他の研究者が書いた新着論文をチェックするのに使っていた,Googleアラートの通知メールに,国際会議へ投稿した自分の会議論文が通知されました。
研究者のやりがいを垣間見ることができて,ちょっとだけ感激した話です。
自分の会議論文がGoogleアラートに通知された
Googleアラートでの新着論文チェック
新着論文のチェックは,最先端の研究をやるべき研究者にとって,その分野の到達点を知るために重要な仕事です。
自分も卒業研究をはじめてしばらくしたころから,研究者見習いとして新着論文のチェックをやるようになりました。最初の方は,能動的にGoogle Scholarへアクセスして,いちいち関連するキーワードを入力して,文献を探していたのですが,面倒くさいのと時間がとれないのとで,すぐにサボるようになりました。
これではいけないと,Google Scholarの「アラート機能」を使って,気になるキーワードにかんする新着論文をメールで通知してもらうようにしました。これなら,メールチェックのさいに,嫌でも目に入るので,どういう論文が発行されているのかを日々チェックするようになりました。
海外の研究者ばかり
アラートを設定してから現在まで,通知されるメールにあるリンクは,もちろんほかの研究者が出版した学術論文や会議論文へアクセスするもののみでした。しかも,その著者のほとんどは海外の研究者でした。
日本人の研究については…ごくごく稀に(アラート設定後の約2年間で10回~15回くらい?),弊研究室の助教・教授や,同じテーマを扱う先輩,それに研究会でお目にかかったことがある大学の先生が書いた会議論文や学術論文がヒットする程度でした。
ずっと研究を続けていたら,いつかはこのメールに自分の名前が載るのかなあ,と夢のように考えなら,機械的に通知されたリンクを眺めていました。
このときはまさか,M2の初めに,自分の名前が載ったメールが通知されるなんて思ってもいませんでした。
チャンス到来?-国際会議への参加
それからしばらく研究を続け,研究がうまくいったおかげで,M1の3月に国際会議で発表する機会をもらいました。
国内外を問わず,学会へ参加するためには,大抵「会議論文」あるいは「予稿(Proceedings)」を事前に執筆しなければなりません。自分も例外なく,これを執筆しました。
はじめての英語予稿ということで,先生の多大なるご尽力を賜り,なんとか6pの予稿を書き上げ,査読も通過しました。
3月の発表は,現地でなくオンライン参加でした。2月中にスライドを作り,月末に音声を吹き込んだものを提出する,これを「JST次世代」の申請書作成と並行して行う怒涛のスケジュールでしたが,これもなんとか間に合わせました(ちなみに後者は報われませんでした(涙)→JST次世代の第1回学内選考に落ちてしまった…)
発表日当日のLiveでの質疑対応(Q&A)もなんとかかんとかやり切り,はじめての国際会議の発表を終えました。JST次世代は報われませんでしたが,こちらの方は大会委員会から若手優秀発表賞を頂くことができました。しかも,Bornus: 5000RMB(※)のおまけつき!いろいろ大変でしたが,最後の最後に報われた気がしてうれしかったですね。
※人民元:円換算レートはこちら,現地の実行委員会は太っ腹ですね。。ちなみに日本の学会で,優秀賞の学生に対してこれだけの規模の賞金が出ることはまずありません(隔年の学会でも)。賞状1枚,よくてメダル(もしくは数百円相当の粗品)がいいところです。
(この辺の話は,修士で初めて国際学会に参加してきた|オーラル発表と質疑の感想などに書いたので,そちらもどうぞ)
さて,そんな国際会議を終え,研究室の居室にて作業をしていた4月上旬のこと。ふとしたときにメールをチェックすると,IEEEと思しき宛先からメールが来ていました。学術論文も書いてないのに,IEEEから何の用事?と思って内容をチェックすると,どうやら「今回の国際会議のProceedingsをConferene paperとして出版するから,OKだったらリンクからcopyrightとか承認してくれ」というメールでした。
どうやら,今回参加した学会へ投稿されたProceedingsは,会議論文としてIEEEから出版されるようです。特に断る理由は無いので,助教の先生にも聞いて(聞かなかったか?)メールにあるリンクから,いくつかのステップを経て,出版を確認・承諾しました。
ついにそのときは来た
いつ出版されるかとかはまったく確認をしていませんでしたが,メールで出版を承諾した約2週間後の今日,見覚えのあるタイトルと名前によって構成されたリンクが連なったGoogleアラートが,メールにて届きました。
一番最初に目に入ったのは,自分の会議論文ではなく,助教の先生のものでした。これは,いくつか設定されているキーワードの1つに,助教の先生のがひっかかったというわけです。どうやら,参加した国際会議の会議論文が発行(電子データに追加)されたようです。
これはもしかして…と続行のGoogleアラートを確認すると,また別のキーワードの1つに,さっきの助教の先生の会議論文,そして自分の名前が1st Author(第1著者)の会議論文が通知されていました。
これまでずっと,他の研究者の論文を眺めるだけだったGoogleアラートからの通知メールに,ついに自分の名前と論文が掲載されたのです。
リンクへアクセスすると,たしかにこの間投稿した国際会議の論文です。自分の名前,共著者の先生方の名前が,英語で掲載されています。
- Date Added to IEEE Xplore: 19 April 2022
とあるので,正式な公開日は4/19だったようです。
今回発行されたのは,あくまでも会議論文であって,原著論文ではないのですが,それでも英語の学術雑誌に掲載されたことは,ちょっとした感激でした。あくまでも教授がやっている共同研究とはいえ,自分の名前が入った著作物が出版されるという経験は,人生ではじめてなので,嬉しかったですね。
研究者としてのやりがい
「巨人の肩の上に立つ」Stand on the shoulders of giants
これは,Google Scholar の検索窓の下に書かれている言葉です。
その意味するところは、偉大な先人たちの業績や先行研究などを巨人に喩えて、現在の学術研究の新たな知見や視座、学問の進展といったものもそれらの積み重ねの上に構築され、新しい知の地平線が開かれることを端的に示した言葉とされる。Google Scholarのトップページにはこの「巨人の肩の上に立つ」(Stand on the shoulders of giants)の標語が掲げられている。
「巨人の肩の上に立つ」という言葉のいわれを知りたい。|レファレンス協同データベース|国立国会図書館
自身の研究を進めるにあたり,先行研究や先人の業績,同じ分野の学術研究を知ることは大変重要です。最先端の研究をするためには,いま,何がどこまで研究されていて,どういうところに課題や未解明な点があるのか?を知る必要があります。
いままではずっと乗るだけだった「巨人の肩」に,ほんの少し,米粒よりもっともっと小さいくらいの貢献ができたのは,ちょっとした感激です。これが研究者のやりがいなのかなあ,と思った土曜日の午前中でした。
学術論文もはやく書き上げて,今日みたいに通知されると嬉しいですね。早く書き上げたい。。。先生,早くコメントください。。。
(おわり)