「ぐるっと九州きっぷ」の旅3日目。
豊肥本線の普通列車をのりついで,大分から熊本までもどってきた。昼頃大分を出発したのだが,熊本についたのは18時すぎだった。この旅もいよいよおしまい,ということで,「ぐるっと九州きっぷ」の特典をつかって,新幹線「つばめ」と特急「ソニック」をのりついで北九州へとむかった。
「ぐるっと九州きっぷ」で新幹線/特急に乗ろう
「ぐるっと九州きっぷ」の有効期間は,今日でおしまい。翌朝には大学への帰路につくから,この日のうちに北九州あたりまでもどっておくことを考えていた。
熊本駅に降り立った時点で,時刻は18時過ぎ。ここからさらに,鹿児島本線の普通列車をのりついで北上することもできるが,そうすると北九州へつくのは21時以降になるとわかった。ホテルにつくのが遅くなると,翌朝,さらには,午後の大学の予定にも影響する。
いっぽう,熊本から九州新幹線にのれば,博多までわずか1時間足らずで到着できる。そして,「ぐるっと九州きっぷ」は,特急券を買えば,特急や新幹線の普通車自由席に乗車できる。こういう状況だったから,旅の最後は,優等列車をのりついで終えることにした。
なお,博多から先の新幹線区間:博多~小倉については,九州島内を走っているものの,JR九州の管轄線ではない(JR西日本)ため,「ぐるっと九州きっぷ」では乗車できない。したがって,博多から先は,特急「ソニック」に乗り継いでいくことにした。
第1走者:800系「つばめ」|熊本→博多
時刻表を繰ってのりつぎ列車を決めた。熊本駅のマルスで,
・博多までの新幹線特急券
・小倉までの自由席B特急券
を手早く購入。豊後竹田駅を出てから何も食べておらず,空腹だったので,コンコースにあるコンビニで飲み物と「黒糖ドーナツ棒」を買ってから,新幹線ホームへと上がった。
九州でしか乗れない800系新幹線
発車数分前だったが,すでに乗車する新幹線が入線していた。
5330A 「つばめ330号」
熊本1820 >>> 博多 1909
熊本始発の列車で,800系新幹線が充当されていた。800系新幹線といえば,九州新幹線が新八代から鹿児島中央まで部分開業した当初に投入された車両で,JR九州が自社で所有するはじめての新幹線車両だ。
800系新幹線は,かもめのような白いボディと顔が特徴。側面には,部分開業当初の愛称である「つばめ」をあしらったロゴがある。白いボディに金色のロゴが映える。
800系といえば,JR九州車ではおなじみの水戸岡鋭治 氏がデザインを手がけたことでも有名。東海道山陽新幹線の車両とは異なり,こだわった内装と随所にあしらわれたデザイン・装飾が美しい。
自由席車内も,温かみのある照明と,木製・ハイバックの座席背面が,リラックスできる雰囲気を演出していた。ビジネス第一の東海道系列車両とは,一線を画している。
「さくら」「みずほ」を補間する「つばめ」
そんな800系は,おもに九州島内完結の「つばめ」,もしくは「さくら」に充当されている。基本的に,博多より東へは入らないので,「九州でしか乗れない新幹線」の1つである。
「つばめ」は,山陽直通の「さくら」や「みずほ」とは異なり,九州島内の各駅に停車する。東海道山陽新幹線の「こだま」と同じだ。
そういうわけで,自由席車両に乗り込むと,乗客はまばら。つばめ330号は,熊本駅で,「さくら570号」と接続するダイヤをとっていた。新鳥栖や博多まで急ぐ乗客の多くは,1本前の「さくら570号」に乗車するだろう。
したがって,この列車の利用層は,主として,新玉名・新大牟田・筑後船小屋・久留米の各駅へむかう乗客や,そこから乗車して博多方面へとむかう乗客だと思われた。
実際,各駅に停車すると,休日出勤のサラリーマンや,これから街へと出かけるのであろう親子連れやシングルがパラパラと乗車してきていた。それでも,自由席車内の乗車率は2割から3割といったところ。慢性的に混雑している山陽直通の「さくら」や「みずほ」と比べると,かなり空いている。
もしかしたら,熊本から博多までむかう乗客でも,「さくら」や「みずほ」でなくて,「つばめ」に乗車する客も多いかもしれない。所要時間も10分しか変わらないし,空いているのだから,急いでいない限り,こちらでも十分だ。
N700系に乗り慣れていると新鮮
暮れなずむ九州の夕焼けをぼんやりと眺めていると,だんだんと福岡の街並みが近づいてきて,建築物の密度が増してきた。もうすっかり暗くなったと思ったところで,終点の博多に到着。
JR九州の「首都」である博多駅だが,新幹線ホームの管轄はJR西日本ということで,800系新幹線はいちばん端っこの番線へと入線した。
乗車したときには気づかなかったが,トップナンバー(U001)編成だった。新幹線といえば,N700系ばかりであるから,こういうほかの車両に乗ると面白い。そして,800系はかっこいい。白いボディに,華美すぎない,さりげない「つばめ」のデザインが魅力的だ。
これから車庫へ引き上げる800系を見送り,コンコースへ降りたら,のりつぎ改札を通って在来線ホームへと移動した。
第2走者:883系「ソニック」|博多→黒崎
博多からの第2走者は,特急「ソニック」だ。「つばめ303号」からの接続列車は,ソニック51号大分ゆき。
3051M ソニック51号大分ゆき
博多 1920 >>> 黒崎 2001
メタリックブルーの振り子特急883系
駅そばならぬ「駅豚骨ラーメン」の濃厚な香りと,帰宅するサラリーマン・おでかけ客の熱気がただようホームに,メタリックブルーの883系が停車していた。ここから,鹿児島本線を小倉までのぼり,こんどは日豊本線を大分まで下ってゆく。終点の大分には21時45分に到着する列車だ。
883系といえば,上述のメタリックブルーはもちろん,戦闘機のような顔つきに,交流電車初の振り子式特急と,コンテンツには事欠かない特急電車だ。小学生時代に図鑑で見てから,ずっと乗りたいと思ってきたが,なかなか乗車する機会がなかったわけだが,ようやく乗車するに至った。
ただ,すでに日はとっぷりと暮れており,慌ただしいのりつぎでもあったため,車両を車外からゆっくりと観察することはできなかった。自由席車内も,帰宅する乗客で埋まってきており,自分もとにかく空席を求めて先頭車まで行った。7号車の窓側座席に腰掛けると,その後も次々と乗車があり,博多出発時点で,自由席号車の窓側はほとんど埋まった。通路側にも乗車があり,乗車率は50%を超えていた。
博多を出てしばらくは,北九州へと連なる郊外を走る。線形はいいが,たまに現れるカーブも,振り子でガンガンかっ飛ばす。
この車,外装はもちろん,内装もかなりこだわった造りになっている。さっきの800系と同じく,水戸岡鋭治 氏のデザイン(いわゆる「水戸岡デザイン」)だ。座席周りは,あまり国内ではみかけないデザインになっている。欧州の車両には乗ったことないが,おそらくこういう感じなのだろうと推察される。
ただ,登場から年数の経過を経て,斬新なスタイルにも,陳腐化の波が押し寄せていた。見た目は新しいけど,車両はそれなりに使用感をともなっていたのが,印象にのこっている。最近は走りのおとなしい車両が多いから,ガタガタ揺れながら振り子で走るこの車に対して,そういう印象を抱いたのかもしれない。
黒崎に宿を発見し,下車することに
「ソニック」は福間,赤間,折尾と,北九州地区の主要駅に停車する。
もうすっかり日没しており,車窓はほとんど楽しめない。この暇をつかって,今晩の宿をあらためて探した。この日は春分の日で,北九州・博多地区のホテル空室が少なく,あったとしても数万円の部屋しかなかった。予約アプリで検索すると,この先,帰路上の小倉にはまったく宿がなく,手頃な価格(5千円~6千円)の宿となると,本州へと進み,山口県・徳山あたりまで戻らないと,空いていなかった。
ということで,「ソニック」に乗車する時点で,徳山駅前のホテルを予約しておいた。したがって,「ソニック」で小倉までゆき,ここで「ぐるっと九州きっぷ」の利用をおえ,山陽新幹線にのりつぐことを考えていた。
しかし,どうせ翌日新幹線で名古屋までいくんだったら,小倉~名古屋の特急券は一括で買ってしまったほうがいい。そう考えると,やっぱり小倉か,そうでなくてもその近くの宿に泊まりたい。
そう思ってもう少し探してみると,ちょうどこの先,黒崎駅近くに,1部屋空室を見つけられた。すかさず予約完了。徳山の宿をキャンセルし,「ソニック」を黒崎で降りることにした。
小倉でも黒崎でも特急料金は同じ
熊本で買った乗車券は,自由席B特急券で,博多→小倉の区間で発券した。これを,2つ手前の黒崎で下車するわけだから,通常であれば黒崎→小倉のぶんは無駄になってしまうように思えた。
で,Yahoo!のりかえアプリで調べてみると,博多→小倉(67.2 km)と,博多→黒崎(53.3 km)では,自由席料金が600円で同じだった。乗車距離の区分によらず,博多⇔小倉間でのりおりする場合は,自由席は600円で定額1であることがわかった。このことは,博多小倉間では,通勤・通学をはじめとして,短区間での利用が多いことを示唆している。
そういうわけで,なんだか得した気分になった私は,安心して黒崎駅で下車した。暗闇のなかへと走り去ってゆく883系を見送って,改札を出た。
こんどは,明るいときに乗りに来て,しっかり日豊本線まで乗りとおそう。そう思いながら,ギリギリで予約したホテルへとむかった。
まとめ:強靱な九州アーバンネットワーク
今回は,「ぐるっと九州きっぷ」の特急券特典を活用して,新幹線「つばめ」と特急「ソニック」をのりついでみた。
J熊本→博多→黒崎(北九州)という,いわば九州島内の背骨の一角で,屋台骨を支える区間に乗車したわけだが,JR九州は,ここに優等列車・区間列車を,十分な本数走らせることで,アーバンネットワークをしっかり確立させていることがわかった。
JR九州といえば,不動産事業をはじめとした鉄道事業で稼いでいることがよく知られているが,鉄道事業に手抜かりや落ち度はまったくなく,むしろ利用客に対して丁寧で利便性の高いサービスを提供しているように感じられた。
ふだんは,幹線の優等列車をのりとおすことが多いからこそ,今回のように,優等列車を(地元客と同じく)区間利用することで,利便性の高さを実感できた。
*
これで「ぐるっと九州きっぷ」の旅はおわり。まだ,九州には,乗り残している区間・列車が多いので,機会をつくってふたたび乗りに来ようと思う。
(おわり)
【18きっぷ旅】指宿枕崎線で日本最南端とJR南の終点・枕崎をめざす【2019春九州自転車旅番外編】
- 九州旅客鉄道株式会社:「大切なお知らせ | 「在来線特急料金の見直し」のご案内」,URL: https://www.jrkyushu.co.jp/railway/ticket/rule/03/img/2022trainticket_index.html (Access: 2024.6.22) ↩︎