1. まえがき
2023年10月に行われたとされる「Google コアアップデート」は,「個人ブログ」(企業や情報サイトでないページ・サイト)を検索上位から追いやった大改変であったといわれる。
ネットを見ていると,このアップデートによって,ほとんどの個人ブログが検索流入を激減させたと観察される。それも,一部のビジネス本位のサイトのみならず,趣味でやっているようなブログまでもが,軒並み影響を受けたようだ。
これに対して,いくつかのWebサイトが,コアアップデートの概要や検索動向の変化を分析しているものの,いまだ定量的で系統だったものは少ない。
そこで本記事では,一個人ブログである本ブログ(take26.com)を対象として,アップデート前後の7カ月間における主たる上位表示キーワードの平均検索順位および表示回数の変動を分析している。また,分析結果から,コアアップデートの意図するところと,これに対するユーザの行動変容を分析し,今後の「個人ブログ」がとるべき方針を提案している。
2. 分析方法・条件
分析するキーワードおよび平均検索順位・表示回数の経時データは,Google Search Consoleに紐づけしたGoogle Analytics(集客 -> クエリ)から出力した。キーワードは,上位5000データのみ対象とした。出力したデータ(CSV形式)を,Jupyter notebookで前処理した。
分析期間は,コアアップデート前後7カ月間とした。
アップデート時期として,2023年10月を取り上げた。同時期から行われたアップデートは,個人ブログに対して大きな影響を与えたとされるからである。
すなわち,2023年10月を基準とし,その前後7カ月間
- 基準期間:2023.3.1~2023.9.30 (アプデ前)
- 比較期間:2023.10.1~2024.4.30 (アプデ後)
を対象とした。
上記の通り,2023年9月以前をアプデ前(図中ではbefore)2023年10月以降をアプデ後(図中ではAfter)と述べる。
3. 主たる結果
3.1 平均検索順位の低下:「個人ブログの壁」
分析の結果,平均検索順位は,15.6位から24.7位へと,約58%低下した。
また,対象とした\(n=5000\) ワードのうち,92%のキーワードで検索順位が下がっていることがわかった。
Fig. 1に,全キーワードについて,アプデ前とアプデ後の平均検索順位をプロットした図を示す。1つのプロットが,1つのキーワードにあたる。
同図の横軸がアプデ前,縦軸がアプデ後である。いずれの軸も対数であることに注意されたい。
縦軸=横軸の一点鎖線(Before = After)が,アプデ前後で検索順位が同じであることを示す。すなわち,一点鎖線より下にあるプロットは,アプデによって検索順位が低下している。逆に,一点鎖線より上のプロットは,アプデ後に検索順位が上昇していることを意味する。
Fig. 1から,アプデ前には,10位以上のキーワードが多数みられる。しかし,これらの上位キーワードは,アプデによって,そのほとんどが検索順位を落としている。アプデ後に10位以上を維持しているのは,オレンジの領域で示される領域で,ごくわずかだ。
アプデ前に40位未満のキーワードの多くは,一点鎖線より上に分布しており,アプデ後に順位を上げている。特に,100位未満のキーワードは顕著に順位を上げている。ただし,高々10~20位に甘んじていおり,10位未満に食い込めるキーワードはほとんどない。
上図から,今回調査したキーワードの多くが,「10~20位」より低位に押し下げられたことがわかる。このラインは,2023年10月のコアアップデートが,企業・公式サイトを優遇し,個人ブログを上位ページから飛ばしたことで出現した「個人ブログの壁」であるように見える。
3.2 平均表示回数:7カ月で66%減少
検索順位と同じく,平均表示回数も66%減少し,78.3%ものキーワードが表示回数を低下させた。
Fig. 2には,アプデ前後の表示回数をプロットしている。Fig. 1と同じく両対数グラフであり,調査した\(n=5000\) キーワードのうち,表示回数\(\mathrm{View}>1\)のキーワードが対象となっている。同図の一点鎖線は,アプデ前後で表示回数が等しいラインを示す。つまり,一点鎖線より下のプロット(キーワード)は,アプデによって表示回数が低下し,逆にそれより上にあるプロットは,表示回数がふえている。
Fig. 2の青色で示した領域のキーワード群は,7カ月間で100回以上表示されたキーワードである。これらのほとんどは,アプデ後に表示回数を顕著に低下させた。この領域で,表示回数がふえたキーワードはほとんど見られない。
逆に,表示回数の少ないキーワードは,表示回数がふえる傾向にあった。
Fig. 2の破線は,すべてのプロットをべき近似したものである。破線と一点鎖線の比較から,表示回数の多かったキーワードほど,アプデによって表示回数が低下し,逆に,表示回数の少なかったキーワードは,アプデ後に表示回数がふえたことがわかる。ただし,その多くは\(\mathrm{View}<100\)である。
直線の交点は \(\mathrm{View}\simeq26\) であり,これより表示回数が多いキーワードは,アプデの影響を受けたといえる。
3.3 表示回数の変化率:上位キーワード
上記の表示回数に基づき,アプデ前後の表示回数変化率を以下の式
$$v_\mathrm{View} =\frac{ \mathrm{View}_\mathrm{After} – \mathrm{View}_\mathrm{Before} }{ \mathrm{View}_\mathrm{Before} } \times 100 (\%) \quad (1)$$
から算出した。ここで\(\mathrm{View}_\mathrm{After}\)および\(\mathrm{View}_\mathrm{Before}\)はそれぞれ,アプデ前およびアプデ後の表示回数を示す。アプデ前の表示回数は
$$ \mathrm{View_{Before}} \geq 1 $$
であるので,上記の変化率は,\(-100\%\)が下限値となる。
Fig. 3に,アプデ前の表示回数に対して,Eq. (1)から導いた変化率をプロットしている。
Fig. 3の一点鎖線は,アプデ前後で表示回数が変わらないラインであり,このラインより下のキーワードは,アプデによって表示回数が低下している。
Fig. 3から,アプデ前の表示回数が100回,1000回と増えていくにつれ,変化率が顕著に低下していることがわかる。この図から,表示回数が多いキーワードほど,アプデの影響を強く受けたといえる。
3.4 各検索順位帯における表示回数の変化
表示回数と検索順位との関係を明らかにするため,Fig. 4に表示回数を検索順位に対してまとめた。黒丸のプロットがアプデ前,青三角のプロットがアプデ後である。
Fig. 4から,アプデ前のプロット群密度は,楕円形のうすい灰色で囲まれた領域で高い。同領域の平均検索順位は10位弱で,表示回数\(\mathrm{View}_\mathrm{Before}=100–1000\)である。
Fig. 4には,Fig. 1で述べた「個人ブログの壁」を図示している。
アプデ前のボリュームゾーンは,この壁より上に位置しているように観察される。このことは,アプデ前だと,個人ブログでも多くのキーワードで高い順位にありつけ,かつ,上位表示にともなって,少なくとも毎日1回~数回以上は表示されていたことを示している。
一方,Fig. 4の青三角で示したアプデ後のキーワード群は,検索順位20~80位かつ表示回数\(\mathrm{View}_\mathrm{After}=10–40\)で高密度となっている。このボリュームゾーンを,うすい青色で網掛けしている。このことは,アプデ後には,順位も表示回数も低下したことを如実に示している。
また,この領域のキーワードは,アプデ前にはほとんど見られない。つまり,オレンジで網掛けした領域は,アプデ後にだけみられるキーワード群である。この領域では,アプデ後にのみ,検索順位が低い(Google検索だと3ページ以降)にもかかわらず,少なくとも1~10回程度表示されている。この点は,コアアップデートに対する重要な示唆を与えている。4.3節で考察する。
4. 考察
以上の分析結果をふまえて,2023年10月に行われたとされるGoogleコアアップデートが,個人ブログへ与えた影響を考察する。