バイトを始める大学生必読~ブラックバイト[増補版]体育会系経済が日本を滅ぼす

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大学生になったら

生活費や趣味のお金のためにアルバイトを始める人がほとんどだと思います。

そんな人に読んでおいて欲しいのが
この記事で紹介する

【ブラックバイト~体育会経済が日本を滅ぼす~】

です。

本のデータ

ブラックバイト[増補版]体育会系経済が日本を滅ぼす

著:大内裕和、今野晴貴

堀之内出版、2017/03/31初版

2017/07/01第二刷発行

各章の要約と感じたこと

第1章 ブラックバイトの被害実態

意外にも大手チェーンでも違法な労働がまかり通っている実態があった。

特にすき屋コンビニでの実態は、衝撃だった。さんざん学生アルバイトを悪条件下で働かせたあげく、賃金を未払いにするのだ。

まずこのような実態が実際にたくさんあるということを知れたのがよかった。

第2章 ブラックバイトのパターン

この章では、ブラックバイトがどのような仕組みになっていくのか。なぜ学生アルバイトは気づかないうちにブラックバイトに従事しているのか。これらのことがわかりやすく書かれていた。

基本的なパターンは
A:職場への過剰な組み込み

→B:最大限安く働かせる

→C:「職場の倫理」に従属させる人格的支配
である。

具体的にはまずAには
①. 緊急の呼び出し
②. 長時間労働・深夜勤務
③. シフトの強要
④. 複数店舗・遠距離へのヘルプ
⑤. 「責任感」でやめさせない
⑥. ノルマ・罰金・商品の自腹購入

の6つがある。

僕が特に危険だと感じたのは⑤だ。

それまでの①~④のフェーズを踏むことで、「自分が抜けてしまったら店が回らない」とか「他のアルバイトや社員に迷惑がかかる」とか考えてしまう可能性があるからだ。

こう考えてしまうと、雇用する側の思うツボだと思う。

次にBには
①. 最低賃金ぎりぎりで上がらない賃金
②. 未払い賃金・サービス残業
③. 仕事道具の自腹購入
④. 不十分な研修で即戦力化
がある。

僕は塾講師をしているが、塾講師や家庭教師のアルバイトの募集では「コマ給」で給料を明示しているところが非常に多い。

僕の職場では幸い時給に換算しても最低賃金をしっかり上回っているが、中には時給換算だと最低賃金を下回ってしまうところもあるそうだ。これは明確な労働基準法違反だが、まかりとおっている現状はなんとも残念に思う。

また、賃金の未払いも塾講師にもよくあることらしい。僕の職場では、コマ給以外の準備給、会議給、終礼などの時間外労働給も一応支払われているが、正直1分単位で払われているかどうかはわからない。

来月からはきちんとタイムカードの時間と授業時間を照らし合わせながら計算し、不具合があればすぐに申し出てみたいと思う。

最後にCには
①. パワハラや暴力による従属
②. 不当な内容の契約書による支配
③. 損害賠償・違約金等の金銭的請求
のパターンがある。

この本を読むまでは、「学生アルバイトに限ってそんな事無いだろう」と考えていたが、現実にたくさんの事例が起こっていることを知った。

自分の考えは浅はかだった。そのようなことが自分と同じ境遇の大学生にも起こっているということを心にとめておきたいと思った。

第3章 アルバイト学生調査結果

調査結果を見て、職場で不当な扱いを受けている学生が想像以上に多いと感じた。また平均的な労働時間も思っていたより長かった。

これで大学での勉強と両立できるのかと不安にも思った。

加えて親の経済状況が悪いほど、学生のアルバイト時間が長いこともわかった。

この原因として考えられるのは

①貧困化の進行

②学費の増大

③給付奨学金普及の遅れ 

この3つだ。3つとも自分に当てはまることであり深い共感を得た。この3つは次章でより詳しく述べられている。

第4章 ブラックバイトを生み出す日本の貧困

この章ではブラックバイトの根本的原因ともなっている「貧困」にスポットが当てられた。

まず、学費だが高すぎる。20年くらい前から急激に上がっているが、昔は国立大学はもっと学費が安く、アルバイトだけで十分まかなえる金額だったそうだ。

この学費の増加に伴って90年代まで親の収入も増加していた。その理由は日本独自の雇用制度・賃金制度が残っていたからだ。

しかし最近では学費の増加に対して、親の年収の増加が抑えられている。これでは学生は奨学金やアルバイトに頼らざるを得ない。

その奨学金も日本では未だに「貸与型」がまかり通っている。つまりまだ未成年のうちからローンを抱え込む「負債者」になるわけだ。

この奨学金を借りる学生も過半数を超えており、ある種のビジネスと化している。

これに対して、国の対策は遅々として進まない。

ヨーロッパでは学費や下宿費は無料。奨学金も「給付」が当たり前だという(scholorshipとは「給付奨学金」のコトを指し、日本の「貸与型奨学金」は「ローン」であるそうだ)。

国は一刻も早く給付奨学金の拡大を進めるべきだ。

そうしなければ学生は奨学金の返済と学費の支払いの板挟みになり、結局ブラックバイトの泥沼にはまってしまう。

第5章 ブラックバイトと教育の変化

この章では「キャリア教育」に関する記述が強烈に印象に残った。

現在日本の大学では「キャリア教育」なるものが急速に広まっているが、そもそも「キャリア教育」とは何なのか。このまま「キャリア教育」に傾倒していいのか。筆者は警鐘を鳴らす。

僕が思うに、大学で「実用性のともなった技術や知識」を求めるのも間違いではない。それは「手に職をつける」意味では必要だからだ。

では大学で「会社に雇ってもらうためのマナーやお世辞の能力を身につける」のか。

それは違う。

そんな中身のない空洞化した教育を受けに大学へ行っているのではないはずだ。

確かな専門知識と深い教養を身につけ、あらゆる物事を俯瞰できる能力批判する能力を得るために大学へ行っているのだと僕は思う。

中身のない「キャリア教育」が学生を「就活」へと誘い込み、やがて思考を「アルバイトで社会を経験しておこう」という方へ移動させてしまうのだ。

学生の本分は勉強だ。決してアルバイトが優先になってはいけない。

また、就活のためにインターンシップやアルバイトをせっせと行うのは時間の無駄だと思う。

まずは自分の興味のあることを大学で学ぶ中で見つけることが必要だと感じる。

第6章 ブラックバイトと労働の変化

学生アルバイト」は「非正規雇用」の一部である。

非正規雇用者はかつては「小遣い稼ぎ」や「家計の足しにする」ために職場で雇われていたのだ。

そのため何か仕事で不都合なことがあれば、すぐにやめても問題は特段起こらなかっただろう。

 

しかし、現在では非正規雇用者が「家計の中心」となっているケースも多い。実際に自分の親もそうだ(これが子である学生の貧困につながったりすることもあるのだろう)。

つまり非正規雇用者が低い賃金にもかかわらずフルタイムで働かなければならない状況が増えているのだ。

これは学生も同じで、親からの経済的援助が十分に受けられず、アルバイトで学費と生活費をまかなわなければならなくなっている状況も増えてきている。

そうして次第に非正規雇用が「店舗・職場の中心戦力」となることが増加するのだ。これは非常に問題だと思う。

なぜならば「非正規雇用」が非正規雇用でいられなくなるからだ。

店舗の中心戦力となれば、社員(正規雇用)並の責任が求められてしまい、アルバイトとしては過大に職場に関わることになってしまう。

それはすなわち大学への講義や授業への参加が難しくなってしまうことにもつながる。

第7章 ブラックバイトの弊害と定義

ここで印象に残ったのは「ブラック企業への馴致」という言葉だ。

ブラックバイトが学生の中での仕事の基準となってしまい、大学を卒業してもまた「ブラック」な職場へ組み込まれてしまうという恐ろしい事態が、弊害として生まれてしまうのだ。

そうしてブラックな企業やバイトが増えてくると、サービスや商品販売が十分に行き届かなくなり、結果として消費者が回り回って被害を受けるのだ。

これもブラックバイトの弊害といえる。

「持続不可能」=「ブラック」

ブラックバイトの成れの果ては「ブラック国家」だ。

若者や学生がこき使われ、使い捨てられる国に未来は無いと思う。

第8章 ブラックバイトと労働法

ブラックバイトへ実際に巻き込まれてしまった場合の具体的な解決策がパターンごとに書かれていた。

解決には3つの次元がある。
1つめは「企業を国に取り締まらせる」(刑事的次元)
2つめは「会社に約束を守らせる」(民事的次元)
3つめは「自分たちで新しいルールをつくる」(労働組合的次元)
だ。

筆者は3つめの労働組合的次元を特段推していた。

僕は、この本を読むまでアルバイトに労働組合という発想はまったく無かった。

労働組合をつくり、ルールをつくって職場へ訴えかけるという次元は、1,2つめの次元にはない利点を持っている。

それは、最低限の基準での解決ではなく、労働者の求める「水準」での解決が可能であるという点だ。

そのためには労働者側の努力ももちろん必要になるが、その努力を惜しまなければ画期的な解決手段になりうると感じた。

自分がもしそういうアルバイトに出会ったら、まずは行動を起こし、労働者同士での結束を図りたい。

第9章 ブラックバイトに立ち向かうユニオン・支援者集団

実際に行動を起こしたユニオン・団体が紹介されていた。学生が行動を起こしているというのを実際に知ってすごく驚いた。

こういうユニオンがあるということを知っておくのもブラックバイトの対策の1つになるし、企業側もそういう団体があるということを知ると業態改善に動くと思う。

以下に、実際に本に掲載されている団体のホームページを紹介しておく。

首都圏学生ユニオン

NPO法人 POSSE

第10章 2015年以降の新たな展望

今後日本は、旧態依然とした体育会系経済グローバル化が進む世界の中で続けていくのか。

それとも「ブラックバイト問題」を起点に雇用問題を震源地としながら、世界に目を向けた改革を進めていくのか。

日本は岐路に立たされていると思う。

全体を踏まえての感想

ブラックバイトは単純に企業側あるいは労働者側だけに問題があるわけでは無いということを本書を読んで認識した。k

この問題は企業と労働者、さらには国の制度貧困教育の空洞化など複数の要因が絡み合った上にある問題なのだ。

ブラックバイトを「社会問題」として認識し、旧態依然とした体育会的な考え方を見直して視野を広げながら問題の解決を図る必要がある。

若者を使い捨てる「持続不可能な労働」ある国に未来は無い

 

また、幸いにも自分は今職場の環境はブラックではない。

だがブラックバイトが学生を中心に蔓延している以上、他人事ではない。

もし身の回りにそのようなブラックバイトに籍を置き苦しんでいる学生がいたら、この本で得た知識をうまく活用して手を差し伸べてあげたい。

無関心は最大の罪だ。

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