最近のサイクリングといえば,もっぱら,週末の半日くらいをつかって,市内を走ることがメインだ。せっかく高価なロードバイクなのに,ロングライドでもなく,ヒルクライムでもポタリングでもないスタイル。でも,後ろめたさはない。むしろ,ロードバイクだからこそ,そういう「ゆるい」スタイルがありなんじゃないかというお話。
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写真のロードバイクは,今年の1月に納車した。年末年始をすぎれば,納車から1年ということになる。以下の記事に書いたように,納車後しばらくは,ちょっとだけ長い距離をはしったり,ヒルクライムへ出かけたりしていた。といっても遠方ではなく,名古屋から日帰りできる距離の場所だ。具体的にいえば,前者は知多半島,後者は雨沢峠などだ。
納車後しばらくは,真冬用のジャケットを着て走っていたのが,やがて,薄めの長袖ジャージで走るようになり,そしてすぐに,半袖でも汗をダラダラかくくらいの季節になった。
それから,異常な暑さの夏がやってきた。外に出るだけで身の危険を感じるくらいの暑さのなか,ロードバイクに乗るのは正気の沙汰ではない。ちょうど,研究も忙しくなったのもあって,しばらくロードバイクには乗っていなかった。
今年の夏は,暑いだけではなくて,長かった。9月を過ぎ,10月をすぎても,いつまでたっても暑かった。このあたりで一度だけ走りに出たが,ひと夏まるまる走っていなかったことと,デスクワークとでめっきり体力が落ちており,なおかつまだまだ暑かったこともあって,ヘロヘロになって帰って来た。これに懲りて,またしばらく,週末はインドアな日々だった。
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ようやく涼しくなってきたころ,これならいけるな,と思って,また少しずつロードバイクに乗るようになった。相変わらず,たまの週末に,半日くらい乗ることが多い。気温に合ったサイクルジャージを着て,軽食とケータイ・最小限の現金・カギだけ背面ポケットに入れて出かけるのだ。
しばらくは,なんどか山へいったが,最近は川沿いをただ走ることが多くなっている。庄内川や矢田川の堤防道路は,一部をのぞいて,おおむね快調に巡航できる。下宿からここを走っても,往復の距離は,20~40 km程度と短い。だが,名古屋市内で,こういう場所は貴重だ。そのうえ,堤防道路は見晴らしがいい。風が弱い冬晴れの日は,巡航しているだけですがすがしい気持ちになる。
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さて,こういうスタイルのサイクリングは,ロングライドでも,ポタリングでもない。前者というには距離が足りないし,後者というにはスピードが速すぎる。それに,寄り道もほとんどない。走ることが主眼になっていて,たまの休憩でぼんやり景色を眺めるだけだ。
いっぽう,世間では,泊りがけのロングライドや,あるいは,観光地をめぐっていくようなポタリングが流行っているようだ。いずれも,目的(地)があって,そこまでの「旅」の手段あるいは一環として,ロードバイクをたのしんでいるようにみえる。
このような状況,とりわけロングライド志向は,ともすると,ロードバイク乗りを「高性能なロードバイクなのに,全然走れていなくてもったいない」という気持ちに陥らせかねない。
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ただ,初心にかえってみると,「ロードバイク」だからといって旅をしなければならない,ロングライドに出るのが本道だ,ということは全然ない。むしろ,「ロードバイク」というのはふつうの自転車より速く走れるのりものであって,そのスムーズさと軽やかさをたのしむものだったはずだ。
ロードバイクをふくむスポーツバイクを納車した直後は,だれだって,どこでもいいから乗り回したい,自分の脚でペダルを漕いで,たくさん車輪を転がしたい,そういう気持ちになったはず(だから,「自転車」という)。
要するに最近の私のスタイルは,まわりに回って,この初心にちかいところまで戻って来たということを示している。そう,ロングライドだけがロードバイクの楽しみというわけでは決してないのだ。
乗りたいから乗る。遠くへ出かけなくても,気持ちいい青空の下,冷たい風がちょうどいいくらいの運動量で走る。たまに立ち止まって,持ってきた軽食をたべて休む。いつも走る道だから,あれこれとルートを確認しなくていい。輪行する列車の時間も気にしなくていい。だいたいは堤防道路だから,どこで折り返しても変わらない。こういう状況で走るから,走ることだけを楽しめる。
このようなスタイルにおいて,クロモリロードはきわめて相性がいいことがわかってきた。このクロモリロードは,まだ私の自転車趣味においては2台目にすぎない。だから,比較対象は1台目のシクロクロスバイク(アルミ)と,始める前にすこしだけ試乗の機会があったカーボンロードと,遊びで乗ったMTBくらいだ。後者2つは,ほとんど「乗ったことがない」に等しい状態といってよい。
そのような状態であっても,このクロモリロードが「巡航」においてすぐれた性能をもっていることがわかってきた。平坦路を転がしていくのが,とても快適なのだ。シクロクロスが優れているのは停止状態からの加速くらい。いちど巡航状態にはいると,クロモリロードの快適性は高い。
サイコンはおろか,最近はGPSウォッチすらつけていないので感覚的な数字になってしまうが,クロモリロードは,15 km/h~25 km/hくらいの速度域における加速がいい。そして,この速度域の維持が,シクロクロスにくらべてラクなのだ。もちろん,これ以上の速度域を平均的に維持していくには,それなりの脚力(つまりエンジン)が必要になるから,なんともいえない(めっきり貧脚になってしまったので,この点を考察することはできない)。それでも,クロモリロードが「巡航(cruising)」において,シクロクロスを凌駕することがわかってきた。
シクロクロスが「万能な遊び道具(a play tool for multi purpose)」だとしたら,クロモリロードは「平坦路の巡航に長けたのりもの(a vehicle for cruising on road)」だといえる。
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そういうわけで,クロモリロードは,私のいまのサイクリングスタイルにぴったりはまっている。我ながら,いい買い物をしたと思っている(いまのところ,人生でいちばん高い買い物となっている)。おかげで,平日の運動不足とストレスを,とても気持ちよく解消できるようになった。週末走った週は,あきらかに身体の調子(というかバランス)がいい。一時期は,ランニングを頑張っていた1が,週末の半日ずつをサイクリングした方がよっぽど効果があることを見出した。
クロモリロードで,くるまのすくない堤防道路を颯爽と走り抜ける。今週もいい週末だった。来週もBassoにのろう。
(おわり)
- だいたい,1シーズン半くらい,がんばっていた(参考1: 400km走ったランニングシューズを買い替えた,参考2: ランニングシューズの寿命をSTRAVAに教えてもらう)。 ↩︎