台風19号が猛威を振るった10月の3連休.土曜日は関東・甲信越で甚大な被害が出た.
そんなスーパー台風はあっという間に過ぎ去り,日曜日は台風一過の晴天予報.
ふと「乗鞍行こう」と思い立って,友人とレンタカーで弾丸日帰り乗鞍ライドを敢行.松本側にあるエコーラインを走ってきた.一昨年高山側(乗鞍スカイライン)を走って以来,2年ぶりの乗鞍.
台風一過,雲の上の乗鞍は,人生でも指折りの絶景だった.
乗鞍エコーライン|三本滝→畳平
「乗鞍」
自転車・山登りが趣味の人なら一度は耳にしたことがあるだろう.乗鞍岳岐阜県高山市と長野県松本市の間にまたがる標高3,026mの山で,山の麓にある「畳平」は標高2,700m近くの高所にある.そんな高所にある畳平へは,岐阜側の「乗鞍スカイライン」松本側の「乗鞍エコーライン」から登ることができる.
岐阜県側平湯ゲート,長野県側三本滝レストハウスから畳平へ向かう山岳区間はマイカー規制が行われていて,多少のバスと許可車両以外は通行できない.ただし,自転車は規制の対象外.つまり,規制区間はほぼ自転車貸し切り状態で走ることが出来るのだ.乗鞍は日本屈指の「贅沢なサイクリングロード」だといえる.
今回は三連休の中日,台風一過の午後からのわずかな晴れ間を狙って弾丸サイクリング.一昨年は高山側のスカイラインを走ったので,今回は松本側へ.麓の三本滝までレンタカーで行ってエコーラインを走ってきた.
松本市|三本滝レストハウスから
朝9時過ぎにレンタカーに乗り合わせて名古屋を出発.
中央道で松本まで突っ走り,12時頃には松本ICに到着.名古屋から3時間少々.台風19号の豪雨で長野市を流れる千曲川が氾濫,流域では甚大な被害が出た.松本と長野はすぐ近く.同じ県でも,市が違うだけで被害は大きく変わってくる.災害はいつどこに降りかかるかわからない.改めて肝に銘じる.
松本ICから乗鞍・上高地方面へ車を走らせ,新島々付近のコンビニで昼食&補給の買い出し.新島々から上高地方面へ進むと,補給地点が消滅する.乗鞍を登るときは補給を買う場所(特に水分)がない.レストハウスは閉まっていたりするので,事前に何か買っておいた方が安心.
新島々からは山道を上高地方面へ.
途中にあった「トンネル内分岐」.
乗鞍通には有名なクソルートである()
エコーラインの麓にある三本滝レストハウスまでの道のりは想像以上に険しい.アップダウンが多く,道も狭い.トンネルも人権がない()
自走で行くのもいいけど,車で三本滝か平湯ゲートまで乗り付けて,そこから畳平までピストンするのがラクで楽しい.もちろん自走の楽しみもあるから,どういうアクセスをするかは人それぞれ.
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三本滝に着いたのは午後1時半頃.上空は白い霧のような雲に覆われている.
自転車通行止めが不安だったけど,エコーラインは通行止めが解除されていた.(ちなみに岐阜側の乗鞍スカイラインは濃霧のため自転車通行止めだった)とりえあず畳平までは上れることがわかって一安心.車から自転車をさっさと下ろして用意する.
【メモ】10月の乗鞍に登るウェア
この日の天候は霧のち晴れ.標高1,800mにある三本滝レストハウスの気温は10℃前後だったか.曇っていたので半袖だと寒くていられないくらいの体感.
ここから標高2,700mの畳平までは900m登り,そして同じ標高差を下る.頂上の畳平は10月にもなると相当な寒さ.今回到着は昼過ぎ,夕方に差し掛かる頃で晴れていたので体感気温は三本滝とそんなに変わらなかった.が,それでも10℃に届かないくらい.曇っていたり風が強かったりすると,一気に気温は下がる.また,ダウンヒルでは猛烈な冷風を浴びながら下ることになる.
したがって秋の乗鞍を自転車で走るには耐寒装備が必要.
今回は以下の装備にて突撃.
- パールイズミインナー上下(5℃対応)
- ユニクロの短パン&Tシャツ
- モンベルのレインウェア
- ネックウォーマー
- アイウェア(ユニクロ)
- 防風フルフィンガーグローブ(ルコック)
- ランニングシューズ(SPDではない)
- 軽めのザック
冬用パールイズミのインナーの上からTシャツと短パンを着用.太陽が照りつける上りは,暑くて汗をかいた.
でも,下りは寒い.だから,モンベルのレインウェアとフルフィンガーグローブ・ネックウォーマーの完全冬装備で下った.モンベルのレインウェアは防寒で高性能なので,寒さは何とかしのげた.
グローブも防風のおかげで,ブレーキの生命線となる指先が冷えずに済んだ.
シューズはSPDを履かずに,普通のランニングシューズで登った.乗鞍の上りはそれほど斜度がきつくないし,途中で写真を撮るために何度も停まる.畳平では1時間弱で魔王岳も散策予定だったので,SPDは煩わしい.ランニングシューズの方がラクという具合.
あと,補給食,飲み水,ウルトラライトダウン,財布,スマホ,カギをザックに入れて走った.普段はザックを背負わない派だけど,距離が短いしまあザックでもOK.十分上れる.
カメラとパンク修理キット等工具はフロントバッグへ.
三本滝~畳平|乗鞍エコーライン上り
三本滝をスタート.
ゆっくりと上っていく.路肩には台風による暴風で散ってしまったと思われる,色づいた葉がたくさん落ちている.
ヘアピンカーブを繰り返しながら登っていく.
周りの景色はまだ開けない.標高が高いので,ペースを上げると息が上がってしまう.スローペースを維持しながら.
やがて霧の中から薄日が差し始めて,霧の上に出た.
見渡す限りの青空…!こんな青色,地上ではそうそう見られない.
だんだんと景色も開けてきた.
あとはもう,絶景の連続.雲海と紅葉が織りなす景色に,ただただ感動するばかり.
頂上手前の道路は,植物も育たない高所にある.写真右側にみえる赤い屋根の建物が「位ヶ原山荘」.簡易トイレが建物前に設置されていた.
標高は2,400mを越えた.
青空と,雲海と,自転車.
言うことなしの絶景.
風の音以外は何も聞えない.
静寂につつまれた世界.
じーんとする.
今日の乗鞍は自転車はじめて一番の絶景だ,まちがいない.
それにしても空気が薄い.
頭に酸素が行っていないのがはっきりわかる.
これが本当の「思考停止」..?
植生もどんどん変わっていく.高山にいることを実感する.
つづら折れを曲がるたびに現れる絶景に,何度も足を止める.
紅葉に囲まれたワインディング,美しい.
圧倒的スケール.
気付けば頂上はすぐそこ,
下ってくる何人かのサイクリストとすれ違った.
標高2702m!畳平
畳平手前にある岐阜長野県境が,乗鞍エコーラインの最高地点(2,716m).
岐阜県側の看板と
長野県側の看板.松本市の看板は最近リニューアルしたらしい.
鶴ヶ池を左手に見ながら最後の区間を走って,畳平到着.15時半すぎだった.三本滝から2時間弱かけてエコーラインを上ったことになる.
いつもの立て看板は,お土産屋さんのすぐ横の日陰に置いてあった.写真が撮りにくい…(笑)
スカイライン・エコーラインの終点となる畳平は,山の麓の台地のような地形.ここにレストハウス・民宿などが集まる.平湯・三本滝それぞれからやってきたバスが何台も停車中.畳平への唯一といってもいいアクセス手段だ.
頂上は微風,天気は快晴.日陰に入ると寒い.
モンベルのレインウェア上下を着用してから,もうすぐ閉店するレストランの前で休憩.
ザックに入れてきた補給を食べる.エコーラインは思っていたほどキツくなかった,補給はこんなにいらなかったな.
もし剣ヶ峰まで登るならこのくらいあってもよかったけど,今日は魔王岳のみ.おにぎり,カロリーメイト一袋だけ食べる.
メロンパンは帰りの車で食べよう.
時間も無いことだし,魔王岳に行ってみよう.
魔王岳にのぼる
畳平の目の前にある標高2,764mの魔王岳.
往復で1時間ほど,畳平から歩ける山では一番ラクに登れる.標高差は100m未満.ほとんど遊歩道に近い雰囲気.
そんな魔王岳からの景色がこちら.
頂上からの景色は,圧巻.
台風の影響で残る雲が雲海を形作る.
高山側は,一面真っ白.
「雲の上」の世界だ.
僕の語彙力ではもう,
この美しさは形容できない.
圧倒的なスケールの前に立ち尽くすのみ.
帰る前にもう一度,目に焼き付ける.こんな景色はそうそう見られない.
魔王岳から畳平をのぞむ.
時刻はもう16時を過ぎている.
日が傾き始め,畳平は半分以上山の陰に入った.
畳平~三本滝|乗鞍エコーライン下り
トイレを済ませて,
16時40分頃,畳平を出発.
三本滝までダウンヒル.
雲海が夕陽に照らされ,上りとは違う,どこかしっとりとした雰囲気の山.
極上のダウンヒルだ...
贅沢な景色を愛おしみながら,
ゆっくりゆっくり下った.
三本滝レストハウスへ帰還
17時20分過ぎ,三本滝に到着.
上りは2時間弱かかったが,下りは40分ほど.
防風グローブ,冬用インナー,モンベルレインウェアのおかげで寒さを気にすることなく下ることができた.
畳平に連れて行ったボトル.
ペットボトルはベッコベコにへこんでいた.
このあとは下道で名古屋まで帰った.名古屋に着いたときにはボトルまでベコベコにへこんでいた.三本滝との標高差は1,800mを実感して帰宅.
まとめ:極上の乗鞍
以上,快晴弾丸乗鞍ライドの記録.
言葉ではうまく説明できないけど,晴れた日の乗鞍は,別世界.乗鞍のよさが,写真から少しでも感じ取っていただけたら,この記事を書いた甲斐があるのかなと思う.
登山指数Aだった乗鞍を信じてよかった.
おかげで極上の乗鞍を満喫できた.
前日は台風だったし,翌日も悪天候だったらしい.本当についてたなあ・・・.
天気のいい週末を見計らって,
みなさんもぜひ,乗鞍どうですか.