伊予鉄の市内線は均一運賃になっている。最近,250円(ICカードは230円)に値上げされたようだ。2022年に乗車したときは100円台だったが,ついに200円の大台を突破した。ついでにいうと,長らくローカルICカードのみ対応だった伊予鉄だが,ようやく全国交通系ICカードにも対応した。これによって全国からの観光客も乗りやすくなったのではないだろうか。

車体は古くとも,客扱いに必要なシステムはちゃんと更新されている。

車の設備について書いてきたが,この車は走り出してからが一番面白い。今では聞かれなくなった「音」を存分に楽しめるからだ。吊り掛け駆動に,コンプレッサの動作音,重々しいジョイント音。さらに,松山市駅からJR松山駅方面へ向かうと,大手町駅のダイヤモンドクロッシングも楽しめる(伊予鉄市内線と郊外電車高浜線の交差点)。今回の乗車では,ちょうど,上下の郊外電車の通過待ちがあった。電車の眼の前を電車が横切る光景は,全国でもここくらいでしか見られない。

大手町駅前電停にて停車中。ここは,全国でも数少ない「ダイヤモンドクロッシング」。郊外線と市内線とが平面交差する場所だ。基本的には,郊外電車が路面電車を待たせる形になる。

松山市駅からJR松山駅へは10分くらいで到着する。郊外電車であれば,松山市駅から大手町駅まで1駅乗車し,そこから歩いても行けるが,やはり駅前まで行ってくれる市内電車は便利だ。

この電車は,ここから松山市北部方面へと進み,松山市内をぐるりと一周して,松山市駅前に戻る。これだけ古い電車を,きちんと整備して,現役バリバリで走らせているのは,伊予鉄の努力と技術力があってこそ。狙って乗車するのは簡単ではないけど,タイミングが合えば乗ってみることをおすすめする。坊っちゃん列車とはまたひと味違う,本物の?レトロさを味わえる。

製造から70年を超えた車両は,乗るだけで観光になる。

再開発中のJR松山駅前

JR松山駅前電停からは,地下道を渡って,JR松山駅に向かった。

前の記事で少し書いたように,松山駅は高架化工事が完了し,旧駅舎の解体も済んでいた。ただ,駅周辺の再開発はまだまだこれから,という感じ。また,松山市駅前の電停とは違い,JR松山駅前の電停はまだ,JR松山駅から少し離れた場所にある。これを松山駅側まで移設する計画はあるものの,駅前の整備が済むまでは進められないのだろう。

JR松山駅の旧駅舎付近。解体を終え,更地になりつつある。

そのためしばらくの間は,観光客をはじめとする路面電車の利用客が,のりかえのために少しばかり歩くことを余儀なくされている。これは結構不便なので,早く整備を進めたほうがいいと思うのだが,人手不足や資材の高騰で,そう簡単ではないのだろう。

このあとは,松山から岡山まで,特急「しおかぜ」にて本州へと戻る。予約した電車まではまだ相当時間があったので,駅ナカに新しくできた喫茶店で時間をつぶすことにした。

(つづく)

おまけ:モハ50形の走行音です。こちらは過去の乗車で収録したもの。

  1. 伊予鉄道モハ50形電車 – Wikipedia ↩︎

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