【論文整理】Mendeleyからの移行先としてEndNoteを試す

4月になり,新年度がスタートしました。

私の研究について少し書いておくと…3月の学会2つで,ひと段落したところです。

現在は,ここまでの研究成果について,論文を書き上げ,先生とやりとりしつつ仕上げをしているところです(学振の申請までにsubmitして受け取られたい…)。そして,新しいB4・M1が入って来たので,彼らの世話もしています。

新年度が始まる前の3月末頃は,今年度(M1)の研究データをいろいろと整理していました。これと,論文執筆とをいい動機として,論文(文献)データの整理もやっておくことにしました。

これまで,文献整理にはMendeleyのデスクトップ(機関)版を使ってきましたが,いろいろと考えるところがあって,EndNoteというサービスへと移行してみることにしました。この記事では,

  • これまでの文献整理
  • サービス移行の動機
  • 移行先のサービス

について書きます。

MendeleyからEndNoteへ

はじめに:論文整理ツールでやりたいこと

私が,論文整理ツールに求める要件は以下の4つです。

  1. 研究に関連する文献を1か所に整理しておきたい
  2. iPadで論文のPDFを読みたい
  3. Apple pencilで論文に手書きのメモを書き込みたい
  4. 1-3を1つのツールで完結させたい

「論文整理」というと,1.ができれば十分です。

2.や3.は,そのツールから別アプリ(書き込みができるPDFリーダ)へPDFファイルを出力すれば,気持ちよくできるかと思われます。たとえば,GoodNotesやOneNote(後述)あるいはiPad純正メモアプリは,これが得意です。

ただし,1.と2.および3.が別アプリで行われると,以下のような問題が生じえます。

  • 論文を文献として引用したいときに,論文整理ツールからはメモが閲覧できない
  • アプリ間の遷移・同期が若干面倒

そういうわけで,2.や3.が少々快適でなくても,1-3が1つのツールで完結できた方が,後々便利だと考えるのです。少々欲張りかもしれませんが。

これまで使ってきたサービス:Mendeley+OneNote

上記の要件をみたすサービスについて紹介する前に,これまで使ってきた論文整理ツールについて簡単に紹介しておきます。

B4で研究室に入ってから,M2になるまで,

論文整理ツールとしては「Mendeley」を使ってきました。Mendeleyは,エルゼビア(ELSEVIER)が提供する,無料で使える文献管理ツールです。

Mendeleyは文献情報の管理や研究ネットワーキング、最新研究の発見において研究活動を支援する、無料の文献管理・学術ソーシャルネットワーキングツールです。

Mendeley | 無料レファレンスマネージャーおよびアカデミック・ソーシャルネットワーク

Mendeleyの特徴と便利だったところ

Mendeley desktop

Mendeleyには,デスクトップ版,Web版があります。

無料で使用する場合は,1つのアカウントにつき,2GBまでデータを保存できます。ただし,ライセンス契約を結んでいる大学の学生は,機関版を使用でき,200GBまでデータの保存が可能です(※)。

※A4 10p=10MBとすると,論文を約20000本(20,000 * 10 MB = 200,000 MB = 200GB)保存できる計算です。

Mendeleyの詳しい使い方は他の記事に譲りますが,使ってきて便利だったのはおおむね以下の2つです。

  • Googleの拡張機能で簡単に論文を保存できる・情報を抜き出せる
  • Web版とデスクトップ版が1つのアカウントで同期でき,デバイス依存性が低い

これに加えて,iOS版のアプリもありました。本アプリでも,Web版・デスクトップ版とのデータ同期・ダウンロードができました。

PDFリーダも内蔵されており,簡単なハイライトはできたかと記憶しています。ただ,Apple pencilをつかった手書きのメモは不可でした。

OneNoteへ共有して書き込みしていた

英語の論文を紙のように読み込んでいくためには,手書きのメモが不可欠です。

これは,前述のように,Mendeley単独ではできません。そこで,整理された論文のうち,しっかり読みたいものについては,

「Mendeley→(共有)→OneNote」

とPDFデータを共有し,OneNote内で書き込みしながら読んでいました。OneNoteでは,「研究ノート」に「論文セクション」をつくって,そこにしかるべきタイトルを付けて保存していっていました。

本フローにおいては,アプリ間遷移が存在するのが若干不満だったものの,iPad内で「論文をひらき,書き込む」が完結できたので,まずまず便利でした。

論文整理ツールをのりかえる理由

そんな論文整理ツール(環境)をのりかえることにしたのは,

MendeleyがiOS版のサービスを終了したから

です。

参考:Mendeley refocusing announcement: mobile app retirement– Mendeley Blog

上記記事によると,「モバイル(iOS版)のMendeleyの使用者数が圧倒的に少ないのに,それの開発に力を割くことは非効率だよね,それだったらWeb版とデスクトップ版に注力した方が,多くのユーザーが幸せになれるよね」とのことでした。どの世界でも,マイノリティは”切られる”運命なのか…

これまでMendeleyでは,1(論文整理)および2(iPadでの論文閲覧)は可能でした。しかし,3.(iPad内での論文への書き込み)ができなかったのです。ただ,3.ができないだけなら,上述のように,

「OneNoteへPDFを出力→書き込み」

でなんとか対処できました。しかし,iOS版のサービスが終了したことで,3.のみならず2.もできなくなってしまいました。

「PC版のMendeleyからPDFをエクスポート→PC版のOneNoteへ読み込み→→iPad版のOneNoteで書き込みながら読む」

ことはできますが,手間が多く煩雑です。実際,この方法を数度とりましたが,Mendeleyを経由するのが億劫になってしまい,Mendeleyをあまり活用できなくなりました。

しかも,OneNoteへの書き込みに満足できていたかというと,そんなこともありませんでした。iPadのOneNoteアプリでは,GoodNotesやiPad純正メモアプリとは異なり,ノートの幅が可変です。くわえて,PDFファイルを展開するときは,画像としてしか展開できません。これらの仕様から,OneNoteでPDFファイルを開き,余白に書き込んで読んでいくと,以下の問題が生じていました。

  • 論文セクション内で各ノートの幅がバラバラになる
  • PDFファイルの解像度もイマイチ
  • →あとで見返すときに可読性が低い

iPad版のOneNoteは,整理・Officeとの連携には長けている一方,Apple pencilでの書き込みによる遅延や他サービスへの拡張性の低さが欠点であると考えられます(※)。

※iPad版OneNoteの使い勝手は,また別の記事にも書いていきます。長くなるのでここでは省略します。

以上のように,Mendeleyが,論文整理ツールに求める要件を満たさなくなったうえ,OneNote自体にも不満があったので,論文整理のツールを別ツールへのりかえることにしたわけです。

EndNote basic (機関向け)を検討

EndNote basicのトップ画面

そのような動機に基づいて,いろいろとインターネット上を探し回って,今回導入(を検討)することにしたサービスが,「EndNote」です。

EndNoteは,先に紹介したMendeleyやRefWorksなどと並んで,世界的に有名な論文整理ツールのようです。

詳しい機能の紹介は,ユサコ(開発元の日本代理店)のホームページに譲ります。

EndNoteにのりかえを検討する1つめの理由は,前述の要件を満たしているということです。要件を再掲すると以下の通りで,たしかにEndNoteはこれらの要件を満たしています。

  1. 研究に関連する文献を1か所に整理しておきたい:もちろん可能
  2. iPadで論文のPDFを読みたい:フルテキストPDFをアップロード可能&iOS版のアプリに付属のPDFリーダあり
  3. Apple pencilで論文に手書きのメモを書き込みたい:iOS版のアプリで可能
  4. 1-3を1つのツールで完結させたい:iOS版とウェブ版とを同期可能

もう1つ,EndNoteにのりかえを検討する理由は,私の所属する大学が機関契約をしていることです (※)。

※ EndNoteの開発元であるClarivate Analyticsが提供している学術文献データベース “Web of Science” の利用契約をしている機関では,これに紐づけられる形でEndNoteが利用できるようになっているようです。

これにより,少なくとも学生の間は,必要十分なサービスを無料で使用できるわけです。

EndNoteの機能比較

通常版、アップグレード版、学生版のパッケージ画像
引用元:EndNote 価格・購入について | 学術情報・論文作成支援【ユサコ株式会社】

EndNoteには,以下の製品タイプがあるようです。

  • デスクトップ版
  • デスクタップ版付属のオンラインアカウント(EndNote online)
  • WoS導入機関向け EndNote basic
  • 無償 EndNote basic

このうち,機関契約のEndNoteは,ユサコのホームページのよると,「WoS導入機関向け EndNote basic」にあたるようです。

※Wosとは,前述のWeb of Scienceのことです。

サービス名としては,「EndNote basic」という名前のようです。

ただし,EndNote basicには,この機関契約用と無償版の2つがあります。名は同じでも,昨日には若干の違いがあるようです。以下の表は,ユサコのHPから拾ってきてものです。同表から,機関契約用と無償版の,利用するにあたって気になる違いは以下の点にあることがわかります。

  • 利用期間(機関契約用:IPアドレス経由でログイン後1年間=学生の間は実質利用可能,無償版:期限なし)
  • 使用可能なスタイル数(機関契約用:約3,300種以上,無償版:21種)
  • ダイレクトインポートのデータベース数(機関契約用:700種以上,無償版:100種以上)
  • 外部データベースのオンラインサーチ(機関契約用:1800種以上,無償版:6種以上)

機関契約用のほうが,サービス経由の文献検索が強いようです。ただ,自分自身は,必要な文献をGoogle scholarから検索することがほとんどですので,使用するにあたって,上記2サービス(機関版,無償版)の実質的なサービスはほとんど同様といえるでしょう。

なお,保存可能なデータベース容量は2GBとなっています。これは,前述のMendeleyの無料版と同等です。2GBを多いとみるか少ないとみるかは,状況によって変わりますが,「電気系の学生が,修士~博士と5年間使用する」には,十分な量に思われます(※)。

※A4 10p=10MBとすると,論文を約200本(200 * 10 MB = 2,000 MB = 2GB)保存できる計算です。

引用元:https://www.usaco.co.jp/Portals/0/images/faq_scenario/endnote/ENb_hikaku.pdf (ユサコ株式会社)

一方,ソフト購入および定期的なアップグレード(いずれも有料)が必要な「デスクトップ版」では,お金を支払っている分,EndNote basicよりかなり充実したサービスが利用できるようです。詳細は,上の表に示される通りです。

まとめ:しばらく使ってみます

今のところ順調に使えています。

そんなEndNoteですが,私自身の現在の状況としては

  1. 機関内のIPから登録→ログイン
  2. 読み終えた論文20本+研究室内の論文数本をインポート
  3. フルテキスト版PDFをアップロード
  4. グループを作成して分類
    (ここまでWeb上で実施)
  5. iOS版アプリをインストールして,Web版を同期

するところまで進んでいます。

私が本ツールに要求するところとして,iOS版のアプリの使い勝手は非常に重要ですので…これからしばらく使ってみて,使い心地などをレビューできればと考えています。

(つづく)

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