夏の東北鉄道旅(5) 時刻表の愉しみ~東北本線を新幹線でワープ|鳴子温泉→北上

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東北鉄道旅は3日目。青春18きっぷをつかった旅をすすめた。

3日目の目的地は盛岡。出発地である鳴子温泉の民宿での朝の時間を確保しつつ,とちゅう,北上線と田沢湖線をまわり,夕方に盛岡にたどりつくという,ちょっとわがままな旅程をおもいついた。

この旅程で,まじめに普通列車をのりつごうとすると,出発が早朝になってしまう。また,途中駅での待ち時間もながくなる。そこで,時刻表を駆使して「新幹線ワープ」を組み込んだ旅程を考案した。考案した「理論」を実証するべく,3日目の午前は,鳴子温泉の民宿を出発して,陸羽東線を太平洋側へと上り,途中の古川駅からは,東北新幹線「やまびこ」で一ノ関へワープした。一ノ関からは,701系ばかり走る東北本線を下り,北上きたかみまですすんだ。

時刻表の真価と愉しみ

なぜ鉄道マニアが時刻表を携帯するのか?

列車旅の最大の愉しみは,時刻表を駆使して,なんらかの制約の下で,目的をかなえるルートをみちびきだすプロセスだ。時刻表はかつて,一般にもそれなりに普及していた雑誌だったと思われる。それが最近では,スマートフォンの「のりかえ案内」アプリや地図アプリによって,だれでも簡単に,最適な旅程を立てられるようになってきた。そういうわけで,ふつうのひとが時刻表を手にして,読み込む機会は皆無になったといってよい。分厚いし,字が小さいし,読み方もよくわからない。一方で,鉄道マニアが,そんな時刻表を手放さないのはなぜか?それは,時刻表があれば,かゆいところに手が届く「オーダメイド」の旅程を立てられるからだ。そして,時刻表をつかってオリジナルの旅程(経路)を考えることが,彼らにとって,崇高な愉しみでもあるからだ。

電車にのっていると,鉄道マニアと思しき人間は一目でわかる。彼らはだいたい,分厚い時刻表をたずさえ,車窓の見物もそこそこに,時刻表を熱心にめくっているからだ。特に,青春18きっぷ利用期間(夏休み,冬休み,春休み)になると,このようなマニアをよく見かけるだろう。近くに座っている一般人からすれば,到底理解できない。一体何をやっているのか?彼らはたぶん,時刻表を繰りながら,頭の中で,路線網をはりめぐらし,ゴールにむかって列車をつなげているにちがいない。そういう目的がないとしても,いま乗っている路線のページを開き,すれ違う列車や前後を走っている列車を想像している。さっきからちらちらと車窓を見ているのは,たぶん,停車している列車やすれちがった列車の列番・時刻を確認して,悦に浸っているからだ。要は,鉄道マニアは「時刻表を乗りこなしている」のだ。

理論派と実証派

時刻表で旅程をたてることは,微分積分学でいうところの「条件付き極値問題」を解くことに相当する。ダイヤグラムという方程式を,その日の旅程・予算という条件の下で解いていくのだ。そして,ここで導かれた解は,いわばその条件下で得られた方程式の「理論的な」解といえる。筋金入りのマニアとなると,ここまでのプロセスを机上で完結させ,楽しむことができる。机上での理論構築だけでも楽しめる彼らは,いわば鉄道旅行の理論派である。

一方で,鉄道マニアの大部分は,上記の理論構築を,出発前,あるいは現場で進める。もちろんこのプロセスも面白いのだが,それだけでは満足できない。時刻表を駆使して,自身の手で構築した旅程(経路)を,実際の路線で「実証」する。つまり,実際に旅に出る。研究で言えば,旅程の作成が理論解の導出にあたり,実際に列車にのってゆく部分が,実験による実証となる。つまり,このようなマニアは,自分の構築したルートに乗ってゆく,理論と実験の両立派である。

私はどちらかといえば,後者だ1。理論は理論,それがほんとうかどうかは,やってみなければわからない。ということで以下では,鳴子温泉~北上~盛岡のルートを題材として,1. 時刻表を駆使した旅程の導出と,2. その旅程の検証,というプロセスを書いた。

3日目の旅程を考えよう:鳴子温泉~盛岡

北上線・田沢湖線経由で盛岡にいきたい

この日の目的地は,岩手県の県都・盛岡だった。陸羽東線から青春18きっぷで盛岡までゆくとすると,まず鳴子温泉から小牛田までむかい,そこから東北本線に乗り換えて,一ノ関,北上,花巻と北上すればよい。ただ,せっかくの青春18きっぷを,東北本線を下るのに費やすだけでは面白くない。

そこで,北上駅からのびる北上線に乗って,横手から奥羽本線で大曲までゆき,最後は田沢湖線で盛岡までいくことを考えた。このルートを,すべて青春18きっぷでゆくとすると,以下

鳴子温泉→(陸羽東線)→小牛田→(東北本線)→一ノ関→(東北本線)→北上→(北上線)→横手→(奥羽本線)→大曲→(田沢湖線)→盛岡

と乗り継いでゆくことになる。このなかでもっとも本数が少ないのは,後半の2路線,つまり,北上線と田沢湖線で,特に田沢湖線は,秋田新幹線が並行するルートで,在来線の普通列車は2時間に1本程度しかない。したがって,田沢湖線の時間から逆算して,のりつぎを考えたほうがいい。なおかつ,あまり夜遅い時間まで列車に乗っているのもつかれるし,車窓がなくて退屈なので,夕方(の常識的な時間)には盛岡へ着くという条件を課した。

旅程作成に立ちはだかる2つの制約

在来線のみ乗り継ぎは朝早すぎる

この場合,鳴子温泉を朝早く出れば,乗り継げないことはない。乗換案内によると,鳴子温泉0543発の1720Dで出発して,以下のように乗り継いでいくと,17時前には盛岡駅にたどりつけるようだ。

鳴子温泉→北上→横手→大曲→盛岡を普通列車のみで乗り継いでゆく場合(1)

ただ,鳴子温泉の民宿は,朝食が8時に出る。どうしても食べたいなら,無理を言って,早めに出してもらうか,そうでなければ朝食をあきらめなければならない。いや,朝食はどうでもよくて,とにかく早起きしなければならない。このことがいちばんのネックだ。さらに,早朝の小牛田駅で1時間弱,午後に大曲駅で3時間弱の乗り継ぎが生じる。大曲駅は,そもそも本数が少ないから,この程度の乗り継ぎ待ちは覚悟しなければならない。一方で,問題なのは小牛田駅だ。小牛田駅の周辺に,時間をつぶせるような店が乏しいことは,前日の石巻線の旅でリサーチ済みだった。したがって,この旅程では,小牛田駅での待ち時間によって,民宿での朝の時間を削られてしまうといえる。

小牛田での乗り継ぎが悪い

「鳴子温泉の民宿で8時に朝食を食べる」制約条件を守るとすると,以下の乗り継ぎ案が考えられた。鳴子温泉0831発の1726Dに乗り,盛岡には1858に着ける。また,時刻表にもとづくと,大曲駅でどうしても1時間以上の待ち時間が生じることがわかった。つまり,北上から先のルートは,以下の乗り継ぎが最適解であるとわかった。つまり,北上駅1342発,を,もう1つの制約条件と考えればよい。

鳴子温泉→北上→横手→大曲→盛岡を普通列車のみで乗り継いでゆく場合(2)

鳴子温泉8時以降発,かつ,北上駅1342までに着,という条件の下で,東北本線を北上してゆくには,どうやら上記の乗り継ぎしかないようだ。ここでの問題点は,鳴子温泉でゆっくり朝食をとれないことと,相変わらず小牛田駅・一ノ関駅それぞれで,1時間以上の待ち時間が生じることだ。8時から朝食を食べ,8時半過ぎに宿を出るとすると,朝食後のゆとりはまったくなくなる。それにもかかわらず,時間つぶしスポットに乏しい小牛田駅で,1時間以上,列車を待たなければならない。東北本線は,小牛田駅で系統が分離されていて,陸羽東線から下り方面への乗り継ぎは考慮されていないようだ。

どうすれば,朝の出発時刻を遅らせて,なおかつ,小牛田駅での待ち時間をなくせるだろうか?

東北新幹線による東北本線ワープの検討

青春18きっぷ旅の「新幹線ワープ」活用

こういうわがままを果たしてくれるのが,青春18きっぷ旅における「新幹線ワープ」だ。「新幹線ワープ」とは,在来線と新幹線が並行している区間において,別途,乗車券・新幹線特急券を買って,新幹線に乗車する,要するに課金するということだ。一般的には,在来線ののりつぎが悪い(長い待ち時間が生じる)区間で,1駅~2駅だけ新幹線に乗る。この乗り方が,費用対効果にすぐれた「新幹線ワープ」と言われている。新幹線には,「特定特急券」というものがあって,となりあう1駅または2駅間の自由席特急券は,それ以上はなれた区間の特急券に対して割安に設定されていることが多いからだ。逆に,3駅以上の区間にまたがって乗ってしまうと,きっぷ代が高くなり,短縮できる時間に見合わなくなってくることが多い。このことは,「東海道新幹線による東海道本線静岡区間のワープ」を例にとって,以下の記事にまとめた。

関連記事:18きっぷ旅の新幹線ワープ活用|こだま号で静岡から浜松へ【2019春18きっぷ旅(終)】

東北新幹線による新幹線ワープ2案

上記のルートのうち,北上きたかみより南の区間で,「新幹線ワープ」できそうなのは,以下の2区間だ。

  1. 古川(陸羽東線からのりつぎ)→(くりこま高原)→一ノ関
  2. 一ノ関(東北本線からのりつぎ)→(水沢江刺)→北上

1.のルートには,乗車券(運賃)900円・特急券1,000円の「特定特急料金(自由席)」が適応されている。同様に,2.のルートでも,乗車券770円・特急券880円で,こちらも「特定特急料金(自由席)」が適応されている2。したがって,いずれの「新幹線ワープ」も,割安料金で,コスパは高いといえる。では,「朝の出発時刻を遅らせて,なおかつ,小牛田駅での待ち時間をなくせるだろうか?」という問題を解決できるのは,どちらの区間かを考えてみる。

鳴子温泉0831発の次の列車は,1008発の1728Dで,この列車であれば,朝はじゅうぶんゆったり過ごせそうだ。当列車は,陸羽東線を以下の時刻で運転される。上記1. のワープをつかうなら,途中の古川で下車し,2.のワープなら,小牛田まで乗りとおせばよい。

1728D
1008 鳴子温泉 発
レ (陸羽東線)
1054 古川 着 →1. のワープへ(東北新幹線へのりつぎ)
レ (陸羽東線)
1107 小牛田 着 →2. のワープ(東北本線へのりつぎ)

次に,それぞれの駅から,新幹線への乗り継ぎを考える。

陸羽東線を小牛田で降りて一ノ関からワープ

まず,2.小牛田まで陸羽東線を乗りとおす)場合だが,小牛田から一ノ関までは,東北本線で北上することになる。しかし,この時間,小牛田発の下り普通列車は,本数が少ない。11時前後に一ノ関までむかう下り列車は,以下の2本のみだ。

545M 549M
1056 1252 小牛田 発
レ   レ (東北本線)
1141 1338 一ノ関 着

小牛田につく10分前に,545Mが出てしまうのが大変惜しいが,惜しいからといって乗り継げるわけではない。つまり,鳴子温泉1008発の1728Dで,2のワープを使おうとすると,小牛田駅で549Mを2時間近く待ってから,一ノ関へ行くことになる。これによって,ワープをする前に,北上駅の北上線出発時刻(1342)に間に合わないことが確定する。これでは本末転倒,新幹線ワープがまったく役立たない。したがって,一ノ関駅からの新幹線の時刻を考えるまでもなく,2. 陸羽東線を小牛田まで乗る案はボツである。

陸羽東線を古川で降りて一ノ関までワープ

では,1. の(陸羽東線1728Dを古川で下車する)場合はどうだろうか。以下に時刻を再掲する。この場合,古川には1054に着くことができる。

1728D
1008 鳴子温泉 発
レ (陸羽東線)
1054 古川 着 →1. のワープへ(東北新幹線へのりつぎ)

次に,古川を11時前後に出発する下り新幹線の時刻を見てみると,ちょうど11時3分発の「やまびこ53号

53B
1103 古川 発
レ (東北新幹線)
1127 一ノ関 着

が接続している。これに乗れば,小牛田駅を通ることなく,一ノ関まで下ることができる。一ノ関駅からは,1時間少々の待ち時間を経て,東北本線の普通列車

1537M
1246 一ノ関 発
レ (東北本線)
1324 北上 着

へのりつげば,北上線へ間に合うように北上駅に到着できる。つまり,「鳴子温泉8時以降発,かつ,北上駅1342までに着」という条件を満たせる。一ノ関駅は,小牛田駅より大きな駅で,周辺の飲食店で時間をつぶせる。ちょうど,正午をまたぐような待ち時間なので,昼食でもとっていればつぶせるだろう。

時刻表からみちびいた3日目の旅程

以上より,古川から「新幹線ワープ」すれば,「朝の出発時刻を遅らせて,なおかつ,小牛田駅での待ち時間をなくせるだろうか?」という問題を解決できることがわかった。一ノ関駅でゆっくり昼食もとれる。北上までののりつぎ案をまとめると,

1728D
1008 鳴子温泉 発
レ (陸羽東線)
1054 古川 着

53B(やまびこ53号)
1103 古川 発
レ (東北新幹線
1127 一ノ関 着

1537M
1246 一ノ関 発
レ (東北本線)
1324 北上 着

となる。さらに北上からは,北上線・奥羽本線・田沢湖線を以下の列車

3731D
1342 北上 発
レ (北上線)
1455 横手 着

2445M
1504 横手 発
レ (奥羽本線)
1521 大曲 着

1652 大曲 発
レ (田沢湖線)
1858 盛岡 着

で乗り継げば,盛岡まで青春18きっぷでゆくことができる。新幹線ワープの効能は,「時間短縮」にあるといわれている。ただ,ルートにもよるが,短縮できる時間がそこまで大きくないことも多い。それよりも今回のように「旅程の自由度とゆとりが高まる」ことのほうが,すぐれた効能だと考えられる。

「理論」の検証|鳴子温泉→古川→一ノ関→北上

以上の旅程は,2日目午後:陸羽東線で鳴子温泉へむかう列車で考えた。この「理論」を,3日目の午前中に実践し,「検証」してみた。

鳴子温泉をゆったりと出発

朝食は,鳴子温泉の民宿で頂いた。粘りとツヤのあるごはんがおいしかった。

9時過ぎに出発し,温泉街をひととおり歩いてから,鳴子温泉駅に行って列車を待った。駅員さんはひとりしかおらず,業務で忙しそうだった。改札で18きっぷをみせると,業務の手を止めてすぐに通してくれて,すぐにまた忙しく業務をやっていた。鳴子温泉駅で待っている乗客のうち,観光客は,私含め,数組だった。鳴子温泉へは,大部分が車でやってくるのだろう。

計画通り10時すぎの上り1728Dに乗車した。陸羽東線の車窓は,草の生い茂る田舎の風景がおおかった。車内には地元の利用客もそれなりに居た。

古川駅で陸羽東線から東北新幹線へのりかえ

この列車を古川駅で下車した。ここから一ノ関まで,53B(やまびこ53号)でワープする。乗車券と特急券あわせて1,990円。これを「えきねっと」で事前に購入し,チケットレスで乗車することとした。

古川駅の下りホームに上ると間もなく,やまびこ号が,E6系とE5系をつないだ17両編成でやってきた。E6系は,秋田新幹線を走る「こまち」として運用されているが,合間にはこのように「やまびこ」としても走る。

秋田新幹線は「ミニ新幹線」規格でつくられていて,E5系(フル規格)とくらべて,車体の幅が狭い。ホームと車体との間にすきまが空いてしまうから,それを埋めるステップを車体側面に出して,入線してくる。

E5系の「やまびこ」には乗ったことがある3けれど,E6系の「やまびこ」は,未だ乗車したことがなかった。そういえば,E6系自体,見たことはあるけれど,乗車したたことがなかった。そういうことで,あえて盛岡方に連結されたE6系の自由席に乗ってみた。

東北新幹線下りやまびこ53号(53B):古川1103→一ノ関1127,「やまびこ」だが,E6系を連結してやってきた。

先頭車(17号車)は,ロングノーズの部分にあたる。それゆえ,客室の前後方向の長さが,中間車のそれとくらべて非常に短い。そして,ミニ新幹線なので,座席の数も少ない。ふつう,フル規格の新幹線は,2×3の座席配置になっているけど,このE6系は,2×2の座席配置だった。座席にかけてみると,E5系より,ゆったりした座席のように感じられた。昨日はローカル線ばかり乗り継いでいたから,新幹線にのると,ものすごく快適な,未来ののりもののように思えた。とんでゆく車窓を眺めているのが楽しいし,新鮮だった。

古川から一ノ関まではわずか24分。あっというまに到着した。53Bは,一ノ関駅にて,E5系10両編成に追い抜かれてから,盛岡方面へ下って行った。これを見送ってから改札を出た。

一ノ関駅前で昼食

一ノ関といえば,平泉で有名。新幹線の主要駅の1つで,速達の「はやぶさ」も停車することがある。在来線と新幹線との両方の入口になっている西口側の待合室は活気にあふれていた。キオスクや土産物屋,みどりの窓口があって,想像以上に立派な駅だった。

ここでは,上記の旅程通り,約1時間の待ち時間があった。そこで,駅前の和食レストラン「松竹」にて,ランチセットをいただいた。茶碗サイズの丼に,ヒレとロースのソースカツが1枚ずつのったカツ丼に,小鉢2つ,デザートのパイナップル,汁物。地元客が多いだけあって,間違いない味だった。美味しかった。

岩手県に降り立ったのは初めてだった。岩手のひとは,控えめだけど,芯がある県民性,というイメージをもっていたけど,「松竹」には,まさにその通りのひとが店内ですごしていた。長い冬を我慢強く耐える,東北の厳しい気候が,そんな人間性をはぐくむのかもしれない。

東北本線701系で北上へ

一ノ関からは,1246発の701系1537Mで,北上まで下った。この辺りには,701系ばかり走っている。東北本線を上り下りするときは,帯の色が違うだけで,基本的にこの車両にのりつづけることとなる。

一ノ関駅に停車中の1537M。東北本線の列車は,701系ばかり。紫色の帯は,盛岡色。
一ノ関駅の留置線にも701系。写真奥に見えているのは東北新幹線の高架。
一ノ関駅で入換中の小牛田行き列車。こちらも701系。
ここから仙台方面へと上る小牛田ゆき列車。同じ701系でも,帯の色は違う。正面が緑で,側面は赤と緑の2色帯。これは仙台車のカラーだ。

一ノ関駅からは,太平洋側を気仙沼まで下る「大船渡線」がのびている。この路線は非電化なので,キハ100系が走っている。ちょうど,私が列車にのるころ,上り列車がやってきて,すぐに折り返していった。大船渡線には,この旅の後半で乗車することを予定している。

一ノ関駅にやってきたキハ100系。ここから大船渡線を走る列車だ。大船渡線には,旅の後半で乗車することにした。

北上へむかう701系の車内は,18きっぱーと地元客ばかりかと思っていると,意外とそうでもなくて,スーツケースを転がす客もそれなりに居た。途中の平泉や,北上あたりで降りるのだろう。ロングシートで701系の爆音モータを堪能し,定刻通り北上に到着できた。ここから18分で,北上線の快速列車にのりかえる。

これで,上記の「理論」のうち,前半部分を実証できた。ちょっと長くなってきたので,この日のメインディッシュ「北上線」および「田沢湖線」は,次の記事へまわすことにする。

時刻表抱える鉄道マニアに温かい目を

時刻表と格闘して導いた新幹線ワープをつかう旅程のおかげで,鳴子温泉の宿で朝ゆっくり過ごせたし,乗り継ぎ時間を持て余すことなく,一ノ関でおいしいランチを食べ,北上までゆくことができた。18きっぷ旅中の新幹線の車窓は新鮮で面白かったし,一ノ関でたべたソースカツ丼もおいしかった。そして何より,じぶんで考えた旅程を実行できたのが,いちばんたのしかった。

鉄道マニアは,時刻表を繰って旅程を思案することを,鉄道旅の楽しみとしている。もはや,それがメインディッシュの1つと言っても過言ではない。途中の地点でののりつぎ待ちで,グルメや観光名所をみることもあるが,それは副次的な楽しみでしかない。それらを主目的とする一般人からすると,その楽しみは理解しがたいものかもしれない。これが,一般人にとって,鉄道マニアがとっつきにくい存在である理由だとも考えられる。

鉄道マニアは,端から見ればかなりとっつきづらいが,実は彼らと付き合うメリットもある。それはやや面倒な予定や旅行の計画を組むときに,実は彼らは,ゆとりや合理性を十分に考慮した予定を立てられるということだ。このことは公共交通に不慣れな一般の旅行者にとっては非常にありがたいと言える。旅程に困ったら,鉄道マニアをつかまえて,出発地:目的地:時間・経由地を教えてあげよう。そうすれば彼らは,嬉々として旅程を立ててくれるに違いない。

(つづく)

  1. ちなみに博士研究は,実験で得た結果を理論によって解釈する研究です。基本は実験屋さんですね。 ↩︎
  2. これは,いずれのルートの途中駅(くりこま高原・水沢江刺)も,新幹線単独駅で,在来線と乗り継げないことが理由と考えられる。 ↩︎
  3. 参考:新幹線(のぞみ&やまびこ)を乗り継いで名古屋から仙台へ ↩︎
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