大学院生の授業ってどんな感じなの?【M1前期・電気系】

忙しかったM1の前期も今週でおわり。

せっかく大学院で講義を受けたので,それについて記事にまとめてみる。

具体的には,どのような科目をどんな講義形式で受けるのか?について説明する。

なお,自分は電気系専攻に所属していて,その中でも電力分野(強電)にいる。専攻が異なれば,受講する内容・形式はかなり異なると思われる。あくまでも参考ということで。

大学院生が受ける講義(電気系)

まず,講義のコマ数だが,これは以前にも記事にまとめた。なので,その記事の引用で紹介する。

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実際に受け始めた講義数は,以下の通り。

  • 月:1・2=基礎科目,4=他専攻科目[電子工学専攻],5=他専攻科目[都市工学系]
  • 火:1・2=専門科目
  • 水:2=他専攻科目[エネルギー系],3・4(隔週)=特別講義
  • 木:3・4=総合工学科目

これに加えて,木曜午前に1時間程度,輪講が行われる。

したがって,講義だけで,研究以外に11コマ程度時間を取られる。

参考記事:M1の前期は講義が多くていそがしい→Google ToDoでタスク管理

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1週間(5日)×5コマ(90分/コマ),すなわち25コマのうち,およそ半分弱が講義の時間ということだ。

大学院は,専攻が細分化されており,大学(専攻)ごとに,修士号取得に要求される単位数が異なる。ゆえに,コマ数や取得する科目の性質(専門,専門外)およびその割合については,議論するとキリがなくなる(講義開講時期や単位の取り方については,各大学のシラバスの方が明快で詳しい)。

したがってここでは,「大学院ではどのような内容(あるいはレベル)の講義を,どういう形式で受講するのか」に焦点を当てて書いていく。

専門基礎科目:熱・統計力学

講義:月曜1・2限
講義形式:オンデマンド
課題:毎週あり(重い
試験:なし(毎週の課題で評価)

基礎科目は,電気系3専攻の学生が,6つの科目に分かれて受講する。

自分は研究室でプラズマや流体を扱うこと,

学部時代の講義で深く触れなかったことから,

熱・統計力学」を受講した。

専門基礎科目は,電子系や情報通信系専攻の学生も受講する。

またこの科目は,”専門”と名前が付いているとおり,専攻で研究を進めるにあたり有用な知識をみっちり勉強する科目だ。

それゆえ,「情報系っぽい」や「電子系ぽい」科目を取らないよう注意した(このあたり,研究室の先輩にどの科目がイイか,シラバスなども読んで決めるといい)。

最初は,熱力学や統計力学の内容をかいつまんで勉強した。研究室の書架にあった「熱力学」や「統計力学」の本を読みながら課題を解いた。

後半は,数値計算について,実際にPCでシミュレータ(分子動力学シミュレータやMatlab系)を使ってシミュレーションを組みながら勉強した。学部における数値解析及び演習で勉強した知識が役立った。

毎週の課題は,計算や証明問題であればA4用紙3枚程度,シミュレーションは数時間かかるものだった。前期に受けた講義の中では1番重たい科目だった。

専門科目:エネルギー環境工学特論

講義:火曜1限
講義形式:オンデマンド
課題:毎週あり(数行の感想文のみ)
試験:期末レポートのみ(A4 2枚程度)

専門科目は2つ受講した。1つは,「エネルギー環境工学特論」という講義。

その名前の通り,エネルギーと環境について,それを構成する要素について知識を身に付ける科目だった。

具体的には,以下のような事項について学んだ。

  • 地球温暖化とそれに対する対策(エネルギー基本計画)
  • エネルギーの需給とその予測
  • 太陽光・風力などの再エネ

専門科目:超電導応用工学特論

講義:火曜2限
講義形式:オンデマンド
課題:毎週あり(簡単な小テストのみ)
試験:期末レポートのみ(A4 4枚程度)

専門科目のもう1つは「超電導応用工学特論」。

これは,学部ではほとんど勉強しない超電導体について,基礎となる低温工学・材料工学について学んだあと,電力分野の応用について知る科目だった。

「応用」と名前が付いているけれど,「基礎」についてもある程度かいつまんで勉強できた。超電導について研究しているわけではないので,がっつり知識を身に付ける必要がなかった。それゆえ,この科目だけでも十分。

ちなみに「基礎」は受けていない。これは,この科目が隔年開講であるからだ(2年1周期の大学院の講義ではよくある)。たまたま自分がM1のときに「基礎論」が開講されておらず,「応用特論」が開講されており,単位数を早くそろえるために,応用を先にとった。(「基礎論」は取らない予定)

関連記事:【中の人が語る】電気電子・情報工学科に入ると学べること

専門科目:セミナー≒輪講

これはちょっと特殊な講義。

というのも,シラバス上では「セミナー」として開講されているが,「輪講」と同じ扱いであると思われる。

したがって,講義の実施時間・形式は各研究室が独自に決めて良い。

うちの研究室では,毎週木曜2限の時間にやっていた。

内容としては,その週の担当者が英語の専門書(電力に関するもの)を読み,内容を1文ずつ訳していくというもの。必要に応じて,パワーポイントを使って解説を加えていく。

読む専門書も研究室で自由。自分が研究室に入る前は,もっと難しい気体分子運動論に関連するテキストを読んでいたそうだ。

専門科目:特別講義(隔週)

講義:水曜3・4限(隔週・前期は7回,後期にも実施)
講義形式:リアルタイムオンライン(Zoomとか)
課題:毎週あり(感想文)
試験:なし

セミナー同様,特殊な講義。

講義というよりは「講演を聴講して感想を書く」もの。

隔週実施の代わりに,1回の時間は3時間と長丁場に及ぶ。

ただ,講演に来てくださる先生方は,トップ企業や研究所の上級役員クラスの方々ばかりであった。

こんな人の話を3時間みっちり聞ける機会はそうそうないな・・・と思えるほどの方が来て,講演をしていた。

3時間話を聴いて感想を書くのは意外と大変だが,有意義な時間でもあった。

他専攻科目:3つ受講

以上が専門科目。

この他,修了要件の都合で,自分の専攻(電気系)以外において開講される講義も受講しなければならない。

自分の場合,3つ~4つ受講すれば単位を満たせそうだったので,3つ受講した。

1つは,「電子デバイス工学特論」。これは電子系,すなわちお隣の専攻の講義。学部時代にも電子デバイスの講義があり,研究室の先輩方も受講していたため,受講することにした。毎回の課題と期末レポートを出せば単位がもらえる模様。

2つ目は,「エネルギー科学」。専攻は違うが,電気エネルギー(≒電力)を含めたエネルギーを扱う科目だったため,わかりやすそうだと思って受講した。数回のレポートを出せば単位がもらえる。レポートは学部時代に課せられるような問題で,頭の体操にぴったりだった。

3つ目は,「都市計画特論」。これも違う専攻の科目。研究室の先輩方が受講していたため,受講することにした。内容は,区画整理や都市計画に関する概論。講義15回と各回の簡単な感想,それに加えて発表会(1人3分の発表)に出席すれば単位がもらえる。過去を踏襲して惰性で受けた講義のわりには,内容が興味深くて,毎回楽しく聴くことができた。名古屋は,戦後の都市計画がバツグンにうまくいったゆえ,非常に綺麗な都市になることができた。そのことがよくわかる15回の講義だった。

なお,2つ目と3つ目は,対面での講義だった。すっかりオンラインに慣れきったからだでの対面授業はキツかったが,内容はどちらの科目も興味深かった。

総合工学科目:ベンチャービジネス特論

講義:木曜3~4限(7回実施)
講義形式:リアルタイムオンライン
課題:なし
試験:期末レポートのみ(A4 3000文字程度の論述)

このほか,総合工学科目というのを受講しなければならない。

前期は「ベンチャービジネス特論」という講義を受講した。

その名の通り,「ベンチャービジネス」とはどういうものか,その基礎的な知識とスタートアップの実際について,大学にゆかりのある方の講義を聴くものだった。

この科目は専攻が開講する科目ではないので,いろいろな専攻の学生が受講していた(と思う)。

Zoomの参加者は毎回400人近くいたみたいだ。一昨年までは対面でやっていたらしいけど,その人数が入れるような講義室はあったのだろうか・・?

大学院の科目に共通していたこと

まず,講義実施形式が(2科目を除いて)オンラインもしくはオンデマンドであったこと。

次に,試験はなく,レポート・出席・課題のみによって成績が付けられたこと。

そして,細かい数式や理論より,分野の先端をゆくトピックスや,その分野を研究する上で必要な知識を身に付けることを志向していたこと。

コマ数は多かったけれど,それはM1後期およびM2の負担を軽くするため。

講義が研究の支障にならないよう,うまく配慮されていた。

基礎科目以外は,内容自体は難しくなかった。最後の方はしんどかった(ちょっと体調崩した・・・)けど,まあなんとか研究と両立できた。学会にも発表できたし,単位もとれそうなのでよかった。

まとめ

学部生の授業についてつづった記事は,インターネット上でもたくさんヒットする。

しかし,大学院生の授業(講義)については,あまりヒットしない。

まあ,院生の講義についてヒットしないのも,別におかしくはない。なぜなら,日本において,大学卒業後に大学院修士課程へ進む学生の数は,卒業生の12%程度しかいないのだ(記事末の参考文献参照)。

ただし,修士課程学生のうち,半分弱は工学系である (これも記事末の参考文献参照) 。自分は工学系(電気系)の院生である。したがって,大学院生(修士課程)の枠内であれば,それなりに意義のある体験談ではないか?と考えて,この記事を書いた。

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参考文献

科学技術・学術政策研究所の報告によると,2018年度の学部入学者数は62.9万人(うち,自分の所属する「工学」系は8.9万人,すなわち学部入学者数の15%程度)。

 日本の大学学部の入学者数は2000年頃からほぼ横ばいに推移していた。2014年度を境にやや増加し、2018年度では62.9万人となった。2018年度の入学者数の内訳を見ると「社会科学」系で20.3万人、「人文科学」系は8.8万人となっている。「自然科学」系では「工学」系で8.9万人、「保健」系は7.1万人、「理学」系、「農学」系は1.8万人となっている。また、「その他」は14.1万人である。

科学技術指標2019・html版|科学技術・学術政策研究所(NISTEP)

一方,大学院修士課程への入学者数は,2018年度では7.4万人。工学系は3.2万人(この統計から,修士課程へと進む学生のおよそ半分弱は工学系で占められていることがわかる)。

大学院修士課程への入学者数は1990年以降に大学院重点化が進んだこともあって、1990~2000年代前半にかけて大きく増加した。その後、2000年代半ばに入ると、その伸びは鈍化し、2010年をピークに減少に転じた。ただし、2015年度を境に入学者数が増加しており、2018年度の大学院修士課程入学者数は7.4万人である…
最新年度の専攻別の内訳を見ると、「工学」系が3.2万人と最も多く、次いで「理学」系0.7万人、「社会科学」系0.7万人、「保健」系0.6万人となっている。

科学技術指標2019・html版|科学技術・学術政策研究所(NISTEP)

したがって,日本全国の大学生のうち,修士課程への入学者数は12%程度であることがわかる。一方で,修士学生のうち半分程度が工学系であるから,このブログ記事は大学院生という枠の中においては,それなりに多数派の体験談であるとも考えられる。