【悲運の名車両】キハ283系定期運用離脱の報に際して

来たる2022年3月11日をもって,JR北海道のキハ283系が「おおぞら」の運用から離脱する。

これまで,引退車両についてあれこれ書くことは,あまりなかったのだけど,

JR北海道のキハ283系は,かなり好きな車両だったので,引退の報に際していろいろと思うことを書いておく。

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JR北海道キハ283系

キハ283系は,1997年から営業運転を開始した,JR北海道の特急型気動車だ。主に,石勝線・根室本線特急「おおぞら」として運行され,その高性能で一時代を築いた。

【振り子&130㎞/h】高性能車

キハ283系の特徴といえば振り子を駆使した高速走行だ。

営業最高速度は130㎞/h(のちに110km/hへ減速,後述),車体傾斜装置はカーブにおいて最大6度,車体を傾けることができ,本則+40㎞/h(R>600m)でカーブを抜けることができる。本則+40km/hということは,すなわち,90km/h以上の制限を受けるカーブにおいて,最高速を維持したまま通過できるということだ(これによって,石勝線特急「おおぞら」は,大幅な時間短縮を達成した)。

ここで,キハ283系といえば,という写真を,一枚紹介する。

キハ283系といえばこの写真。Wikipediaにあるのがもったいないくらいのクオリティ。鉄道ファンの間で,この写真はもうすっかりおなじみなのではないだろうか(引用:Japanese Wikipedia user 出々 吾壱, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1573109による)

この記事を読みに来た鉄道マニアであれば,一度はお目にかかったことがあるだろう,Wikipediaにおける「車体傾斜装置」の項に掲載されている写真だ。何度見てもカッコいい,いかにも速そうな車体デザインで,実際に相当速い。中身も外見も申し分ない,鉄道マニアを唸らせる車両だ。

【音鉄】独特な走行音がたまらなかった

キハ283系において,乗客がもっとも特徴的に感じるのが,その「走行音」だ。

本形式に搭載されているエンジンは,コマツ製の直列6気筒ディーゼルエンジン。1台あたり355馬力(ps)で,これを2台積んでいる(内燃機関については全くの素人だが,気動車なのに145km/h(設計最高速度)も出せるわけだから,相当な出力のはずだ)。

さらに,キハ281系からの変更点として,「パワーオン制御」と呼ばれる仕組みを採用した「N-DW18形」という液体変速機が装備されている。

コマツ製の直列6気筒ディーゼルエンジンN-DMF11HZA形(355ps/2,100rpm)を各車とも2台搭載する[5]。これはキハ281系と同様のものであるが、本系列の液体変速機は変速1段直結4段・パワーオン制御(自動車半クラッチと類似の機構)を採用したN-DW18形を装備している[5]。これにより、中速域からの加速性能と登坂性能の向上、変速ショックの軽減が図られている。

JR北海道キハ283系気動車 – Wikipedia

以上の走行機関により,加速・登坂性能の向上,ひいては所要時間の短縮がなされたわけだが,この走行機関から生じる「音」も独特なものとなっている。マニアはもちろん,そうでなくても,この車に乗れば,「あぁ,この音はキハ283系(「おおぞら」)だなあ,」と判別できる音だ。

音鉄の自分にとって,この音はたまらなかった。石勝線の峠に掛かると,ディーゼルエンジンに似合わない高音を断続的に響かせながら,猛然と加速していく。振り子で車体をグイグイ傾けながら,カーブを抜けていく。惰行時に入ると突如訪れる静寂,そして力行,変速すると,またエンジンから高音の唸り…「おおぞら」でしか味わえないキハ283のうまみだった。

もちろんずっと聴いていると疲れる音かもしれないが……他所では聞けない音だけに,なにかクセになる,また聴きたくなる,そんな音だった。

↑の動画は自分で収録したものだが,110㎞/hに減速されてから収録したもので,正直迫力には欠ける(もちろん,独特な音は聞こえるのだが)。しかもスマートフォンでの収録だったので,音質もそこまでよくない。

あの音をじっくり味わえる動画はないか,とYouTubeで探してみると,以下の動画が見つかったのでこちらに共有させていただく。2013年(H25年)8月27日収録,とあるので,130km/h時代の走行音ということだ。ちゃんとしたレコーダで収録されており,良音質だ。動画後半の方には,独特な音の正体であるパワーオン制御音なしで,純粋なエンジン音を聴けるところもいくつもあった。

130km/h時代の283系には乗車経験がないし,この動画の車両がどの程度最高速度で走行しているのかは定かではないのだけれど,この動画によって当時の迫力ある走りの一端を味わうことができた。

脱線事故,そして性能抑制

そんな高性能をもって,登場当時から快走を続けていたキハ283系だが,

その高性能ゆえ,構造は複雑であり,従来車よりメンテナンスに費用がかさむことは容易に推測できる。

実際,今回の引退(近いうちに廃車されるだろう)は,自らより車齢の進んだキハ183系,キハ281系より先の引退となった。これが示しているのは,高齢”車”よりも,動力車の維持に莫大な費用がかかることだろう。

キハ283系は,先輩車両であるキハ281系より先に引退することになった。

そんな高額な整備費用,ひいては安全運行に欠かせない点検の源となるであろう旅客収入だが,JR北海道の収支悪化がよろしくない状況(赤字)なのは,すでによく知られている通りで,これは最近始まったことでもない。おそらく,以前から常態化していただろう。

赤字の状態で,高性能車の性能をほとんどフルパワーで使い続けた結果...2013年に,キハ283系は大事故の加害”車”となってしまった。2011年5月に発生した,石勝線(清風山信号場構内)特急列車脱線火災事故だ。

引用元:URL: https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/safe/01_01_1.pdf [Access: 2022/3/6]

JR北海道において,事故以前の運行・車両点検が,どういう状態だったかは知らないが,おそらく相当ひどい状態だったに違いない(そうでなければあんな事故は起きない)。JR北海道が,この事故以外にも,いくつか重大な事故が頻発したことからも,そう,推測できる。

キハ283系は,加害”車”ではなく,JR北海道という加害”社”の被害”車”だった,といった方が実態に近いのだろう。キハ283系の名誉のためにも,ここではそう書いておこう。

北海道を小さくしたスター車両は,こういう経緯で,一瞬にして「危ないJR北海道の象徴」へと転落してしまった。いくら性能が高くても,あってはならないことを起こしてしまったのだから,仕方がない。

その後,事故の反省から,メンテナンス体制強化に向け,道内特急列車の最高速度抑制が行われた。道内全ての特急・快速列車が対象となったようだが,そのなかでも「スーパーおおぞら」では130km/h→110km/hと,20km/hもの減速が断行された。

これにより,札幌⇔釧路間の平均所要時間は,3:51から4:11と,約20分延び,再び4時間以上の時間を要するようになってしまった。

減速されて以降,JR北海道の経営が改善することはなかった。ゆえに,キハ283系が性能を発揮できる余地も生まれず,性能抑制されたまま,今回の引退(定期運用離脱)を迎えた。

高性能でもてはやされたスター車両だったが,一回の事故を機に転落してしまった,キハ283系はまさに「悲運の名車両」だったといえるだろう。

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まとめ:今後は後輩(キハ261)の走りに期待!

本当は,定期運用離脱前に,あと1回だけでいいから,「おおぞら」の283系に乗りに行きたかったけど…研究でバタバタしたのと,コロナ禍の影響もあって,結局北海道へは行けずに引退を迎えてしまった。寂しい限りだ。

今後,「おおぞら」の看板を引き継ぐのは,石勝線系統の後輩である「キハ261系(1000番台)」だ。

今ではすっかりJR北海道の看板になった感のあるキハ261系だが,「おおぞら」の運用を担うのにはまだまだ違和感がある。それくらい,「おおぞら」にキハ283系が定着していたということだろう。

キハ261系1000番台は,今のところ大きな不具合もなく,2006年頃から現在まで量産されてきている。そういうわけなので,今後何も起こらなければ,この形式が道内の特急運用のほとんどを担うようになると思われる。

キハ261系には,ぶっとんだ性能を持って走り抜けてきたキハ283系に負けず,「おおぞら」といえば,そしてJR北海道といえば,さらにいえば気動車特急といえば,キハ261系だ!と言ってもらえるように,これから頑張ってほしい。

 

さようなら,キハ283系。ありがとう。

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<参考資料>

[1] JR北海道キハ283系気動車 – Wikipedia

[2] 安全性向上に向けた輸送サービス抑制へのご理解について(平成25年9月)|JR北海道

[3] 【モンスターマシンに昂ぶる 011】日本最強・最速を誇るディーゼル列車たち|Webモーターマガジン

[4] 日本の鉄道事故#石勝線特急列車脱線(火災)事故 – Wikipedia

[5] 2022年3月ダイヤ改正について – JR北海道

関連記事①:キハ283系「Sおおぞら」乗車記(上り)

>> 北海道フリーパスの旅2日目|富良野線・根室本線不通区間の旅

関連記事②:キハ283系「Sおおぞら」乗車記(下り)

>> 北海道フリーパスの旅3日目|釧路湿原の真横を走る!釧網本線の旅

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