東海道新幹線N700系はPENTAX「銀残し」が似合う

東海道新幹線の伝統である白色ボディは,「銀残し」でローキーかつハイコントラストに仕上げるのが格好いい。

PENTAXカスタムイメージで新幹線を撮る

被写体としてのN700系新幹線

2月下旬の仙台・松島旅行は,東海道新幹線と東北新幹線とを乗り継いで出かけてきた。往復とも新幹線で,乗車前後や乗り継ぎ時間にて,新幹線車両を撮影する機会にめぐまれた。

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これまでも,駅撮りを中心に,ポツポツと新幹線を撮影してきた。特に,東海道新幹線のN700系を撮影することが多かった。

米原駅にて(2022年1月撮影)[参照:冬晴れの米原駅で東海道新幹線を撮影してきた【PENTAX望遠】]

東海道新幹線といえば,白のボディに青のラインという,伝統的なツートンカラーがあまりにも有名。新幹線といえばこのカラー,シンプルでカッコいい。

ただ,白いボディは,光線具合によっては白飛びしやすい。しかも,白飛びすると,「エアロダブルウィング」と呼ばれる独特の先頭車両(流線形状)を表現できない。

それゆえ,これまでN700系を撮るときは,基本的にはアンダー目に撮影して,あとからパラメータを調整することで,ボディの白色とエアロダブルウィングを表現するようにしてきた。

このようなN700系新幹線という被写体に対して,今回は,PENTAXのボディ内現像によって,それらを表現しようとしたわけだ。

ローキーでコントラストの強い「銀残し」

この記事では,特に,PENTAXのカスタムイメージである「銀残し」を取り上げる。PENTAXの「カメラ内現像」をちゃんと活用するのは,今回の仙台・松島旅行のスナップがはじめてだ。

ただ,「銀残し」については,過去に一度,触ってみて,撮ってみたことがある。このときは,カメラ内現像の仕組みについて理解しておらず,そんな機能があるんだ程度で撮っていた。それだけだったが,緑っぽい調色がなんだか格好良くて,金属の被写体によく似あうな~と理解していた。

優秀論文発表賞を受賞した時のメダル(PENTAXカスタムイメージ「銀残し」)。

そんなカスタムイメージ「銀残し」は,公式サイトで以下のように説明されている。名前の由来は,映画フィルムの現像手法らしい。ローキーでハイコントラストな写真に似合うカスタムイメージだといえる。

映画フィルムの現像手法である「銀残し」のような、ローキーかつハイコントラストや渋みのある色彩表現が特徴です。初期設定では“調色”効果がグリーンに設定されていますが、効果をOFFにしたり、他の色味に変更することで、様々な銀残し表現が楽しめます。

もっと自分を表現しよう。PENTAXの「カスタムイメージ」 | RICOH IMAGING

以上のことから,先述のように,アンダー目に撮ることが多く,金属光沢がうつくしいN700系に対して,「銀残し」を充てて現像すれば面白いのでは?と思って,旅行中に撮影した写真の何枚かをボディ内現像してみた。

N700系新幹線を「銀残し」で現像

以下の写真は,「フラット」でRAW+JPEG撮影し,RAW画像に対して「カスタムイメージ」を充てて,コントラストや彩度,シャドーなどを調整したうえ,JPEGに展開した。

まず1枚目。

この写真は,名古屋から仙台へむかって出発するときに撮影した。祝日の朝,東京方面へむかうため,上りの新幹線を待つお客さんでいっぱいのホームへ,N700系「のぞみ216号」がゆっくりと入線してくるシーンを切りとった。

↑の写真は,「フラット」でカスタムイメージを充てない写真。

真っ白なN700系に,ホーム天井の切れ間から差す弱い日差しが当たる。そのため,ホーム上との明暗差が激しい。これを考慮してアンダー目に撮ったが,N700系の白さが際立たない。エアロダブルウイングも強調しきれていない感じがする。

↓この写真に,「銀残し」を充てて,パラメータを微調整の上,ボディ内現像したのが次の写真だ。

ただでさえ明暗差の激しい写真に対して,さらにハイコントラストな「銀残し」を充てたことで,「暗」側であるホーム上のようすはほとんどわからない。しかし,この写真の主役であり,もっとも際立たせたかった,N700系の白さと,エアロダブルウィングを強調できた。

「銀残し」では,元の写真の色味が抑制され,緑っぽい調色に変わる。このことで,逆に白色が際立つようだ(公式の作例にもそのように記載があった)。また,緑っぽい色が,金属特有の光沢と,重厚感を引き出しているようにも感じられる。総合的に,非常に引き締まった写真に仕上がった。

2枚目。

これは,仙台から名古屋に帰る道中,東京駅で「のぞみ231号」の出発を待つ間に撮影した写真だ。東京駅東海道新幹線ホームからは,下り「のぞみ」や「ひかり」,「こだま」,そして回送列車が,数分と間を置かず発車していく。信号が変わるのを今か今かと待っている,そんな列車たちの横顔を切りとった。

先ほどと同様,銀残しで仕上げたことで,N700系ボディの光沢や,白さが際立つ。また,手前側(のぞみ231号)と奥側(回送列車?)の車両とのコントラストが強くなり,列車たちの秩序ある動きが出ている。列車の奥に見られる架線柱や建物にも,金属の質感がしっかりと載っている。総じて駅構造物の「冷たさ」がよく映った写真に仕上がった。

E5系は「リバーサルフィルム」で

「銀残し」は,「新幹線」という被写体すべてに似合うわけではない。それを,今回の旅行スナップで実感した。

たとえば,次の写真は,同じく仙台・松島旅行にて,仙台から乗車したE5系新幹線だ。E5系のボディ上部は,白無垢・青ラインのシンプルなN700系とは対照的に,「ときわグリーン(JR東日本のコーポレートカラー)」で彩られている。

PENTAXカスタムイメージ「フラット」にてカメラ内現像

この写真に対しても,さまざまな「カスタムイメージ」を充ててみた。そのなかで,もっとも「ときわグリーン」と相性がいいと思ったのが,次の写真だ。この写真は,「銀残し」ではなく,「リバーサルフィルム」で現像した。「ときわグリーン」に黒みが増し,締まりがあってかっこいい。

カスタムイメージ「リバーサルフィルム」は,公式サイトで以下のように説明があり,コントラストによって陰影をコントロールし,「濃厚な色彩」を表現できることがわかる。

「リバーサルフィルム」のような黒の締まりと濃厚な色彩を表現するためにチューニングされているカスタムイメージ。独特なトーンカーブによって陰影表現をしており、彩度をいたずらに高めるのではなく、コントラストによって深みのある色再現を行っています。
実際のリバーサルフィルムの現像をイメージし、あえて明るさやコントラスト、彩度など、調整する機能をなくしています。(詳細設定はシャープネス設定のみ有効)

もっと自分を表現しよう。PENTAXの「カスタムイメージ」 | RICOH IMAGING

E5系もN700系も,「新幹線」という共通点に対して,ボディの質感は同じ。これに対して,ボディカラーは,これら2つの形式でまったく異なっている。ことE5系については,「銀残し」よりも「リバーサルフィルム」の方が引き締まった感じになっていい写真になった。ローキーで暗部が黒潰れしているところもあるが,「リバーサルフィルム」では,(開発者のこだわりゆえ?)コントラスト・明るさ・彩度が調整できないため,これは仕方ない。それも含めて,カスタムイメージの味を感じられるというわけだ。

ローキーかつハイコントラストで無機質な写真が好み?

コントラストを下げ,色味を工夫すれば,通常の見た目に近い「銀残し」もできる。

以上,東海道新幹線N700系には,PENTAXの「銀残し」が似合うという話を書いてきた。

今回の「銀残し」を試したことで,どうやら自分は「ローキーかつハイコントラスト」で無機質な写真が好きそうなことがわかった。

以前の記事にも書いた通り,カスタムイメージは,PENTAXのカメラが作り出した素材の味を活かしながら,絵作りができる。Lightroomで「お手本」のような写真を仕上げるのも楽しい。けれど,せっかくPENTAXのカメラを持っているのだから,「カスタムイメージ」を駆使したボディ内現像をつかって,自分好みの絵を作っていきたい。

(おわり)

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