
6月中頃の週末。相鉄(相模鉄道)のとある駅とで,それぞれ用事があった。
相鉄になんて,乗ろうと思わなければ乗らない場所にいる。この機会を逃すまいと,「相鉄・鉄道全線1日乗車券」をつかって,相鉄の全線を乗りつぶしてきた。
横浜駅から相鉄に乗ろう
相鉄横浜駅のホームは,JRや京急のホームから少し離れたところにある。改札を出てから,相鉄JOINUS(ジョイナス)のほうへ向かって歩いていくと,たどりつける。
相鉄の旅客線網は,
- 本線(横浜~海老名:24.6 km)
- いずみ野線(二俣川~湘南台:11.3 km)
- 新横浜線(西谷~新横浜:6.3 km)
の3つ:合計42.2 kmから構成されている1 2。相鉄の路線は,ほかの関東私鉄と比べると短い。たとえば西武鉄道は176.6 km(営業㌔)3,東急は9路線110.7 km(営業㌔)4,小田急は3路線120.5 km5もの路線を有する。
路線距離が短いからといって,「乗りつぶし」やすいわけではない。改札口に着いて路線図を見上げると,本線から2つの路線が分岐していく形となっていることがわかった。以下に相鉄の路線図を示す。

このような形の路線網は,非常に乗りつぶしにいくい。起点の駅(横浜)へ戻ってくるには,どうしても各路線を往復しなければならないからだ。具体的には,横浜から本線→二俣川からいずみ野線往復→二俣川から本線を海老名まで往復→さらに西谷から新横浜線へ…といった具合だ。路線図をたどってみてほしい。「乗りつぶし」を目的にすると,案外めんどうくさい形であることがわかる。
とはいえ半日あれば乗りつぶせるだろうと考え,とりあえず本線で用事のある駅まで行くことにした。
正規運賃でのると高くつくので,フリーきっぷを買うことにした。横浜駅の自動券売機にて,「相鉄・鉄道全線 1日乗車券」(おとな:880円)6を買った。このきっぷで,相鉄の全線(鉄道のみ)乗り降り自由となる。
1) 横浜~西谷(相鉄本線)
横浜駅相鉄線1番ホームから出発。各駅停車 西谷ゆき。10000系8両編成だ。
ホームドアのせいで片側のヘッドライトしか見えていないものの,近郊電車らしくない,特徴的な顔立ちをしている。

乗車後しばらくは前面展望を眺めていた。相鉄の運転士さんは,白い制服を着たうえで制帽をかぶっている。このスタイル,どこかで見たことがある。そう,JR東海の制服だ。あれとよく似ている。この時の運転士さんは,指差喚呼が丁寧だった。偶然かもしれないが,この点もJR東海と同じである。
途中駅にて用事を終えたあと,11000系 各停で西谷駅までやってきた。

2) 相鉄いずみ野線(二俣川⇔湘南台)
西谷からは,本線を離れ,いずみ野線に乗り換えるため,20000系10両編成の各停 湘南台ゆきに乗車した。いずみ野線を終点まで走る電車だ。
この車両は2018年に登場した他社線直通用最新型車両の1つ。車内は綺麗だし,つり革が持ちやすい(丸形ではなくて,つかむ部分が直線状のおにぎり型になっている)。
20000系は,二俣川駅にて,本線の快速 海老名ゆきを待ち合わせた。二俣川から,いずみ野線が分岐する。20000系は,35‰もの急坂を登坂してからいずみ野線に入った。
いずみ野線の前半部は,トンネルと登り坂が多かった。沿線には,台,丘,都市,といかにも新興住宅地・団地っぽい駅名が並んでいた。

いずみ野駅から複線の高架となった。終点の湘南台は,1面2線の島式ホームで,地下駅だった。
ホームに停車した20000系は,行先表示を「和光市」に変えた。20000系は,東急東横線へ直通できるように製造された車両だ。

この車は,このあと,いずみ野線から本線経由で新横浜線に入ったあと,東急新横浜線→日吉→東急東横線→渋谷→東京メトロ副都心線→和光市と,3事業者6路線を走り切る。相鉄20000系は,後都心直通ネットワークの一角を担う重要な車両の1つだ。それにしても6路線直通とはすごい。
湘南台駅で一度改札を出て,地上に出てみた。バスターミナルを中心として,都心からすこし離れた郊外の典型のような雰囲気だった。地上には小田急線の駅があった。ちょうど電車がやってくるところを見られた。小田急は少ししかかじっていないので,こんどまたじっくり乗りに行きたいところである。

湘南台駅に戻った後,小腹が空いたのでコンビニでパンを買ってからホームに降りた。パンを食べてボーッとしながら,いずみ野線を二俣川駅まで上っていった。日曜夕方の上り列車なので,車内は空いていた。

3) 相鉄本線(二俣川⇔海老名)
いずみ野線の上り電車を二俣川駅で降りた。本線の下り電車へのりかえるためだ。ちょうど,本線の上下列車と,いずみ野線の上下列車が集結していた。いちばん手前の車両は東急の車両で,真ん中と奥が相鉄の車両だ。それにしても形式が豊富だ。乗り入れ車両もふくめて,1つの会社の駅とは思えないほど充実している。

こちらの電車を降りると間もなく,写真いちばん奥の列車が,西谷方面へとむかって出発していった。車は21000系だ。この車は,東急目黒線へ直通できる。行先表示は,西高島平だ。ここから先,西谷から新横浜線→東急新横浜線→東急目黒線を経て,最後は都営三田線を北上していく。

21000系が出発して少し待つと,こんどは海老名方面へむかう下り電車がやってきた。この車両は8000系。1990年登場と,これまで紹介してきた車のなかでは「ベテラン」の域に達している。

さて,この電車は「快速」の幕を掲げている。しかし,通過運転をするのは,横浜~西谷間のみ。西谷から終点の海老名までは各駅に停車する。快速というより「区間快速」に近い。
この電車には,二俣川から多くの乗客が乗りこんでいった。いずみ野線の電車とくらべると,需要は旺盛のようだった。
海老名駅では,改札を出ることなく,ノーラッチで折り返した。相鉄本線の終点である当駅では,小田急との乗り換えも可能であるし,もちろん,このあと紹介する新宿方面へのJR直通電車にも乗ることができる。

ちょうど,当駅を始発とする12000系の新宿行きが出発していった。12000系は,2019年に登場したJR線(湘南新宿ライン・埼京線)直通用の車両だ。直通用の3形式(20000系,21000系,12000系)のなかで,もっとも速そうな見た目をしている。この車が「各停」の幕を掲げているのに違和感があるくらいだ。

12000系が出ていったホームには,21000系が入って来た。ここから少し横浜側へいったところにある車両基地から回送されてきたようだ。このように相鉄本線では,まるで特急型と見紛うような,豪華な装いをした電車が頻繁に行き交っている。JR線・東急線との直通運転のおかげだ。

さて,海老名からは,本線をはしる特急電車で西谷方面へと戻った。途中の停車駅は,大和駅のみ。
2つ目の停車駅が二俣川駅。二俣川で特急を降りたあと,いよいよ本日最後の路線へと向かう。
4) 新横浜線(西谷→羽沢横浜国大)
二俣川からは,新横浜線経由でJR埼京線新宿へとむかう各停に乗車した。新横浜線は,西谷から羽沢横浜国大を経て,新横浜駅までの2駅区間のみ。路線距離の短い相鉄のなかでも最も短い路線だ。
いっぽうで,東急線とJR線との直通,いいかえれば,都心への直通を可能にしているという点で,本線と同様に重要な路線ともいえる。
この電車は,JR線直通なので,羽沢横浜国大から先,JR線方面の行先が案内されている。車内のLCDをみると,埼京線の路線カラーで,各駅が表示されている。注目すべきは,羽沢横浜国大と武蔵小杉駅との間が15分もかかること。

この区間では,東海道貨物線,つまり,旅客線でない線路を走ってゆく。鶴見のあたりで東海道線と合流し,鶴見川を越えると上野東京ラインと別れる。大崎の手前まで,湘南新宿ライン・横須賀線と同様のルートを走る。ただし,停車するのは武蔵小杉以降の駅のみ。鶴見や新川崎には停まらない。
JR直通用の12000系は,西谷を出ると,本線を右手にみながら,地下へ潜ってゆく。そこからしばらくは,地下トンネルのなかを走行する。

西谷からはわずか3分で,羽沢横浜国大駅に着いた。

新横浜線には,相鉄の車両のみならず,JR(埼京線)の車両も乗り入れている。このように,埼京線のラインカラーをまとったE233系が堂々とやってきて,海老名へむけて出発していく。相鉄の車両がJRへ入っていくのはまだしも,JRのE233系が私鉄の路線へと入っていくのにとても違和感があった。

少し外に出てみた。羽沢横浜国大駅のすぐ脇に,JRの貨物駅(横浜羽沢駅)があった。さっき少し書いたように,東海道貨物線が,このあたりを通っている。相鉄→JR直通線は,この貨物線に途中から合流していく形となっている。貨物線のおかげで,2社直通運転が実現されたということ。貨物列車がやってこないかと少し待ってみたが,まったく来るようすがなかったので,駅へ戻った。

ここまでJR線直通に重きをおいて書いてきたが,羽沢横浜国大駅からは,東急線への直通運転も行われている。当駅を出て真っすぐトンネルへ入ってゆくと,新横浜駅に至る。新横浜から先は,相鉄から東急の「新横浜線」へと切り替わる。路線名や線形からして,JRよりもむしろ東急への直通の方が本道という感じだ。

実際,羽沢横浜国大駅でしばらく電車を見ていると,JR線直通よりも東急線への直通列車の方が多かった。それに,車両自体も,相鉄線のものより,東急線の車の方が多かった。いずれも,相鉄本線の海老名やいずみ野線の湘南台へと直通していく。



たまにやってくるJR線直通列車は,羽沢トンネルを新横浜まで下るのではなく,分岐を左へと進む。そして,地上へ出たうえで,貨物線に合流する。

羽沢横浜国大駅では,このようにして,3社(相鉄・JR・東急)の各型式が,さまざまな方面へと発着していた。周囲にはこれといってめぼしい施設はない(横浜国立大学は,ここから歩いて15分もかかる)のだが,駅自体は運行上きわめて重要な拠点であるといえる。

ひとしきり電車を眺めたら,最後は新横浜線で新横浜まで行った。きっぷは相鉄線のみ乗り放題だったので,新横浜から東急線へと乗りとおすことはできない。すでに18時を過ぎていたので,今日はここまでとした。

新横浜駅からは,横浜市営地下鉄ブルーラインで横浜へもどった。
こんどは,武蔵小杉側から,埼京線直通列車で新横浜まで行ってみたい。それから,東急の路線も乗りつぶしにいきたいと思う。
(おわり)
- 相鉄グループ:「運輸業」,URL: https://www.sotetsu.co.jp/about/services/transportation/ (最終アクセス日: 2025/6/29) ↩︎
- 旅客線のほかに,貨物線(相模国分~厚木:2.2 km)もあるそうだ。これは知らなかった。 ↩︎
- 西武鉄道:「企業概要:西武鉄道Webサイト」,URL: https://www.seiburailway.jp/company/profile/(最終アクセス日:2025/6/29) ↩︎
- 東急電鉄株式会社:「事業について」,URL: https://www.tokyu.co.jp/railway/company/business/#:~:text=%E6%9D%B1%E6%80%A5%E9%9B%BB%E9%89%84%E3%81%AF1922%E5%B9%B4,%E3%82%92%E9%81%8B%E5%96%B6%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82 (最終アクセス日:2025/6/29) ↩︎
- 小田急電鉄:「事業概要|株主・投資家情報」,URL: https://www.odakyu.jp/ir/overview/(最終アクセス日:2025/6/29) ↩︎
- 相鉄グループ:「お得な周遊券」,URL:https://www.sotetsu.co.jp/train/tickets/tour/(最終アクセス日:2025/6/29) ↩︎
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