
7月最初の鉄道旅は,中央線・青梅線の日帰り旅。「のんびりホリデーSuicaパス」で,終点の奥多摩まで行ってみた。
このパスをもっていれば,グリーン券を別に買うことで,普通列車グリーン車にも乗ることができる。せっかくだからと,デビューしたばかりの中央線快速のグリーン車にも乗ってみた。
中央線 青梅特快 グリーン車|新宿→青梅
湘南新宿ラインに乗って,新宿駅までやってきた。すでに昼前だったので,エキナカのNewDaysでおにぎりとサンドイッチを買ってから,中央線のホームに降りた。
ここから乗車するのは,11時44分発「青梅特快」青梅行きだ。中央線快速には,おもに2つの定期特別快速電車が運転されている。1つが「中央特快」,もう1つが「青梅特快」だ。いずれも立川まで中央線を走る。「青梅特快」はその後,立川から青梅線に入る。車両はE233系でふつうの通勤型であるものの,「特快」という名前からは,速そうな雰囲気が出ていて良い。旅情をさそう。

中央線といえば,最近,ようやくグリーン車が導入された。青梅特快とはいえ,新宿から終点の青梅までは1時間かかる。せっかくなので,グリーン車に乗ってみる。ダイヤ改正前後では,無料開放されていたらしい。そのときは結構なにぎわいだったそうだが,はたしてどうだろうか。
中央線は他線区とくらべて高架区間が多いので,ふだんはあまり乗らない2階席に乗りこんだ。

青梅特快は,中央線の立川駅まで,いくつもの駅を通過していく。グリーン車に乗っていると,なおのこと爽快だ。特快をはじめとする快速電車は,土日に限って,いわゆる「杉並3駅(高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪)」も通過する。
中央線は快速線も列車が多い。上り電車にいくつもすれ違った。週末の上り電車だから,車外からでさえ混雑しているように見える。いっぽうで,グリーン車はかなり空いているようだった。

いっぽうこちらの下り電車はどうかというと・・・こちらも負けじと「ガラガラ」状態だ。昼過ぎの下り電車だからだろうか。それにしても空いている。無料開放期間が終わった途端にガラガラになったとのうわさだったが,まちがいではないようだ。

立川からは,青梅線に入る。駅を出ると,すぐに高架へ上る。そして中央線の複線をまたぐ。このようにしていったん,青梅線と別れたあと,住宅街のなかをすり抜けるようにして走る。つぎの西立川駅手前で,青梅線にふたたび合流する。これは「青梅短絡線」とよばれるもので,じつは地図上にJR線として書かれていない。列車本数の多い中央線を支障しないのが目的らしい。
青梅線内では,ドア開閉が半自動扱いとなっている。線形はいいものの,駅間が短いゆえに,ゆっくりと走っている。
拝島駅は,青梅線内の主要駅の1つ。広い構内に入線すると,ちょうど五日市線,八高線・川越線の電車も見られた。

拝島では3分停車。向かい側のホームには,のぼりの青梅特快も停まっていた。普通車はあいかわらず混んでいるが,グリーン車はガラガラである。こちらのグリーン車2階席(4号車)も,いよいよ私以外だれもいなくなった。貸切である。

ちなみに,青梅線内では,グリーン車をつないでいない車も走っている。特に,青梅線内(青梅⇔立川)で完結する普通列車では,まだ10両編成の普通列車が充当されているようだった。
中央線といえば10両編成だったのが,グリーン車2両が入ったことで,12両化された。ということで,青梅線内の各駅ホームも,12両化に対応する工事が行われたようだ。その証拠に,ホームの先端がかなり狭くなっていたり,切り欠き状のホームで上下列車の停車位置がずれていたりした。
青梅線末端では,小作(おざく),河辺(かべ)と,読み方のむずかしい駅がつづく。そして,基本的に沿線は住宅街だった。東青梅から,終点の青梅まで単線。おそらくダイヤ作成上のボトルネックだろうと思われる。
ガラガラのグリーン車2階席に揺られること1時間,終点の青梅(おうめ)駅についた。

青梅線の末端区間|青梅→奥多摩
青梅からは,となりのホームに停車中の12時58分発 普通列車奥多摩ゆきに乗り換える。この列車は,もう1本あとを走る列車と接続をとるようで,のりつぎ時間には余裕があった。

以前は,青梅から奥多摩までのりかえなしで行ける列車もあったらしい。ただ現在では,直通がなくなり,青梅線を乗りとおそうと思えば,青梅駅でのりかえる必要がある。
列車はみじかい4両編成。青梅から奥多摩までは「東京アドベンチャーライン」の愛称がつけられている。

すずしい車内でしばらく待っていると,青梅線の後続列車から乗り換え客がやってきた。まもなく出発。乗客のうち半分が観光客で,もう半分が地元客のようだった。ここまで来ると,首都圏への通勤・通学というより,観光客の輸送のほうに活躍していそうな様子だった。
列車はワンマン運転。次駅の宮ノ平駅で車内確認を行った以外,順調に走っていった。基本的には多摩川の左岸を走る。車窓は,次,その次と,駅を過ぎるごとに山深くなっていった。各駅に,上り電車を待つ客が意外なほどいた。観光を終えて都心へ戻ろうというひとだろうか?

青梅線は,多摩川に沿いつつ蛇行する。カーブは半径が小さくなり,40~50 km/hくらいでトコトコと進んでいく。かなり高いところを走っているので,川を見下ろすような眺めになる。河岸には,川遊びをする家族連れが点在している。川と線路の間を国道が並走している。きっと車で遊びにきたのだろう。この国道を走っていくと奥多摩湖までいくことができるが,青梅線はそこまで至らない。

ふいに走って来た線路を見てみると,断崖にはりつくようになっている。中央西線の木曽川沿いとよく似た雰囲気だ。車内はいたってふつうの通勤電車なのに,そとの景色は山奥のそれ。このギャップが青梅線の面白いところだ。
奥多摩駅に近づくと,多摩川の川幅は細くなってきた。最近流行りのカヤックのようなもので,川を遡上するひとたちを見かけた。
おそらくカーブしているだろうトンネルを抜けると,青梅線の終点・奥多摩駅に着いた。各車両から,10名ずつ程度の観光客が降りて行った。

奥多摩駅は,終点とは思えないほどのカーブ上に造られている。ホームと列車の間には,ちょっと油断すると危ないくらいの隙間が空いていた。みな一様に足元を見ながら降りていた。

奥多摩駅周辺を散策

青梅線は,この駅までずっと登り基調だった。奥多摩駅の海抜は343メートル,と,改札へ下る階段のうえに掲げてあった。東京から出てきて,東京タワーより少し高いくらいまで上って来たということになる。この木の板は,いつのものなのだろう。開業は昭和19年7月1日とある。

秘境路線の終点駅ということで,立派な駅舎だった。2階には,喫茶店・飲食店が併設されていた。

奥多摩駅には,日中,毎時2本の列車が発着している。このまま駅でコーヒーを飲んで帰ることもできたが,せっかく山奥まで来たので,少しばかり散歩してみることにした。といっても,ハイキングや山歩きをする趣味はないので,本当に川沿いを散歩するだけ。
ビジターセンターのほうへと出て,昭和橋で多摩川を右岸に渡る。この写真からもわかるように,駅周辺の街区は,多摩川の削った谷底に形成されている。それにしても,背後の山は急峻である。崖の傾斜が生半可なものではない。

神社の裏道を行く。この道を下って行けば,川沿いまで降りることができた。

吊り橋があった。川の流れは速い。河岸では,水着姿の観光客が川遊びをしていた。きっとみんな,都心から涼しさを求めてやってきたのだろう。暑いが,人が多いので,川岸まで下りる気はなくなった。川沿いの遊歩道を気の向くままに歩いていく。

川沿いとはいえ,標高はさほど高くない。日差しの下に出ると,容赦なく暑かった。
遊歩道を抜けると,奥多摩駅のさらに奥の方へ通じる道に上がることができた。写真は,奥多摩工業 氷川工場。太平洋セメントの系列らしい。ほとんど緑しかない中に,無骨な構造物が埋まっている。異彩を放っている。

さっきの写真にあった橋から,多摩川を見下ろす。このあたりが如何に山奥かがよくわかる写真。

ふたたび駅のほうへ戻ってきた。いったん駅の改札口で時刻表を確認した。週末には,臨時快速列車が運転されているようで,それに乗車して帰ることにした。まだ時間があったので,駅2階のカフェで一服。

帰りは「ホリデー快速おくたま」で
さて,一息ついたところで,駅へと降りる。
奥多摩駅 15時14分発 特別快速「ホリデー快速おくたま82号」青梅ゆきに乗る。臨時の特別快速電車という扱いだが,列車名にも「快速」と入っている。
この電車は,青梅線内完結の4両編成。途中停車駅は御嶽(みたけ)駅のみ。その御嶽駅からは,ハイキング帰りの客でいっぱいになった。青梅=奥多摩間にはグリーン車はない。この混雑は避けようがなかった。

終点の青梅駅では,おなじく臨時特別快速「ホリデー快速おくたま2号」に接続する。中央線を東京まで走る電車で,ありがたいことにグリーン車付・12両編成だった。奥多摩で暑い中歩いたのと,青梅までの一区間の混雑に疲れてしまったので,迷うことなくグリーン車へ。
ちなみにハイキング客の大半は,普通車に乗っていった。元気だなあ。4両→12両への乗り換えなので,普通車もまだ空いているようだった。

行きは2階席だったので,帰りは5号車の平屋席にした。この区画は,2名掛けが2列しかない超コンパクトな居室になっている。8席あるうちに私含めて3~4名しか居なかった。中央線に入ると,車窓は急速に都会のそれへと戻っていった。いっぽうで車内は相変わらずガラガラだった。おかげで落ち着いて過ごすことができた。
結局のところ,私が休日に求めているのは,落ち着きと静けさなのだ。それらのいずれも,奥多摩ではなかなか手に入りきらなかった。奥多摩は,「近い田舎」であって,都心のひとが大勢やってきている。川も駅前も,案外騒がしい。自然はあれど,落ち着き・静けさは,案外見つけづらかった。
中央線のグリーン車は,今回乗車した青梅特快に限って言えば,のぼりもくだりもガラガラだった。要するに,奥多摩へ行くまでもなく,落ち着きと静けさを存分に味わうことができた。
灯台下暗し,とはまさにこのことである。
(おわり)
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