今シーズンの18きっぷ旅最大の目的
「越美北線」
福井県の福井駅から越前大野を経由して,九頭竜湖まで延びる盲腸線.
かつては越美南線(現在は長良川鉄道)まで延伸させて「越美線」とする計画だったが,結局延伸は頓挫して
越美北線の線路は,九頭竜湖駅にて寂しく単線が行き止まりとなっている.
そんな秘境路線とも呼ぶべき,越美北線に乗ってきた.
真夏の鉄道旅.
越美北線|福井~九頭竜湖
未成線の越美北線
越美の「越」は越前花堂(福井駅のひとつ手前),「美」は美濃太田(岐阜県)からそれぞれ取っていることからも
開業当時の思惑が読み取られる.
越美北線の終点・九頭竜湖駅と,越美南線の終点・北濃駅(現在は長良川鉄道越美南線)とを繋ぐ計画は,結局頓挫,思惑通りにはいかなかった.
もし実現していれば,岐阜から福井まで高山本線・北陸本線とともに3つ目の鉄路アクセスとなっていたかも知れない.
越美北線はそういう路線.
だから福井から越前花堂へ行き,そこから分岐した後はほとんど単線.
いわゆる”盲腸線”で,越前大野駅から先は本数が少ない(1日4本程度)ため今でも「非自動閉塞式」が使われている.
出発は福井駅から
越美北線の愛称,“九頭竜線”の案内がある福井駅2番線ホームへ.
出発までまだ数十分ある.
1番線には金沢行きのサンダーバードが入線.
サンダーバードかっこいいなあ...
金沢駅の接近放送も素晴らしい(神メロ)
このサンダーバードの写真をホテルで見直して,「かっこいいなあ乗りたいなあ」と思って翌日サンダーバードに乗ることにした.
サンダーバードが出発してしばらくすると,2番線に短い列車がやってきた.
ディーゼルカー,1両編成赤色の列車だ.
この列車が
普通九頭竜湖行
越美北線 福井1250=九頭竜湖1420
福井から九頭竜湖まで走る1日4本のうちの1本の貴重な列車だ.
朱塗りの車体に,金色のラッピング
“ECHIZEN ONO CITY”の文字.
越美北線最大の駅は越前大野駅.
車内は18きっぷなど観光客よりも地元客の方が多い.
運転手が出発の笛を歯切れ良く2番線に響かせて,出発.
使用車両はキハ120.ローカル線とはいっても,キハ120は高性能車両.福井をでると勢いよく加速していく.
のんびり単線の車窓
越前花堂(はなんどう)を出発すると,
本線から南へ逸れるように越美北線に入る.
すぐに車窓には北陸らしい田園風景.
緑が多い車窓は美しい.日本の夏だ.
越前東郷駅にて多くの地元客が乗降.
越前大野方面へ,キハ120はエンジンを唸らせてゴトゴトと単線を進む.
一乗谷駅.進む毎に山が深くなってゆく.
時折大きな警笛を運転手が鳴らす.
田んぼの緑,山の緑.空の青.
心が洗われる風景.
越前薬師駅.越前○○駅が多い.
ローカル線にしてはトンネルが少ない路線だ.
山がちなところ,ではなく平野部から山へ差し掛かるところで路線が終わるから当然と言えば当然かもしれない.
ずーっと向こうにポツポツと市街地が見える.
途中にいくつも駅があるけど,ほとんどの駅は待避不可能な棒線駅.
どの駅も簡易的な駅舎ばかり.
しばらく田園の中を走り続け,市街が見え始めると大野に入る.
北大野駅で多くの乗客が降り,
福井駅から1時間かからず主要駅・越前大野駅に到着.ここでほとんどの地元客が下車.
車内は観光客ばかり7人のみ.
スタフを持っていざ九頭竜へ
越前大野駅から先には交換可能な駅がひとつもない.したがって,ここから先の区間は
1列車しか進入できない.こういう区間を「閉塞」と呼ぶ.最近JRではほとんど見かけなくなった「非自動閉塞式」が採用されている.1日数本しか列車がないから,この方が効率的なのだろう.
運転席にあるスタフ.これが通行証となり,持っている列車のみ閉塞に侵入できる.
大野駅には2分の停車ですぐ出発.
ここから先はずっと単線,
大野からしばらくはまだ,民家やまちが見られる.
線路には草が生えている.運行頻度が高くないからだろう,列車は縦横にゴトンゴトンと揺れる.
柿ヶ島あたりまで来るとめっきり民家が減る.
勝原駅手前,徐行で赤い鉄橋に差し掛かった.
そして左側に見える渓谷.
これは九頭竜川だ.この先の九頭竜湖から流れ出ている.
荒島トンネルに入った.このトンネルは長かった.
地図を見ると荒島岳を直線的にぶち抜いている.
このトンネルによって結構な距離を短絡している.
トンネルを出るとすぐに越前下山駅.
ここには地元の男の人3人が,清掃道具らしきものを持って駅のホームに立っていた.乗ってくるのかな?と思ったけど,運転士に挨拶を交わしただけでそのままホームにいた.地元民の協力あっての越美北線なのだろう.駅舎に掲げられていた「乗って残そう,越美北線」の文字が,越美北線の衰退を物語っている.
越前大野駅から数分で終点の九頭竜湖駅に到着する.
終着駅なのに棒線.
寂しげなホームに向かってゆっくりと列車は滑り込んでいき,停車.
18きっぷを見せて下車する.
山の中の九頭竜湖駅
自分の他に乗っていたのはみな観光客だった.今下車した人の中に地元の利用客はいないということだ.
そんな九頭竜湖駅.駅舎自体は木造の立派な造りだ.
ほのかに木の香りが漂う駅舎中には,寂しい時刻表が.
1日5本…大野方面から来た列車は10分少々で折り返すから,
ここで下車して散策するとなると次の列車は18時33分,4時間後だ...
駅隣には道の駅があって,ここにも福井名物の恐竜がいた.
スゴくリアルだ.デカいし.
道の駅から停車中の列車を撮影.
背後の山は先ほど抜けてきた荒尾岳だろうか.
道の駅を一通り見たら,そそくさと駅に戻る.
駅舎には列車が来たときのみ,駅事務員が来るみたい.
ここで到達証明書をいただいてからホームへ戻った.
この先へ列車が進むことはない.また福井方面へ戻るのみだ.
地図で見ると,越美南線の北濃駅はそんなに遠くない.
繋げそうな気もするけど,やっぱり経済的にも地理的にも大変なのだろう.だから頓挫したのだ.
近くて遠い,北濃駅,今度は自転車で走ってみようかな.
九頭竜湖~越前大野~福井
九頭竜湖からは
普通福井行
越美北線 九頭竜湖1435=越前大野1506
にて越前大野まで行き,そこで途中下車する.
この列車は先ほどの727Dがそのまま折り返す.15分での折り返しだ.
越前大野までの車内は,途中で乗ってきたこどもたちでにわかに賑やかになった.
真っ黒に日焼けした,帽子を被った子どもたち.地元の子どもだろうか?引率の先生も都会にはいない雰囲気のお兄さんと,オジサンだった.子どもたち目が輝いていて素晴らしい.僕も子ども時代はこういう子だったのだろう.自然に囲まれて育つのは良いことだ.
越前大野で途中下車,大野城散策
さて,ロングシートで列車に揺られること30分ほどで大野駅に戻ってきた.
途中下車,運転士が駅の作業員にスタフを返していた.
730Dは福井までこのまま折り返す,お疲れ様.
越前大野駅も,九頭竜湖駅に似た外観.
ただし,駅前はちゃんと栄えている.
越美北線沿線の最大都市,越美北線の存在意義といっても言い大野市街を歩く.
ドコに行こうか,とちょっと考えて「天空の城」のポスターを駅で見かけたので,駅から歩いて越前大野城まで行ってみた.
もう夕方に差し掛かろうというのに暑い.名古屋よりは幾分マシだけど,それでも暑い.歩いていると汗がドバドバ出てくる.
駅から頑張って歩いて
城の山道をコツコツ登る.
頂上まで20分かかるって書いてあったけど,短絡ルートの階段を使ったりすると15分ほどで頂上までたどり着けた.
頂上には復元天守があり,200円払うと入ることができる.
天守からの景色は素晴らしい.大野のまちなみを一望できる.
左側からゴォー…というエンジン音が聞えてきたと思ったら,越美北線の列車がとことこ1両で大野へやってくるところだった.越前大野で折り返す729Dだろう.
田んぼと山に囲まれた平地に,家と町がぎゅっと詰まっている.コンパクトな町だ.
汗を,天守に吹き込んでくる風で乾かしてから,大野駅まで戻る.
城山ではヒグラシが鳴いていた.ヒグラシの鳴き声はいいなあ・・・ヒグラシの鳴き声がきこえる町に住みたい.
越前大野→福井
普通福井行
越美北線 越前大野1709=福井1803
先ほど天守から見たキハ120で福井まで帰る.
夕暮れ時の田んぼに照りつける西日を見ながらウトウト・・・
牛ヶ原からしばらく記憶がない.
ふと目を覚ますとトトロでもいそうな森と田んぼが目の前にあった.
車内は福井へ向かう地元客が大勢乗っている.
ボックスシートとロングシートはいっぱいだ.
九頭竜湖へ行くときには気付かなかったけど,越前東郷駅の目の前には学校があった.だから沢山の乗降があったのか.
ボックスシートに座っていた僕の右前にも,学校の先生らしき初老の方が座った.
福井市街が見えてきて北陸本線が合流して,福井駅に到着.
18:03.半日がかりの越美北線旅はこれにて終了.
このあとは普通列車で宿がある金沢まで向かった.
久しぶりの金沢駅,いつみても美しい鼓門.
18きっぷ旅中特有の「新幹線に乗りたい誘惑」に誘われながら,ホテルへ向かった.
まとめ:いい路線だけど,将来は…
以上,越美北線旅の記録.
ここまで書いたとおり,越美北線は越前大野から先はかなりの秘境路線で本数がグッと少なくなる.車内は観光客中心だった.
越前大野=福井は,大野市街の需要があるだろから,廃線にはならないだろうけど
大野より先,越前大野=九頭竜湖の区間は
いつ廃線になってもおかしくない
そう今回の乗車で感じた.
越美南線まで繋がっていれば,まだ希望はあったかもしれないけどそれでも需要は多くない.将来も存続させるためには「乗って残す」しか方法はない.採算の取れない路線をJRがいつまでも抱えておくとは限らないから.
今度は長良川鉄道と自転車を活用して,
未成線区間である北濃⇔九頭竜湖を探索してみたい.
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これで2019夏の18きっぷ旅1日目は終了.
2日目は金沢から特急「サンダーバード」で敦賀まで向い,小浜線・福知山線など乗りつぶしの旅を楽しむ.
【参考情報】