引っ越した先は贅沢なツーリングスポットだった

4月に引っ越してから1か月半が経った。名古屋よりずいぶん田舎だ。

幹線道路沿いの住宅地ではあるものの,家を出て30分くらい歩くと,海も畑も里山もある。そんなところだ。

それゆえ,街へ出るにはバスで1時間弱,都心へ出て行くには,さらに1時間程度電車に乗って行かなければならない。最寄りのスーパーマーケットでさえ20分は歩かないといけない。

このように,名古屋に居た頃とくらべると,ずいぶん不便なところに来た。少なくともクルマがないと,「本屋にぶらっと行く」「コーヒーチェーンへモーニングに行く」「まちなかをウィンドウショッピングする」といった,名古屋にいたときのような楽しみはできない場所にいる。

ただし,田舎だからといって,不便ばかりで悪いことしかないのかというと,そうではない。

田舎に住んでいるということは,裏を返せば,海あるいは山が近いということになる。

私がいまいる場所は海沿いだ。つまり,海岸沿いのサイクリングロードが,家の目のまえにあるということだ。30万円もするロードバイクを生やしておいて,こんな贅沢を味わわない理由はない。

ただし,引っ越し直後は,部屋が散らかっていたうえに,床を汚す心配もあったから,なかなかバイクを部屋から出せなかった。

それから週末などをつかって,部屋を片付けた。また,2台ある自転車をかけられるラックを組み立てた。そして,廊下のマットと最低限の壁養生を施した。

これによって,2台の自転車を好きなときに部屋から出せる状態になった。

その後,GW期間の晴れた日を狙って,2回,ロードバイクで走りに出てみた。

どこへいったとか,どれくらい走ったかは野暮ったいから書かない。とにかく,いい場所に来たなと思った。

関東圏では人気のツーリングロードだから,もちろん車やバイク(そして観光客)で混雑していた。けれども,それは一部だけの話であって,全線がそういうわけではない。

むしろ,ロードバイクで走っていて一番気持ちいい瞬間というのは,クルマや歩きの観光客が容易には立ち止まれないようなところにある。たとえば,上り坂の頂上にあるトンネルを下って行った先に見えてくる一面の海とか,波打ち際を真っすぐに延びる道路とか,観光スポットではないところ,そこにだけある。

そして,いま住んでいるところは,そういう「走っていて気持ちいい」場所に,ものの30分でたどり着ける。そのうえ,1日で走れる距離内に,何か所もそういう区間がある。

名古屋にいたときは,こうはいかなかった。海沿いへ出たとしても,なかなか気持ちよく走れる道はなかったし,山へ行くには,とんでもなく車の多い道を少なくとも2時間近くは走らなければならなかった。そうでなくとも,ふつうの河川敷を走るだけだった。

いくつかの記事に書いたように,それでも十分よかったのだけれど,これだけいい景色の場所に,すぐアクセスできてしまうとなると,やはり名古屋という場所はツーリングには不向きだったと言わざるを得ない。

じきに梅雨が来て,暑い暑い夏が到来する。

気候もいい,そしてまだ仕事が忙しくない今のうちに,この贅沢を堪能しておくつもりだ。

(つづく)

引っ越しの効能

Rin Suigetsu, Ph.D.

鉄道を主とした一人旅の見聞録を書いています。特急列車と国鉄型・凸型の電機が好き。ときどきロードバイクにも乗ります。写真はPENTAX K-3iiiで撮っています。博士(工学)。

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