小海線の観光列車「HIGH RAIL星空号」乗車記【秋の現実逃避旅④】

甲府駅にやってきた.

さて,このあとは小海線に乗る予定なのだが…

どの列車に乗るかはまだ決めていない.

実は小海線,18きっぷ旅で乗車済み.このまますぐに乗り換えると,以前と同じ列車に乗ることになりそう.

それでは芸がない,とみどりの窓口に行って列車を調べていると,

「JR最高所の駅で途中下車して,星空を眺める」という,なんともロマンチックな観光列車を発見した.

列車の名前は「HIGH RAIL星空」.思い立ったが吉日,すぐにこの列車を予約して乗車してみることとした.果たして,野辺山で星空を拝むことはできたのだろうか...?あと,標高が高い野辺山駅は,9月でも夜中の気温が10度近くに下がっている.突発的に旅を始めた自分は,半袖しか持っていないが,40分ほどあるらしい星空観察会で,寒さに耐えられるだろうか・・・.

小海線 “HIGH RAIL 星空号”

甲府駅の自動券売機で列車を検索する.HIGH RAIL星空は全席指定の快速列車で,840円の座席指定券を買えば,乗車することができる.空席を確認すると,2人掛けのリクライニングが並ぶ号車は,窓側と通路側に1つずつ空席があった.一方,2ブロックあるボックスシートの方は,1ブロックまるまる空席があった.

他に窓側に向いている2人掛けのペアシート的な座席もあるらしいけど,これはすでに完売だった.ということで,リクライニングかボックスか,どっちにしよう.

HIGH RAIL 1375は,小海線の観光列車シリーズで,土休日に数本走っている.いずれもキハ110系を改造した車両.普段小海線を走るのはキハ110系.これはボックスシートが基本.

せっかく座席指定で乗るなら,ボックスじゃなくてリクライニングがいいよな~と,思い切って窓側のリクライニングシートを買った.窓側が1コだけ空いてるのは,たぶん反対側の2人がけ+こちら側の通路側1人の3人グループだろう.まあ,ちょっと肩身は狭くなるけど,リクライニングで小海線に乗るのもいい経験だ.今回はリクライニングで行こう.

中央東線|甲府→小淵沢

きっぷが手に入った.HIGH RAILの小淵沢駅出発は18時過ぎ.

ふじかわ号で甲府に着いたのが14時過ぎ,

甲府から小淵沢までは1時間弱で着くはずだから,まだたっぷり時間がある.暇なので,例のごとく駅前をぶらぶらしたり,ホームで写真を撮ったりしながら時間をつぶした.突発的に無計画に旅行をはじめると,こういう空白の乗換時間帯が唐突に生まれることがある.

前回記事にも書いたけど,甲府駅でE353系の発着を見ていると,猛烈に乗りたくなってくる.かいじ号がこの甲府駅で折り返すのと,あずさ号も祝日ということで本数が増えている.頻繁に行き交う彼らの,近未来的な車両デザインと,優等生な雰囲気のブレーキ緩解音がたまらない...首都圏の人からしたら,乗りなれてなんでもない列車なのだろうけど,東海地方在住の自分からすると,E353は憧れの車両だ.でも,今回は我慢.

甲府駅にやってくる普通列車は,中央西線近郊区間と同じ211系.ただしカラーリングが異なる.こちらは長野色と呼ばれる,水色の帯が施されている.また,JR東日本の普通列車は,前面向かって左上のところに列車番号が表示されているのが特徴.これはJR東海では見ることができない.

しばらく時間をつぶしたら,ようやく小淵沢にイイ感じの時間につく普通列車がやってきた.これにのって,終点の小淵沢まで移動しよう.

345M 
普通 小淵沢行
甲府16:21 = 小淵沢17:07

ボックスシートに腰掛けて,ぼんやりと車窓を眺める.小淵沢まで途中駅は7つほど.部活帰りの学生などが乗客の中心だろうか,数自体は多くない.

出発して1つ目の竜王駅で,後続のあずさ33号の追い抜きを待つ.竜王駅には貨物取扱線もあるらしく,構内にタキがつながれた状態で留置されていた.西日に照らされて,タキが無駄にかっこよく見える.向こう側にはENEOSの文字.石油関連の施設か何かあるのだろうか?

などと考えていたら,E353系が高速で通過.ほとんどフルスピードに近いかな?12両だから直線でもド迫力.

16:34に竜王駅を出発すると,そこからは特に退避もなくコツコツ走った.甲府は盆地の真ん中にあるけど,小淵沢は甲府より標高が高く,そこに向かって標高を上げていく.停まる駅ごとに観光名所案内板があるのだが,一番上にはその駅が標高とともに載っていた.

それらの駅でひとり,またひとりと同じ車両の乗客は降りていく.沈み始めた太陽の光をぼんやり浴びていると,小淵沢に着く頃には,もう同じ車両には自分しか乗っていなかった.

小淵沢でのりかえ

小淵沢には定刻に到着.9月下旬,17時を過ぎると徐々に暗くなり始める.

HIGH RAIL星空号の出発は18時過ぎ.終点の小諸に着くのは21時を過ぎるから,車内で食べるものを買っておいた方がいい.小淵沢駅周辺で歩いて行けるところにはコンビニなどないが,小淵沢では名物の駅弁をこの時間帯ならなんとか手に入れられる.

1度改札を出て,1Fにある売店へ向かう.前回小海線に乗った時は,まだそれなりに弁当が残っていたが,今回はもう1種類しか残っていなかったのでそれを買った.さすがに17時過ぎともなると,売り切れも近づいてくる.

レジャー帰りの首都圏のお客さんがいっぱいいる小淵沢駅.この辺の駅は,だいたい登山っぽい恰好をした乗客が多くて,彼らの大半は上りのあずさを待っているのだろう.コロナとはいえ,4連休.天気もよかったし,「withコロナ」の大号令の下,みんなリフレッシュしに来たんだろうな~.

それにしても冷えてきた.気温は20℃を下回っているみたい...半袖のポロシャツしか着ていない自分だが,これから夜の野辺山まで行って耐えられるだろうか・・・ちょっと心配になってくる.でも,せっかく指定券買ったし,まあ30分くらい駅前に出るだけなら耐えられるだろう.

沈んでいく太陽が,小淵沢駅前を照らす.幻想的.

そういえば財布の中の現金が少なくなってきているから,どっかに下せるところないかな~と思って,駅前を歩いてみる.が,コンビニひとつなかった.郵便局は祝日だからATMは開いてない.小淵沢って,もっと街のイメージがあったけど,駅前は全然大きな街ではなかった.市街地まで出ればコンビニはあるっぽいけど,まあ別に夜にホテルの近くでおろすか,翌朝おろせばいいや.

駅前をひとしきり歩いたら,小淵沢駅のホームへ向かう.

小海線の列車が発着するホームでは,すでにキハ110系(235D)が入線していた.HIGH RAILの方も,留置線に置かれて準備している様子.

以前,小海線に乗車したときは,今停まっている235Dの一本前,小淵沢発小諸行233Dに乗ったようだ.日中明るい時間帯の乗車記は,以下の記事を参考にどうぞ.

しばらく待っていると,HIGH RAILが入線.小海線発着ホームに,キハ110系とHIGH RAIL用のキハ103系が並んだ.

8223D
快速 HIGH RAIL 星空
小淵沢18:17 = 小諸21:06

キハ103系は,キハ100系からHIGH RAIL用に改造された車両.そのため車両番号・形式が変更になっているようだ.なお,後ろ側につないでいるのも改造車.こちらはキハ110を改造してキハ112が充てられている(wiki情報).2両編成で,前の2号車がリクライニング,後ろの1号車がボックスとペアシート.

観光快速列車だがワンマン運転 

ホームが薄暗くなる中,徐々にお客さんが集まり始めた.みんな長袖や上に羽織るものを着ている.みんあ,この時期の夜の野辺山が寒いことを事前に調べてきたのだろう.やっぱそうだよな~...自分みたいに突発的に「今日,これに乗ろう!」でやってきてる人はいないだろうな.半袖で耐えられるか,ますます心配になってくる...(笑)

星空案内人のおはなし

写真を撮っていたら出発時間が近づいてきた.ドアが開いたので,2号車へ乗り込む.予約しておいたリクライニング窓側に座ると,お隣には予想通り3人組の方の1名が着席.車内はほぼ満員の盛況ぶり.カップルや家族連れが多かったかな?

リクライニングは,JR東日本の観光快速列車標準っぽい感じ.特急よりは簡素だけど,キハ110のボックスよりは豪華な仕様.

出発すると,列車について女性のアテンダントから案内放送が流れる.続いて,「星空案内人」による星空に関する説明が行われる.星空案内人は,かつて野辺山の観測所に勤めておられた研究員の方で,メガネに白い髭をたくわえられた,いかにも天文分野の研究者といった風貌の方だった.パンフレットを基に,この秋冬の天体現象にかんしていろいろ説明される.これが結構面白い.彗星は,水と泥でできているとか,この秋冬に観られる流星群とか,火星の大接近が10月上旬にあるとか.天文現象って,意識しないと全然縁がないように感じるけど,じつは季節ごとにたくさんの現象がみられるんだな~と感心した.

2号車の説明が終わると,続いて1号車で説明が行われているようだ.

小淵沢から,星空観察会が行われる最高所の駅・野辺山までは,途中1駅(清里)停まるのみ.野辺山までは暗い車窓に目を凝らしたり,おとなりに座っておられる3人組の方のお話を,ぼんやり聞いていたりした.はたして,野辺山で星空は見られるかな~?

2号車前側には,星空に関する書籍が置いてあって自由に読むことができる.また,天井にはプラネタリウム的なアートもある.乗っているだけで,星空を眺めたい!という気分にさせてくれる.

野辺山駅で星空観察会

小淵沢から50分ほど走って,野辺山駅に到着.

この駅で45分ほど停車して,星空観察会が行われる.野辺山駅はJR最高所にある駅で,「天空にいちばん近い駅」.高所にあるので空気が澄んでいて,星空観察にはうってつけ!というわけだ.

車内からほとんどの乗客が下りて,星空に期待を膨らませながら駅前まで歩いていく.

気温は13℃くらいだっただろうか.半袖だったが,まあなんとか耐えられそうだ.
心配は杞憂に終わった.

駅前の広場みたいなところまで歩いてきて,ふっと空を見上げる.目が慣れてくると,徐々にポツポツと星が見えてくる.天気は曇り,ちょうど,自分たちがいるところの真上付近に雲の切れ間がある.
切れ間からは,いくつもの輝く星が見える.おー綺麗だ!さすが野辺山,空気が澄んでるから星の数もいっぱいだ~!

と思っていたら,まもなく雲が広がり始め,白い雲が空一面を覆ってしまった...泣
星空を眺められるかどうかは,お天道様次第だから,こればっかりは仕方がない.

雲がなかったら,きっと満点の星空が見えたんだろうな~・・・そのあと星空案内人による初秋の星の解説や,ブラックホールのお話など聞いた.星空は見えなかったけど,そのお話は面白かった.光の脱出速度とか,地球がブラックホールになるためには,どれくらいの半径まで縮む必要があるのかとか,高校で習った天体の物理の話が出てきて,お~なるほどと思えた.また,本来であれば見えているはずの星座についてもお話があった.星座のことは疎いけれど,こうやって話を聞いてると天体のことを勉強したくなってくる.宇宙の話はロマンがある.

そして最後に,星空案内人が,「う~ん,今日は残念ですねぇ・・・」と.これは...もう一度リベンジしないといけない,そう心に誓って列車に戻る.今度は絶対,野辺山で満点の星空を見るぞ.

野辺山駅の駅舎天井には,フラッシュを点けて写真を撮ると,星座アートが写る.星空を見られなくても,ここで写真を撮れば,星空を見た気分になれるかも?

鰈の西京焼き弁当

野辺山駅に停車中のHIGH RAILに再びのりこむ.

星空案内人は,野辺山駅で降りて行かれたようだった.

列車は小諸に向かって快速運転.停車駅は小海,中込,佐久平,そして終点の小諸.今日は小諸まで乗車券を買ってある.小諸までは1時間少々.

星空を眺めるための列車なので,ふつうの車窓を眺めるには時間が遅すぎる...ということで,キハ110系のエンジン音を楽しみながら,駅弁を食べることにしよう.

小淵沢で売れ残っていた「鰈の西京焼き弁当」.

売れ残りだから,あんまり期待はしていなかったのだけれど・・・実はこれは大当たりだった.以前小海線で食べた「高原野菜とカツの弁当」よりおいしかった.鰈の西京焼きは,濃いめの味付けで,これでごはんがすすむ!煮物もよく味が染みていて,優しい味わいだった.卵もうまい.ふだん普通列車では通過することのない駅を,ゴトンゴトンと通過しながら,おいしい駅弁を楽しんだ.

野辺山から1時間ほどで,北陸新幹線との乗換駅・佐久平に到着.ここで大半の乗客が下車していった.やっぱり首都圏や北陸周辺からの利用客が多かったみたいだ.隣に座っておられた3人組も,ここで下車していった.なんとなく肩身が狭かったが,隣が空いたことで謎の開放感に浸る.

小海線の佐久平駅は高架になっていて,下側を北陸新幹線が走っている.ちょうど停車中に,E7系がびゅんびゅんと通過していった.小諸まであと少し.

しなの鉄道|小諸→上田

終点・小諸には,21時過ぎに到着.

小諸には宿がなかったので,しなの鉄道で宿がある上田まで移動する.

HIGH RAIL星空到着が21:06で,しなの鉄道の上田方面長野行の列車が21:04発.タッチの差で接続がとられておらず,次の長野行は21:52.あ~惜しい.

長野までのきっぷを券売機で買って,肌寒いなかホームのベンチで待つ.隣に座っている高校生と思しき女の子は,ちゃんと長袖を着ている.もうこの辺の地域だと,9月末にもなると長袖がデフォルトなのかな.地域差を「肌で感じ」る.

寒くて本を読む集中力もなくなってきたところで,ようやく長野行115系が到着.

2687M
普通 長野行
小諸21:52 = 上田22:12

しなの鉄道は,国鉄形115系たちが絶賛活躍中であることで有名.今回やって来た普通列車は,クリーム色の地に青色の帯.横須賀線カラー,「スカ色」の115系だ.1日の終わりに,唸るモータを聴きながらの国鉄列車旅も悪くない.

上田に着いたのは22時12分.

コンコース階段下でひとり熱唱する男の歌声を聴きながら,今日は上田駅前のホテルに宿泊.豊橋から静岡,身延線で甲府,甲府から小淵沢,そしてHIGH RAILで小海線を小諸へ.長い長い1日が終わった.

まとめ:星空リベンジしたい!

列車から星空を見られる!という謳い文句に期待して,乗車したが・・・今回は残念なことに,星空観察会の最初の5分くらいしか星空を拝むことはできなかった.

ちょっと悔しいので,また冬場の天気のいい時期に乗りに来てみようと思う.今度はちゃんと天気予報を確認して,防寒装備も整えて.

これで「秋の現実逃避旅」1日目は終了です.

2日目はどうしようか,しなの鉄道115系の車内で上田周辺の路線図を眺めていたら,
上田からひょろりと伸びる1本の私鉄を見つけたので,2日目はそれに乗ってみます.

(次回記事へ続く)

【信州の鎌倉】別所温泉街を散策~上田電鉄別所線の旅【秋の現実逃避旅⑤】
小さくても頼もしい,地元密着型のローカル線「上田電鉄別所線」に乗って,別所温泉でまったりしてきた.

旅の写真はPENTAX K30DA18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR

でお送りしました.

参考サイト

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