【音鉄】民営化された御堂筋線に初めて乗って来た

民営化されても,接近メロディや車内から見える風景は,大阪市営地下鉄時代と変わっていなかった。

出張の出先までの移動に利用

大阪出張にて,大阪メトロ御堂筋線:新大阪⇔千里中央間を1.5往復ほど乗車する機会があった。

千里中央駅にて。第三軌条集電方式なので,トンネル断面が小さい。車両のすぐ上に歩行用の通路や店舗が被さっている独特の風景。

大阪の地下鉄にちゃんと乗るのは久しぶり。以前ちゃんと乗ったのは高校生のときだったと記憶している。

そのときはまだ,大阪市交通局による「公営」だったが,2017年(私が大学へ進学した年)の6月に民営化されたらしい。これにより,御堂筋線をふくむ市内の地下鉄は,大阪市交通局から「大阪メトロ」へと,運行主体が移行した。

もしかしたら,大学生になってからちょろっと乗ったこともあったかもしれないが,あまり記憶には残っていない。つまり,「大阪メトロ」の御堂筋線にちゃんと乗るのは,今回が初めてだといってよい。

新大阪駅コンコースの看板。見慣れぬ「Osaka Metro」の文字。

高校時代に乗った時に,じゃあなにか覚えているかと言われると,正直言ってそこまでの記憶はない。高校時代は,大学時代ほどの鉄道熱はなかったからだ。それゆえ,車両や,駅の案内表示などが,どう変わっているかとかを比較することはできない。

最新鋭車両の30000系。2020年(川重)製造の最新車。

それでも,市営時代の御堂筋線の印象的なシーンが2つだけある。1つは,「」,もう1つは「車窓」だ。

【音鉄】接近放送・入線メロディがいい!

全国各地へ繰り出す「乗り鉄」であれば,「あれを聴くとドコソコへ来たな~って感じる」という「音」を1つは持っているだろう。

私の場合,大阪の「音」といえば…..

そう,大阪市営地下鉄の接近放送・入線メロディだ。

聴きどころは2つ。

肉声の接近放送

まず1つは,接近放送だ。AIが発展し,テキスト読み上げ技術の質が急速によくなったせいか,全国的に機械音声を導入する鉄道会社が増えている。名古屋市営地下鉄だと名城線がこれになった。

鉄道会社としては,少しの変更があるたびに録り直しを余儀なくされる肉声放送よりも,テキストを変更するだけで済む機械音声の方が圧倒的に楽だし,手間賃も安上がりだ。

一方,鉄道ファン,特に音鉄にとっては,駅の放送というのは,やっぱり肉声であってほしい。機械放送の冷たさと,絶妙な不自然さ(これは,機械音声が人間の音声に近づいてきたことで,逆にうまれるものらしい)には,どうしても違和感を覚えるし,苦手だ。

私はやっぱり,肉声放送のもつあたたかさと,自然さ,そして,その土地ならではの雰囲気が重なることで生まれる「唯一無二」を,じっくりと楽しみたいのだ。

そんな私にとって,未だに肉声放送を使っている大阪メトロの接近放送には,ちょっとした安心と懐かしさを覚えた。これこれ,高校のときに聞いたこれだよ。民営化されても,大阪の道先案内人は変わっていなかった。特に,新大阪・千里中央方面の男性ボイスがGood!低すぎず,ちょっと高めなのがよい。

一度聞くと忘れないメロディ

もう1つは,入線・発車メロディだ。

男性ボイス「黄色い点字ブロックまで…」に続くのは,なんとも特徴的な入線メロディ。

特に,2番線:新大阪・千里中央方面は,『とぅん→とぅん↗とぅん↘とぅん↗,とぅん→とぅん↗とぅん→とぅん↘..♪』と,思わず口ずさみたくなるような軽やかな報知音だ。

この音は,音鉄でなくても,大阪に来たなあ~と感じる音だと思われる。

もちろん,1番線:天王寺・なかもず方面のメロディも特徴的。私は収録できなかったので,YouTube上の動画を貼っておく。

警笛も気持ちいい…

そして,出発メロディに続いて,大阪メトロの車両が奏でる「警笛」も心地いい。

ふつう,警笛というと,旅客に対して警戒を促すためのもので,やかましくできていることが多い。名古屋市営地下鉄の車両は,最近,ホームドア設置によって鳴らさなくなったが,設置前までは,名城線の車両なんかはカーブの駅で騒がしい警笛を鳴らしながら入ってきていた。

それが,大阪メトロの車両はどうだろう。見慣れた20系はもちろん,最新鋭の30000系もふくめて,すべての車両が,「心地よい」警笛を鳴らして,到着・出発するのだ。

大阪メトロでは,2021年をもって御堂筋線全駅でホームドアが付いた模様。4ドアに対応した立派なもので,これなら安全のための警笛鳴動は不要なようにも感じられたが...御堂筋線ではそれでも,入線・出発前の警笛を鳴らしてくれていた。これは,「音鉄」として嬉しい限りだ。

ちなみに,「心地よい」のは,おそらく音階が和音になっているからだろうと思われる。この点については,以下の記事が参考になる。

大阪地下鉄の警笛音は「ミラド♯」…それ以外にもいる警笛異音車(カウホーン)
大阪メトロの警笛音は基本的に音階が「ミラド♯」の同時演奏音と決められているのですが、たまに妙な違和感をもたらす、ちょっぴり音痴な警笛を出す車

道路の真ん中を走る”地下鉄”

2つめの印象的なシーンは,御堂筋線が「道路の真ん中を走る三線軌条方式の地下鉄」だということだ。

御堂筋線は,江坂から中津までの区間が地上区間となっている。また,江坂から先の千里中央までの区間(この区間は「北大阪急行線」となっている)も,地上区間のため,実質的には中津から千里中央の間が地上区間だ。

地上を走る三線軌条方式の地下鉄といえば,名古屋市営地下鉄の東山線も身近な例として挙げられるが,大阪メトロ御堂筋線の特徴は,それが道路の真ん中を,おおむね同じ高さで走っているということだ。

新大阪から千里中央方面への前面展望,新大阪では,御堂筋線はすでに地上区間となっており,進行方向左手には道路が同じ目線で見える。

高校時代,鉄道素人ながらに「地下鉄なのに高架線を走るんだな,しかも道路が並行してるぞ」なんて思っていたが,今回の出張で新大阪から千里中央まで乗車して,これは今も変わらない「御堂筋線らしい風景」だと思った。

左手を走る道路は,国道423号(新御堂筋)で,高速道路かと見紛うような高規格道路だ。Wikiによると,この道路は「大阪府の北部を南北に貫く幹線道路国道423号)、地域高規格道路であり、北摂地区の大動脈である。(新御堂筋 – Wikipedia)」とのこと。

新大阪から千里中央方面の前面展望。左手に走るのは「新御堂筋」。青看板には,御堂筋線の終点・千里中央をターミナルにもつ「千里ニュータウン」の文字がみられる。

道路と鉄道の大動脈が,こうして仲良く並行しているところに,大阪が大都会であることを感じられる。架線がないので,スピード感もあって,とても楽しい。この景色こそ,「THE 大阪」といったところだろうか。名古屋市営地下鉄・東山線の地上区間は,郊外を走る高架線で,御堂筋線ほどのスピード感やスリルは感じられない。

参考記事 【名古屋市営地下鉄】架線がない!?東山線の地上区間を散策

道路と地下鉄とが,ビルの間を縫うように走る姿を切りとった写真を眺めるのも一興だが,こうやって,実際に乗車して,前面展望を楽しむのもなかなかよいものだ。幸いなことに,主力車両である20系も30000系も,どちらも前面展望が楽しめる縦窓が付いている。出張日程の都合,全区間乗車はできなかったが,地上区間の前面展望は十分楽しむことができた。

機会を作って私鉄を乗りつぶしたい

今回の出張では,御堂筋線のほか大阪モノレールや阪急に乗車する機会があった。ただ,いずれも「乗りつぶす」には程遠く,移動のためにちょっと乗っただけだ。これは鉄道マニア(乗り鉄)としては,かなりの消化不良状態。特に,ほんとうにちょっとしか乗らなかった阪急は,逆にちょっと乗ってしまったために,もっと乗りたくなってしまった。

関西には,阪急,京阪,阪神など,JRと肩を並べる私鉄が多い。名古屋では,これほど力をもった私鉄が複数走っておらず,非常に羨ましい。

ぜひとも機会を作って,「移動のため」ではなく,「乗りつぶすため」,すなわち,手段と目的が倒錯した「趣味」の一環として,関西の大手私鉄路線群に乗りに行きたい。

(おわり)