今年読んで面白かった本(2019ver.)

2019年ももうすぐおしまい.

今年は学業の傍ら,
いろんな本を読んだ.

自分の人生で一番本を読んだ年になった(質はさておき,分量はMAXだった).

「自分は大学生のときこんな本を面白いと思っていたんだな~」と,大人になってから振り返られるように,ちょっと記録に残しておく.

2019年面白かった本

順番は,読んだ順に並べている.

2019年1月から2019年12月までの1年間で読んだ本.

東野圭吾:秘密

年始の方は有名作家の代表作を読んでいた気がする.

その中でも強烈に面白かったのが,東野圭吾「秘密」

この作品は98年度,自分が生まれた年のベストミステリーらしい.映画化もされている感動長編.

冷静に科学的に考えれば,まったくもって起こりそうにない世界が題材なのだけど
読み進めていく内にどんどん主人公の見ている世界に引き込まれていった,いつの間にか.

たしか大阪へ行く近鉄鈍行の中でエンディングを読んだのだったかな,電車の中で本を読みながら泣きそうになった.「本を読んで感動する」のは,おそらく初めての経験だった.小説ってこんなに面白いモノなのか.そう思わせてくれた一冊.

自分は大学生の男で,読んでいるときは基本的に男の主人公『平介』視点だった.でも,読む人によっては妻の『直子』や娘の『藻奈美』視点になるのかもしれない.年齢や性別によって,感情移入のベクトルがずいぶん変わってきそうだな,と読み終えて思った.もう少し年を取って,結婚すれば『直子』に対する気持ちに同情できるだろうし,もし子どもができたりしたら娘の『藻奈美』に対する『平介』の気持ちもよーくわかるようになるのだろう.

時間をおいて読み返したい感動長編だった.

坂口安吾:堕落論

春休み中は,一時代前のいわゆる「日本文学」の方へも手を出した.

日本文学と一口に言っても非常に幅が広いので,各作家の代表作について以下のサイトを参考にした.

http://www.mucoop.jp/suiryo/pdf/literature.pdf

まずは坂口安吾の「堕落論」

ちょっと斜に構えた作家の評論集.

読み終えて手帳にこんなフレーズを書き込んでいた.

人間は人間でしかなく,人生も100年でおしまい.本心に従って素直に生きていこうぜ.大変なこともあるが,戦っていれば負けることはない.ただし,決して勝とうと思ってはならない.

見栄を張っても,虚栄心を持っても,人間は堕落するものでありそれを防ぐことはできないのである.

自分の本心が大事,ありのままで肩の力を抜いて生きていく.

新田次郎:孤高の人

2冊目は新田次郎「孤高の人」

伝説の登山家「加藤文太郎」がモデルとして描かれた長編小説.

藤原正彦の父親である新田次郎が描いた作品,藤原正彦の本は面白くてよく読むので興味をそそられて手に取ってみた.

上下巻で”単独行の加藤文太郎”が,生き生きと描写されており,自分も同じ時代に降りたって文太郎を横からこっそり見ているかのように錯覚した.そのくらい世界観に没頭できる作品だった.

下巻では壮絶な登山のシーンが幾度も描かれていた.山の美しさ・怖さ,文太郎のずば抜けた精神力・体力・脚力の強さ,自分も一緒にもがき苦しみながらどんどんと読み進めてしまった.小海線から雄大な山を眺めながら読んだので,それによっても印象が強かったのかもしれない.

吉野源三郎:君たちはどう生きるか

漫画化された話題作.

マンガになった有名作は天邪鬼に原作の方を読みたくなるので,この本も原作を読んでみた.

はじめから終わりまでコペル君と叔父さんのノートによる対話形式で進む.近頃よく出ているハウツー本・人生論本とは一線を画す内容.コペル君が自分と対話し,よく頭を使って”考える”ことで「これが正しい,こういう風に考える方がいい,これはちょっと間違っている気がする」を導き出していく.思考がたまっていくことで自らの生きていく方向が次第に定まっていく.

コペル君は,こう生きる.では「君たちはどう生きるか?」.そう投げかけられて,この本は終わる.だから,答えなんて書いていないのだ.自分で「考える」ことが唯一のヒント.

日々起こる出来事に対してよく考えることの大切さを教えてくれる本だった.

村田沙耶香:コンビニ人間

芥川賞受賞作,多数の国で翻訳版も出ているらしい超話題作.

短い本だけど,内容は濃密.

普通に生きるってどういうことなのか?普通ってなに?を,コンビニ店員を通してぐさぐさと問いかけてくる.気に入ったフレーズがこれ.

皆が不思議がる部分を、自分の人生から消去していく

「変な人」を煙たがり,でも好奇の目でつるし上げる.そんな現代社会の雰囲気を痛烈に批判しているのが良かった.

司馬遼太郎:燃えよ剣

歴史小説も読んでみた.

司馬遼太郎「燃えよ剣」

長年読み継がれる名作,ということもあり期待を裏切らなかった.自分は歴史に疎いのだけれど,それでも面白かった.以前五稜郭を訪れたことがあるのだけれど,そのときはまだ,新撰組について何一つ知らなかった.この本を読んで,もう一度五稜郭に行きたくなった.

伊坂幸太郎:ゴールデンスランバー

“スリル炸裂超弩級エンタテインメント巨編”

背表紙の紹介文の通り,まさに”手に汗握る”のお手本のような小説だった.

たしか母に勧められて,面白いから読んでみてと言われて読んだのだけれど,予想をはるかに上回ってきて一気読み.

陰謀・運命,これほどまでに気の毒な主人公,なかなかいないのではないだろうか.

森博嗣:なにものにもこだわらない

森博嗣先生のエッセイはさっぱりとしていて読みやすいから,今年1年で何冊か読んだ(ミステリィはまだ読んだことがない).どの本にも,「そういう考え方もあるのか」と思える部分があって,と肩の力を抜いて人生を生きて行けそうな気持ちになる.

その中でも「なにものにもこだわらない」を選んだ.

“拘る”という単語は,最近では良い意味で使われていることが多い.でも,昔はそうでもなかった.この本の中ではどちらかというと「拘りがあるのはそんなにいいことではないんじゃないか」という視点から話が進んでいく.拘りすぎると思考が不自由になり,アイデアを思いつく機会が減ってしまう.新しいものを取り入れるチャンスも逃してしまう.問題解決の力も減退してしまう…
でも,こだわらないことに拘ってしまうと,それは自己矛盾.だから,「ゆるいポリシィ」くらいがちょうどいいんじゃない?というのが,結局のところ.

あれこれ考えていくときに,既存のフレーミングにとらわれるのはよくないこと.自分の頭で考えるのに加えて「もうちょっと別な考え方はないか?」とか「他の視点で見てみよ」とか,一捻りしてみるといいのかもしれない.

ショウペンハウアー:幸福について

講義が終わった帰りに,大学生協書店にぷらっと立ち寄って買って帰った本.

題名から哲学臭がぷんぷんと漂ってきているが,中身は予想以上に読みやすく,サバサバ(といったらちょっと言い過ぎかも知れないが)とした文章だった.

人はなぜ他者からの承認を欲するのか?その根底に備わるのは結局何なのか?普通の人が幸せをつかむにはどうすれば良いのか?…現代人にもびしびし通用する問いかけに対して,ショーペンハウアーが独自の視点で切り込んでいく.
結局は,精神的な技術,知識欲を持つ人が,低俗な世の中に絡まれずに生きていくことができるのかな?と自分は考えた.

ショーペンハウアーの本は,他に「読書について」が有名.どちらも読みやすくて現代人の生き方のヒントになる哲学なので,一読するといいかも.

磯田道史:無私の日本人

つい先日,18きっぷ旅中に読んでいた文庫.

「幸福について」と同じタイミングで大学生協書籍にて買った一冊.

読み終えてから気付いたが,映画「殿,利息でござる」の原作版らしい.そういえば穀田屋十三郎の話はそういう話だった.でも,磯田先生が本当に伝えたいことは,映画で見るよりも本で読んだ方が伝わるのではないかな?と思う(映画は観ていないのでわからない).

江戸時代に生きた,公の幸福に身を捧げた3人の生き様を描いた話.
「日本人独特の”無私”の生き方」は,何でも欧米のマネをしていればいいと思っている現代人に痛烈に刺さる.戦後すぐの時代はアメリカやヨーロッパに追いつけ追い越せでよかったのだろうけど,高齢化が進んで成長は鈍化し国が成熟してきた今の日本において,果たして追いつけ追い越せの姿勢で本当にいいのだろうか?今こそ「日本独特の文化・人柄」を生かして,他国がマネできないような美しい日本のあり方を考えていくべきではないか,そう思った.

HTML5&CSS3しっかり入門教室 : ゼロからよくわかる、使える力が身につく。 : 挫折せずに学び通せる / 山崎響 (翔泳社)

最後は技術書.

これは読書というよりは,読んでいてタメになる内容だったので入れておいた.

HTMLとCSSちょっと勉強してみようと思って,大学の図書館で借りてきた本.プログラミングの本はなんとなく難しくて途中で挫折してしまうことが多い.読み終えても苦痛しか残らない,みたいなことは多い.

この本は最後まですらすら読み通せて,それなりに知識も身につけることができた.読みながら自分でWebページを作ってみたが,作りながら読んだおかげで最後まで割と楽しく読み通せた.

本格的なWebページの構築には事足りないけど,「HTML&CSSはじめの一歩」としてはちょうどいいレベル.HTML&CSSの勉強で挫折してしまった,という人にオススメ.

まとめ:本の世界,入口の入口

何十冊と本を読んだけど,まだまだ自分は本の世界の入口の入口に立ったに過ぎないように思う.将来に役立つとか役立たないとか,よりも,もっと高い次元での「面白さ」が読書にはある.

将来のためのスキルアップももちろん大切だけど,そのためだけに時間を使うのではなく,毎日ちょっとずつ本を読む時間を作るのがもっと大事.

本を読む時間については今年1年間,しっかりつくることができた.来年も続けていく.

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