To Tokushima by trains

学会で徳島へいってきた。3泊4日での出張で,初日は移動日で前泊,講演は3日目だった。40Lのザックに空きがあったのと,4日も滞在するとさすがにひまになるだろうと思って,ザックにK-3 Markiii+(FA31 Limited)を入れて出かけた。名古屋から徳島へとむかうには,神戸まで新幹線でそこからバスにのりかえる,というのが最短かつ最安のルート1だ。ただ,今回の学会へは,研究室メンバ皆でいくことが考慮され(?),先生のひとこえで,鉄路での往復となった。この記事には,鉄路での移動日にとった写真をまとめた。

名古屋→徳島へといたる鉄道ルートは,名古屋→(新幹線)→岡山→(快速マリンライナー)→高松→(高徳線特急「うずしお」)→徳島,となる。第一走者:名古屋から大阪方面へ下る「のぞみ」からの車窓には,もうすっかり見慣れてしまった。けれど,伊吹山に対してだけは,いまだにカメラをむけ,シャッタを切りたくなる。とくに冬場の伊吹山は,山頂付近に雪を抱いていることが多く,雲がかかっていなければ,写真のような絶景をみられる。

カスタムイメージ「里び」で現像。

伊吹山の写真を,カメラ内現像しているあいだに,米原をすぎ,京都についた。ホーム上には外国人がいっぱいいた。ウトウトしていたら新大阪,トンネルぬければ新神戸。またトンネルで,あっというまに姫路。そろそろだなあ,と思ったら岡山だ。岡山についたら,「のぞみ」を降りて,「快速 マリンライナー」で瀬戸大橋を渡り,高松へ。瀬戸大橋区間は,帰省でもう何十回もとおったので,特に写真は撮っていない。高松では,途中下車してうどんを食べた。

うどん屋から高松に戻ると,高徳線特急「うずしお」に乗り継いだ。高松駅で待っていたのは,たったの2両編成の「うずしお」だ。しかし,編成が短いとはいえ,「うずしお」は,1日に15往復以上も走っている。1編成の定員は少ないが,そのぶん本数をふやして利便性を確保しているのだろう。

いかにも速そうな面構えとムダのないデザイン,そして淡いグレーと赤色のカラーリングから,個人的にはもっとも好きな特急型気動車の1つだ。金色の帯も,高級感があって,締まりが出ていて,カッコいい。

ちなみに,JR四国には,この2600系の兄弟車両として,非常によく似た外観の「2700系」も走っている。2600系が先に製造された「兄貴分」で,2700系は,その後継として製造された,いわば「弟分」だ。

兄貴分の2600系は,「うずしお」として,高松=徳島間の高徳線区間輸送のみを担っている。対して弟(2700系)は,「うずしお」としてはもちろん,JR四国の看板特急である「南風なんぷう」として,岡山=高知間をむすぶ土讃線でも活躍している。このように,兄弟でも,活躍の具合には差がある(これについて,工学的におもしろく,かつ,有名な逸話2がある)。

徳島についたら,駅横のホテルにチェックイン。11階の角部屋で,吉野川まで見渡せるくらい,展望のいい部屋だった。それで,思わず撮ったのが,この一枚だ。

右手奥にみえている川が吉野川。左手奥にみえているのは,香川県と徳島県との間を東西にのびる「讃岐山脈」の東端だろうか。

夕食後に,徳島駅周辺をさんぽした。

徳島といえば,「日本で唯一,電車が走っていない都道府県」として有名3。したがって徳島県民は,鉄道のことを「汽車」というらしい4。他県民(とくに都会)からすると,冗談めかした話だが,これは本当だ。

ちょうど,駅前で信号待ちをしていたとき,女子高生(と思しき)2人組が,「汽車でかえるん?」と,ごく自然に会話していたのが聞こえた。これだけ若い人も「汽車」というのだから,上記のうわさに間違いはない。

そういうわけで,徳島駅に隣接する「徳島運転所」には,架線(き電=電車に電気を供給する線)が張られていない。その下で気動車たちが,ごうごうとディーゼルエンジンをアイドリングさせていた。気動車王国を象徴する風景だ。写真奥にみえているのは,徳島中央公園内の城山で,徳島城跡がある。

徳島駅前には,複合商業施設と,飲食店がつらなる通りが延びている。特徴的なのは,駅前のロータリーを埋め尽くすように,バス発着所が設けられている点。徳島市内が車社会であることをものがたっているかのような景色だった。

カスタムイメージ「クロスプロセス」で現像。
カスタムイメージ「クロスプロセス」で現像。

さて,こんなふうにして,気のむくままに撮った写真をならべてきたが,この日の朝まで,一眼レフをわざわざザックに入れてもっていくかどうかで逡巡した。出張にかぎらず,でかけるときの荷づくりでは,「つかうかどうかわからないものは,(すくなくとも国内では)いらない」として,もっていかないようこころがけている。そうやって荷物をへらすことが,ザックをかるくし,ひいては,移動をラクにするからだ。

これに対して,出張における一眼レフは,「いる・いらない」の当落線上にあるものだ。暇つぶしには絶好の「遊び道具」だけども,出張の本来の用事にかかせないわけではない。したがって,出張でカメラをもっていくかどうかは,いつも迷う。

だけど,(今回の徳島をふくむ)最近の出張で,ちょっとだけザックが重くなるのに目をつぶり,じぶんをあまやかしてカメラをもっていくと,これがなかなか「いい暇つぶし」になることがわかった。ぼんやりみすごしてしまう景色を,それなりに,あるいは,じっくりとあじわうようになる。さんぽもはかどる。ホテルでやることがなく,悶々とすることがすくなくなる。出張の本来の目的は学会なんだけれども,ちがう場所へいって,ちがう雰囲気にあたり,その場所の空気を味わう,これを通じて,せかせかした日常を忘れて,気分転換する,そういうことも,じつは学会出張の大真面目な目的といえるかもしれない。否,それこそがほんとうの目的だったりするのだろう。そう考えれば,一眼レフは,出張において「つかうかどうかわからない」ではなくて,「積極的に使っていきたい遊び道具」であると,むねをはって言える。

こうして,学会前日の移動日をおえた。大会初日・2日目とも天気はよさそうだし,いくつか講演を聴講したら,カメラをたずさえて,さんぽに出よう。そう思って,ホテルにもどった。

(つづく)

  1. 参考として,「Yahoo!のりかえ」で名古屋→徳島のルートを検索すると,新幹線で新大阪or西明石までむかったあと,在来線で舞子駅までのりつぎ,高速舞子から徳島までバスにのる,というものが提案されます。 ↩︎
  2. 先行開発された2600系の「空気ばね式車体傾斜装置」では,土讃線の連続カーブを曲がり切るための空気量に懸念があり,後継の2700系では「制御付き振り子装置」を採用した,というもの。土讃線は,最近主流の車体傾斜装置では,曲がり切れないほど,険しい路線というわけだ。詳しくは東洋経済オンラインの「JR四国特急、「振子式」脱却阻んだ過酷なカーブ最近の主流「車体傾斜式」には限界があった」をどうぞ。 ↩︎
  3. 沖縄県は?と思われる方,沖縄には「ゆいレール」(モノレール)がありますよ。 ↩︎
  4. 同じ四国,たとえば松山でも,電化される前,あるいは,気動車が主役だった時代の(年配の)方は,国鉄のことを「汽車」と呼びますね(私の母がそうでした) ↩︎
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