18きっぷ紀勢本線の旅①国鉄型105系が現役で走るきのくに線|和歌山→新宮

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和歌山から紀伊半島をぐるっと回り,三重県は亀山まで続く「紀勢本線」.

ローカル線のイメージが強く,列車の運行本数も東海道本線や関西本線に比べると少ない路線.でも,本線との名前がついているとおり,立派な「幹線」.その距離は300km以上.

今回は,そんな紀勢本線を18きっぷで乗りつぶしてきた話.

前半は“きのくに線”との愛称が付けられている,JR西日本区間の乗車記録.最新型車両である227系と国鉄型の105系電車に乗って,はるばる新宮を目指す.

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和歌山→紀伊田辺

紀勢本線の起点・和歌山駅からスタート.新宮には昼過ぎ,亀山には夜到着.長い長い鉄道旅のはじまり.

朝の和歌山駅

出発まで時間があるので,いつものように駅構内を観察.

今日は日曜日だが,早朝から多くの人が列車を待っている.

頻繁に出入りしているのは,やはり大阪・京橋方面へ向かう阪和線の列車.

紀州路快速に乗ればあっという間に大阪へ行ける.

利用客も列車の本数同様に多く,それにあわせて編成も長くなっている.

こういう景色を見ると,和歌山は大阪・京都・神戸の京阪神エリア,特に京阪エリアの外郭を成しているのだなと実感する.

あと,和歌山駅は列車が接近するときのメロディがGood.

このメロディを聴いているとなんだかワクワクする.

227系1000番台

さて今回乗車するのは紀勢本線.

JR西日本管轄の区間は「きのくに線」という愛称がつけられている(ちなみにJR東海区間には愛称がない,JR東海は路線に愛称はつかない)

ホームで列車を待っていると,先に湯浅止まりの普通列車223系が出発.

このあと紀伊田辺まで走る普通列車が入線.

333M
普通 紀伊田辺行
和歌山0806=紀伊田辺0951

227系1000番台,和歌山エリアで導入が進む新型車両.昨日乗車した和歌山線もこの車両だった.

新型車両だから快適そうだけど,車内はロングシートで統一されている・・・関西アーバンネットワーク223系・225系と同じ転換クロスを期待していたが・・・ローカル区間だからロングシートで十分なのだろう.

227系1000番台は「SiC-MOSFET素子」を用いたVVVFインバータが採用されている.広島地区で走っている0番台(”RedWing”)はSi-IGBT素子が使われているので,同じ車両形式でも若干走行音が異なる.

SiC-MOSFETのインバータ音は,高く擦れたような独特の音.省電力化に大きく貢献した足下の進化である.

複線電化区間を快走

和歌山から紀伊田辺までは全線が複線電化区間.紀勢本線沿線から和歌山中心部へのアクセス路線ということで,本数も毎時2本程度あって利便性は高い.JR西日本の力の入れようがわかる.

この区間,沿線の雰囲気は予讃線に似ている.街を抜けると山があり,紀伊田辺手前では右手に海が見える.

自然だけでなく,途中で工業地帯の景色も見えた.海沿いにずらっと並ぶ無機質な鉄パイプや配管の風景は,予讃線では今治,大西あたりでみられる.

途中の主要駅ではそれなりに乗降があるが,無人駅や小さい駅では乗降はない.

そんな雰囲気で,線路だけ2本ある感じ.

紀伊○○という駅名が多く,また,それ以外の駅はユニークな駅名が多かった.

 

主要駅である御坊(ごぼう)もそうだし,冷水浦広川ビーチなど.到着する毎に車掌の放送を聴いて楽しんでいた.

どこかは忘れたけど,変な橋もあった...

調べてみると印南にある「カエル橋」なるものらしい,総事業費9億円...

かえる橋 | 印南町

紀伊田辺駅でのりかえ

紀伊田辺駅到着.立派なホーム.主要駅らしく複数の線路が並ぶ.

普通列車はここで系統が分離されている.特急列車もこの駅は停車する.

ちょうど新宮方面へ向かう283系「くろしお1号」がやってきた.

中間車を無理矢理改造したのっぺり顔

手前に停車中の御坊行き普通列車113系(食パン)との2ショットは,紀勢本線でしか見られない.この113系も,もうじき227系に置き換えられるだろうから,見るなら今のうちだ.

紀伊田辺駅プチ観光

終点の紀伊田辺駅では,新宮方面の普通列車に50分空けて接続.

駅にいてもすることがないので,ちょっと周辺を散策.

 

駅前にある地図を見ると,なんと世界遺産が徒歩圏内にあるらしいのでちょっと行ってみることにした.

その名は「闘鶏神社」.

駅から歩いて10分ほど.商店街の突き当たりにある.

この神社は,紀伊山地霊場参詣道関連の世界遺産のひとつ.

紀伊山地周辺には熊野古道を中心に,いたるところに世界遺産がある.

 

神社の由来は

平家物語壇ノ浦合戦の故事によるもので、源氏と平氏の双方より熊野水軍の援軍を要請された武蔵坊弁慶の父であると伝えられる熊野別当湛増(たんぞう)が、どちらに味方をするかの神意を確認するため、神社本殿の前で赤を平氏、白を源氏に見立てた紅白7羽の鶏を闘わせたことによるもの

田辺探訪(和歌山県田辺観光協会)::闘鶏神社

だそうで.

結局,白が勝ったので,熊野別当湛増は源氏の味方として
熊野水軍を引き連れて壇ノ浦へ向かったのだとか.

そんな重要なことを,鶏の決闘で決めて良いのか・・・と現代人の自分は思ってしまう.風情も信仰もあったものではない.

勝負事には良さそうな神社,今後のいろいろな成功を祈願してから駅に戻った.

紀伊田辺→新宮

紀伊田辺から新宮へは3時間弱の普通列車旅.

この区間を走る普通列車は105系ワンマン列車での運行がほとんど.

ロングシート3時間と書くと辛そうに聞こえるけど,最近数が少なくなった国鉄型通勤電車に乗車できる貴重な機会.モータ音や車窓を楽しんでいれば,3時間なんてすぐだろう.

105系に揺られて

紀勢本線 105系

2331M
普通 新宮行
紀伊田辺1041=新宮1324

国鉄型,車内はロングシート.

紀伊田辺から先,新宮までは普通列車の本数が減り,単線となる.1~2時間に1本程度となるため,18きっぷ旅では乗り継ぎに注意が必要.

105系を操るのは女性運転士.ブレーキを緩め,ゴトゴトと出発.変速するたびにショックを感じるが,...これがまた良いのだ.

乗り心地についていえば,紀伊田辺まで乗ってきた227系の方がいい.

でも,床下から聞こえてくるモータ音,ノッチを切るスコンという音,ブレーキの音・・・これがたまらなく良い.旅情をかき立ててくれる.鉄道旅を楽しむのに,国鉄型の電車も悪くない.

紀伊田辺から先は,海沿いまで迫る紀伊山地を縫うように走る.国道42号が眼下に見える,海は見えたり見えなかったり.

トンネルもあるけれど,紀伊田辺までよりも険しい区間がしばらく続く.

 

車窓へ目を向けると,小雨が降り始めている.

相変わらず105系はゴトゴト左右に車体を揺すりながら,カーブを曲がり坂を登る.

使い込まれた105系はこの険しい線区を越えられるのだろうか?そう思わずにはいられない.

一部の特急「くろしお」が終着駅としている白浜駅を越えると,いよいよ山越え区間.

椿駅を出発して,紀伊日置駅へ向かう途中に,とある事件が起こった.

山の中で105系が空転した

椿駅を出た後の上り坂で,105系の床下から聞こえるモータ音がおかしいのに気付いた.時折回転数が異常に上がっているような音がする.運転士はこれに気付いたのか,ノッチを入れたり切ったりし始めた.

それと同時にスピードが徐々に落ちていく.

あらら,大丈夫か・・・?これ途中で止まっちゃうんじゃないか?と心配そうに見ていたら,案の定坂の途中で止まってしまった.

105系はちょっと後ろに転がって停止.間もなく女性の運転士から「車両の確認をいたしますのでしばらくお待ちください」との放送.

外は小雨,降り始めた雨によって

どうやら105系は空転して坂を上れなくなってしまったみたい.

↓動画に一部始終をまとめてみた

モータが止まり,うるさかった105系は急に黙り込んでしまった.周囲に民家はなく,山の中にぽつんと2両編成の電車が止まっているのは何とも奇妙な光景だ.外から鳥の鳴き声と小雨の降る音だけが聞こえてくる.

女性運転士は落ち着いて指令とやりとりしている.若い女性の方,ワンマンだからこの事態に自分ひとりで対応しなければならない.さてどうするのだろう?と思っていたら,指令と「砂撒けますか?」的なやりとりがあった.そのあとすぐに電車を降りて砂を撒きに行った.右手にはペットボトルに入った滑り止めの砂.砂をまくことで車輪とレールの摩擦を上げて空転を防ごうというわけだ.

電車の中に残っている乗客は心配そうに待っている.

処置を終えた運転士が列車に戻ってきた.再び指令とやりとりして,手袋をはめ直しながら出発.

電車が動き出すと,床下から「ゴリゴリッ…ゴリゴリッ」と砂を踏む音が聞こえてくる.女性運転士は落ち着いた様子で,空転しないようノッチを入れたり切ったりしながら慎重に電車を転がしていく.スコン,スコン,と変速する音が頻繁に聞こえる.

トンネルを越えて上り坂が終わるまで,力行と惰行を繰り返しながら20km/h前後で登っていく.

幸い坂は長くなく,トンネルの中にある頂上を越えると空転は止まり,モータが元通りの音を奏で始めた.間もなく列車は下り坂に入り,すっかり今まで通りの走りを取り戻した.

女性の運転士,こういう事態は不安ではないのかな?と思ったけど
さすがにワンマン運転を任されるだけあって,対応力は素晴らしい,ちょっと感動した.

後ろの車両から展望を見ていると,運転席にはペットボトルの砂がいくつか積んであった.

ひょっとするとこういう空転は,険しい紀勢本線においては頻繁に起こるのかもしれない.

太平洋の車窓を眺めて

日置川を越え,紀勢本線は海沿いへ.

周参見(すさみ)駅で列車交換.周参見,新宮あたりは2018年のGWに自転車で走った.見覚えのある景色,聞き覚えのある地名が続く.自転車で走ったところを鉄道でもう一度走るというのも悪くない.

天気が悪いのは残念だけど,車窓には太平洋が見える.

見老津(みろづ)駅で下りの特急くろしおと行き違い.

時刻表を見る限りでは,見老津駅とは別の駅で交換するのだろうけど,先ほどの空転の影響で見老津駅で交換.

海からすぐそばの駅,ホームには「高い所へ避難」の文字.南海トラフ地震が起こったら,大津波が襲うと言われている紀伊半島沿岸.見老津駅も例外ではない.紀勢本線の和歌山県側は特に海沿いを走るので,車内や駅には至る所に津波避難関連の対策が施されている.

くろしおとの行き違い中,女性運転士が車内を巡回.悲壮感を漂わせながら「列車遅れてしまい申し訳ありません…」と.いえいえ全然大丈夫ですよ,素晴らしい対応でした!と心の中で懸命に擁護した.

行き違うとまた海沿いをゴトゴト走って行く.強まってきた雨の中,遅れ回復に向けて105系はモータを唸らせて懸命に走る.

串本駅に到着.ダイヤ上では10分弱停車だが,遅れていたためすぐに出発.

串本を出ると,車窓に奇岩が並ぶ様子を見ることができる.

これは「橋桁岩」という,国指定の名勝.晴れた日の写真と詳しい話はこちら

海面からいくつもの岩が突き出す他では見られない奇妙な光景.

そのあとも太平洋沿いの絶景区間を走り抜ける.窓の外に目を向けている乗客も多かった.

紀伊田辺から2時間少々走って,紀伊勝浦に到着.勝浦はマグロで有名な紀伊半島南部のまち.先ほど紹介したGW紀伊半島ツーリングは,この駅まで特急南紀で輪行してきた.マグロカレー美味かったな.

勝浦から新宮までの間で,乗客は一気に増えた.

地元の学生と思しき乗客が多く,車内は急に賑やかな雰囲気に.

勝浦⇔新宮は特急南紀でも乗った区間,海が間近に迫る区間.

ああ,こんな景色だったな,と思い出しながら新宮駅まで過ごした.

新宮駅到着,きのくに線乗破!

勝浦から30分ほどで,新宮駅到着.

空転による遅れは回復して定刻通りの到着.

 

もう13時半.トラブルもあったけど,太平洋の景色と105系の雰囲気が楽しいきのくに線だった.

まとめ:国鉄型車両と最新型車両

以上,紀勢本線(きのくに線)和歌山→新宮の乗車記録.最新型の227系と国鉄型の105系,新しい車両と古い車両に両方乗れるというのもあと少しだと思われる.いずれは最新型に統一されるだろう.

インバータ音ではなく,モータ音を聴きながら,ゴトゴトゆれる車窓から太平洋を眺めるのはきのくに線ならではの楽しみ.

特急列車もいいけれど,普通列車のロングシートで,持てあますような長い時間を自分の好きなように過ごすのも悪くない.

【続きはこちら】

18きっぷ紀勢本線の旅②全行程4時間!新宮発亀山行き普通列車乗り通し
新宮から亀山まで4時間かけて紀勢本線を走破するキハ25形普通列車の旅.

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