プロの絵作りが手の中に!色味は完全ランダムです。
PENTAXの「クロスプロセス」
カスタムイメージ(カメラ内現像)との出会い
いままでは,Lightroomに毎月1,000円払って,RAW撮りした画像をLightroomでJPEGに現像するというフローで写真を楽しんできた。LightroomのRAW画像に対するレタッチ力は相当高い。だから,現像して出てくる写真には,十分満足していた。
ただ最近,Lightroomで現像すると,どんな写真も「Lightroom」っぽい写真になってしまうと,感じるようになってきた。Lightroomを通すと,せっかく,PENTAXのカメラで味付けされた風景が,その素材の味を生かせないままになっているように見えてくるのだ。
一方,PENTAX機の「カメラ内現像(RAW展開)」については,そういう機能があることは知っていたけれど,ほとんど使ってこなかった。そういう状況で出会ったのが,こちらの,PENTAXIANの素敵な写真ブログだ。
ここでは,PENTAXのRAW画像が,「カメラ内現像」によって作品に仕上げられている。ここで随所に使われている「カスタムイメージ」が,PENTAXが描き出す色を存分に生かしている。カメラ内現像,なかなかよさそうだな・・・
そう思って,この間の仙台・松島旅行で撮ったスナップを,カメラ内現像してみた。PENTAXの一眼レフでは,カメラ内現像にて「カスタムイメージ」を使えるので,それも併せて試してみた。
この「カスタムイメージ」がなかなか楽しかったので,こんな記事を書いた。意外とお手軽な割に,出てくる絵が面白いのだ。ここでは特に,「クロスプロセス」をつかって現像してみた写真を紹介する。
凡庸な写真がノスタルジックに
これは,仙台から名古屋へ帰る際,東京駅で「やまびこ」から「のぞみ」へのりかえて,出発を待つ間に撮った写真。列車を待つホームを,望遠レンズで切り取ってみた。
個人的には,こういう構造物の多い,ごちゃっとした風景を,望遠レンズで圧縮して押し込む構図がお気に入り。自分では満足している(これは写真趣味に重要)のだが,「凡庸」な写真でもある。
これを,PENTAX K-30にて,「カスタムイメージ」として「クロスプロセス」を選択して,カメラ内現像(RAW展開)したのが,次の3枚だ。「クロスプロセス」という名の通り,カメラが出してくる絵(色味)は完全にランダムだった。そのなかで,いいなと思った写真をピックアップしてみた。
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1枚目は,ブルー系でちょっとローキーな写真。
鉄骨やホームドアのつめたさや,屋根で遮られたホーム上の薄暗さが,よく再現できている。よく見ると,東海道新幹線のホーム(右側)と,東北新幹線のホーム(左側)で,雰囲気が違うのもわかる。
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2枚目は,同じく暗めだけど,色味が黄色っぽい写真。セピア色とも呼ぶのかな?
さっきのブルー系とは違って,ちょっとノスタルジックで,列車の来ないホームのそわそわ感と静寂とが感じられる。
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3枚目は,2枚目と同じような色味で,ハイキーな写真。
ハイキーになったことで,フィルムカメラで撮ったらこんな感じの写真が出てくるんだろうな~,という写真になった。親の実家に,こんな色味の写真がたくさんあったような気がする。左上に映り込んでいるビルの白壁は,さっきよりぐっと影が薄くなって,ホームの存在感が際立っている。
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いままでこういった凡庸な写真を量産して来たけど,クロスプロセスを通すと,それが凡庸でなくなり,どこかノスタルジックでエモーショナル(今風に書くと「エモい」)写真が出てくるから不思議だ。
駅,街並み,要素が多い写真にいいかも
ほかにも,「クロスプロセス」の現像がぴったり来た写真があったので,ピックアップ。
東京から仙台へと北上する東北新幹線「やまびこ」の車内から撮影した車窓の写真だ。
カメラを手にして列車に乗り込んで,どうしてもやることがないとき,ちょっと綺麗な車窓,綺麗でなくても印象に残る車窓があると,ついついシャッターを切ってしまう。
眺めているときは面白くて,シャッターを切るたびに違う写真になる。そういうわけだから,撮っていて楽しいのだけれど,旅の帰りに見返すと,そうでもない。「凡庸だなあ」と感じられることもしょっちゅうある。
この写真を「クロスプロセス」でカメラ内現像したのが,次の写真だ。
さっきの東京駅ホームの写真とは違って,マゼンタっぽい色味の写真が出てきた。
ほんとうに何でもない風景なんだけど,この色味になると,なかなかいい写真なような気がする。
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同じ区間で,もう一枚シャッタ―を切った。
雲の形や山の形はさっきと近いけれど,新幹線は200 km/h以上で走っているもんだから,街並みは変わっている。
住宅,ホームセンターのある街区のそばを,乗用車が行き交う風景。
これも,さっきと同じように,マゼンタ系の色味がつくことで,いい写真になった。
さっきはローキーだったけど,こんどはちょっとハイキー気味な写真に仕上がった。自分はコントラスト強めなローキーの写真が好みのようだけど,こういう写真も,ノスタルジックでなかなかいいなと思った。
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こうやってカメラ内現像をやってきて,「クロスプロセス」は,都市,駅といった,比較的ごちゃついた,要素の多い写真に充てると,特にぴったり来た。
ちゃんとした使いこなしはオフィシャルサイトをどうぞ
「クロスプロセス」について答え合わせをすると,フィルム現像手法の1つらしい。公式によると,”「偶然性」を楽しむ”というコンセプトも込められているようだ。たしかに,一枚一枚色味がガラッと変わるのは,どんな写真でも綺麗に,悪く言えば同じように仕上がるLightroomのAI現像技術とは,真逆のシステムだ。
フィルムの現像手法のひとつである「クロスプロセス」のように、独特の色やコントラスト表現を行うカスタムイメージ。初期設定では毎回仕上げのパラメーターが変わるようになっており、デジタル画像でありながら「フィルムのような偶然性」を楽しめます。
(中略)
撮影ごとの仕上がりを統一したい場合には3つの効果が用意されたプリセットから選択することもできます。さらに、すでに「クロスプロセス」で撮影された画像からお好みの色合いの効果のものをお気に入りとして3つまで登録し、いつでも呼び出すことが可能です。
もっと自分を表現しよう。PENTAXの「カスタムイメージ」 | RICOH IMAGING
AIの発達で,「ああすれば,こうなる」っていうのが割とあたりまえに実現できるようになったからこそ,逆にこういうランダム性が面白く感じられるのかもしれない。
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この,PENTAXのカスタムイメージ「クロスプロセス」の使いこなしについては,Official Citeにある以下の記事もわかりやすい。
上記記事によると,「クロスプロセス」が出す絵は,ほんとうにランダムだから,好きな色味・コントラストが出てきたら,お気に入りに登録するのがいいみたい。
だけど,この記事で紹介したように,マゼンタ系もいいし,セピア色もしっくりくるし,かと思えばシアンっぽい色味も好き。お気に入り登録するには,まだまだ現像機会が足りない。「食わず嫌い」だった「クロスプロセス」の魅力がわかってしまったので,これからはどんどん,カメラ内現像を活用していくつもりだ。
(おわり)