
前回の続き。快速「はこだてライナー」が運休になってしまったため,帰りの新幹線は1本遅らせることにしたのだった。
前回の記事 特急北斗9号【出張記#6】
新函館北斗駅にて1時間30分ほど待ってから,ようやく,目当ての新幹線が入線してきた。新函館北斗から上り列車は,東北新幹線の各駅とくらべると本数が少ない。時間帯によっては,このように1時間以上待つこともある。
新函館北斗から乗車するのは「はやぶさ24号」東京ゆき。新函館北斗12時48分発→東京17時04分着。
正午すぎに出発する列車ということで,午前中に函館でゆっくりしてから乗車するのにちょうどいい。平日だが夏休み期間ということで,旅行客が大半を占めていたように思う。
*
ホームへ降りると,待っていたのはH5系新幹線だった。これは珍しい。内装・外観ともE5系とほとんど同様なのだが,本数が少ないために,当たるとなんだか嬉しい。

E5系とH5系の主たる外観上のちがいは2つ。1つは帯が紫色であること,そしてもう1つは,車体側面のマークが北海道をモチーフにしたものになっていることだ。また,JR北海道所属の車両なので,マーク下には「JR HOKKAIDO RAILWAY COMPANY」とかかれている。

さて,帰りの座席は,普通車指定席ではなく...グリーン車を奮発した。以下はえきねっとの予約画面。函館から新函館北斗にくるまでの「北斗」の車内で,グリーン車に買い替えるかどうか,とても迷った。

グリーン車を買う決断を後押しした動機は2つある。
1つは,普通車指定席がほぼ満席になっていたことだ。
この日も,道南地方の大雨により,在来線のダイヤが乱れていた。上下線ともに,遅れていたので,1つ前の新幹線へ乗り遅れたひとが多数いたようだった。私も例外でない。彼らが一斉に,乗車変更したために,「はやぶさ24号」が満席状態となっていた。私が函館で予約を変更した時点では,3列掛けの通路側しか空いていなかった。
東京までは4時間以上かかる。3列掛けの指定席通路側でも我慢できないことはないが,前日に7時間も新幹線に乗っていたし,夜も遅くまで用事があった。せめて帰りくらいはゆっくりしたい...そう考えて,グリーン車をとることを考え始めたのだった。えきねっとでシートマップをみてみると,幸いにして,グリーン車の窓側に2つか3つ空席があった。
ただ,「普通車が混んでいる」という動機だけではまだ,グリーン車を買うほどの強い動機づけにはならなかった。
もう1つの理由は,前日の新幹線特急料金の払い戻しが確定していたことだ。
前回の出張記に書いたように,東京から新函館北斗までの新幹線が3時間以上遅れて到着した。JRの規則では,原則として,特急列車や新幹線が2時間以上遅れた場合には,特急料金が払い戻しとなる。
予約には,「えきねっと」の新幹線eチケットサービスを利用していた。そのため,払い戻しは後日だったが,それでも,東京~新函館北斗間の特急券部分(11,530円)は「タダ」になることが確定していた。
この区間を「えきねっと」で買うと,
- 23,560円(普通車指定席)
- 32,430円(グリーン車指定席)
で,差額は8,870円だ。すなわち,払い戻し額がグリーン車へのグレードアップ差額を上回っていた。
ということで,はじめて東北新幹線のグリーン車へ乗ることに決めた。はじめて乗客として9号車の前に立った。緑色のグリーン車マークは,車体の色からしてやや目立たないものの,ワクワクすることに変わりはない。

ただし,これが最高ランクの座席ではないことも付言しておく。9号車のもう1つ後ろには,10号車:グランクラスが連結されている。グリーン車が「ビジネスクラス」だとすると,グランクラスは「ファーストクラス」だ。この9号車と10号車との間には,もう1つの見えない「壁」があるわけだ。

新幹線のグリーン車は,去年の夏に東海道新幹線「こだま」で乗車してから2回目だった。
感想としては,やっぱり快適だった。
だけで終わるのももったいないので,少しだけ具体的なことも書いておく。
E5系/H5系のグリーン車には,フットレストがついておらず,代わりにレッグレストが装備されていた。フットレストは,前の座席の背面足元についていて,足の裏を乗せることができるもの。一方のレッグレストは,マッサージチェアと同じように,座面の下についている。これを展開すると,ひざ下からふくらはぎを支えてくれる。東海道新幹線N700系列のグリーン車には,フットレストがついていたので,この点に大きな違いがあるといえる。
関連記事「こだま」グリーン車 乗車記|東京→名古屋|夏の東北鉄道旅(番外編)
フットレストがいいかレッグレストがいいかは好みが分かれるところではあると思う。個人的には,N700系のグリーン車にあるフットレストの方が好みではある。ただ,H5系のレッグレスト方式も悪くなかった。特に,ぼんやり車窓を眺めたり,本を読んだりするには快適だった。移動するリビングで過ごしているような錯覚に陥るくらい,落ち着いて過ごせた。
そのほかの装備は,おおむね東海道新幹線N700系列と同様だったと思う。車内の雰囲気も,普通車と比べるとずいぶん落ち着いていた。4時間以上座っていくからには,これくらい静かな方が,気持ちも休まるし,身体の疲れも少ないと思った。
とはいえ,新青森からは,隣の座席にもお客さんが乗って来た。このお客さんは,どうやら普通席が満席だったために,やむを得ずグリーン車に乗って来たようだった。ほかにもこういうお客さんはいたように推測される。したがって,グリーン車の真の実力(空気感)を味わえたかというと微妙なところだったかもしれない。でもまあ,東海道新幹線と同じように,いい勉強になった。恒常的にグリーン車に乗っているひとは,やっぱり余裕というか落ち着きあるひとが多いと思った。
*
終点の東京には,定刻通り到着した。4時間はさすがに長かったが,行きで7時間もかかったので,定刻通り着いたことがものすごくありがたく感じられた。
東京からの帰路では,在来線普通列車グリーン車に乗車した。ちょうど帰宅ラッシュの時間で,普通車ではまず座れなかったからだ。在来線のグリーン車は,新幹線のそれと比べるとずいぶんチープだ。それでも,座って行けるし,車内はとても静かだ。隣に乗客はいても,平屋席なので,合計で10人も乗っていない。終点が近くなると,ガラガラになった。
グリーン車(というか優等座席)への追加料金は,座席の快適さに対する価値だけでなくて,車内の静けさや落ち着きを買うためのものなのだ,と改めてわかった。
(おわり)
関連記事 中央線ガラガラグリーン車で行く奥多摩
関連記事 【静寂を買う】通勤ラッシュが嫌すぎてグリーン車課金する新入社員
関連記事 特急「しなの」パノラマグリーン1A席乗車記|中津川→塩尻|信州鉄道旅(1)
✉ メルマガも配信中
➡ ブログトップページはこちら